悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

第一章 リトア王国

やっぱり転生者でした

少し強張った顔は怒っているわけじゃないけど緊張してる？

「エスターテ…」

？

「プリマベーラ…」

？

首をかしげている私に今度はアリアドネ様の方が焦った様子で顔を近づけてきた。

「日本、乙女ゲーム」

「やっぱりアリアドネ様も日本の記憶があるのですね。」

次の瞬間ガバッと抱きつかれていた。苦し～

「あなたも、あなたも転生者なのね。初めて会えた。嬉しいわ。」

わ、私も嬉しいですから離して～このままじゃ喜びを分かち合う前に窒息しそう…

苦しげな私にようやく気づいてくださったアリアドネ様は私を離してくれた。

お互いに椅子に座り直し紅茶を一口。せきをきったように話始めたアリアドネ様の話を要約するとアリアドネ様は前世、大手企業の社員として忙しく働いていたらしい。結婚はしていなかったけど仕事は楽しく充実した毎日を過ごしていた。しかしある時、出張先で事故に巻き込まれ帰らぬ人となったらしい。
アリアドネ様がその前世を思い出したのは魔法学園に入学した時だそうだ。

「いや～正直言ってアロイス君の方が転生者なんじゃないかと疑ってたけど。まさかマリーちゃんが転生者とはね～だってあの子規格外すぎでしょ？物語無視してレベル上げに徹してたんじゃないの？って感じよ。」

「あ、あの～アロイスも転生者です。」

一気にフレンドリーになったアリアドネ様に恐る恐る報告すると何か言いかけた口のまま固まってしまった。

「アロイスと私は実は前世で幼なじみで高校生でした。二人でのんちゃん…あ、前世のアロイスは望くんっていう名前だったんでのんちゃんって呼んでて。
のんちゃんの家で二人でゲームをしてて私を家に送ってくれようとした時にトラックに二人ともはねられて…私は最近記憶が思い出されて、のんちゃんは生まれた時から記憶があったみたいです。」

「え、待って色々情報が多すぎて混乱してる。え、何？二人は前世からの知り合いってこと？ってか家で二人でゲームって前世でも恋人だったの？」

「いえいえ、恋人ではなくて…私は好きでしたけど…あ、のんちゃんも好きでいてくれたみたいですけどその時は知らなくてただの幼なじみでした。」

「は？何それ何リア充な学生生活送ってんの？甘酸っぱ～何それ、私にはそんな青春時代なかったわよ。
へえへえ、いいわね～私なんて乙女ゲームに青春を注いでたわよ。まぁ、後悔なんてないけどね。」

「あ、私たちが最後に二人でやってたのも乙女ゲームでした。」

「はぁ？」

アリアドネ様が盛大に首をかしげた時に扉をノックする音がした。アリアドネ様が首をかしげたまま返事をするとアロイスが一人部屋に戻ってきた。
助かった～