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第一章 リトア王国
お父様が多忙な訳とは
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首をかしげる私にリークは得意気に説明を始めてくれた。
「賢者ニリーナの名を語った不届き者がリド教の一部の人間を誘導してリトアとイシェラの間に戦の種を撒こうとしていたのはさすがに知ってるだろ?」
「はい。あ、いや、うん。知ってる。」
「お前の父親とリノアの父親は以前から調査をしていたらしい。今、怪しいと思われる家には平民、貴族問わず調査の手が伸びている。
その中で一番功績をあげているのが飛馬の騎士だ。
更にこないだ、ある貴族が自分の罪を平民に被せようとした。何人かの役人は買収されてその平民を捕らえたけど飛馬の騎士が疑問を抱き独自に調査をして全てが明るみに出たんだ。
今、平民たちの間で彼は英雄だよ。
しかもかっこいいのは、解放された平民がお礼を言ったら
私が気づかずともニリーナ様の目は誤魔化されなかったでしょう。
とだけ言って去っていったらしい。
その噂を聞いた貴族たちは調査に入られる前に身の潔白を証明したくて春雷や公爵の元に殺到してる。
自ら関わっていたことを告白しにくる人も増えてる。
だから春雷たちが忙しいのは当たり前だ。」
「そうだったんですね。」
全然知らなかった。
私は応接間の窓を見上げてポカンとしてしまった。
「お前、呑気だな~
春雷や公爵はどんな小さな情報も見逃さないらしい。その情報網も全く分からないらしくて後ろ暗いところがある貴族連中は震えてるぞ。
そういう連中は家族を人質にとって脅したりするんだよ。気をつけろよ?」
情報網の元に関して私は思い当たるけどな…
横目でのんちゃんを見るけど彼女は素知らぬ顔でカップを口元に運んでいる。
「人質に関してはあまり心配なさらなくても大丈夫だと思いますよ。
お屋敷にはかなりの防御がほどこされていますし。我々使用人も多少心得がありますので。」
ダミアンさんが新しいカップを出しながらにっこりした。
「そうよ~スリジェ家は使用人はもちろん一族の方々もそこらの騎士より強いんだから。セリーナ様は特にその美しい身のこなしで男女問わず憧れられていたのよ?」
ダミアンさんが新しく用意したカップの前にすべるような身のこなしで座ったのはアリアドネ様だった。
「母上!」
リークは勢いよく立ち上がり目を丸くしている。
「ハァイ、私の天使。急に姿を隠すから心配したわ。」
「なんで母上がここに?」
「それはこっちのセリフよ。勝手に王宮を抜け出したりして。使ったことのない魔法を一人で試すのはやめてちょうだいって言ってるのに。」
リークは頬を膨らませてプイっと横を向いた。
「いつまでも子供扱いするのはやめていただきたい。」
「子供扱いじゃないわ。一国の王子として自覚してちょうだいと言っているのよ。貴方を見失った誰かが責めを負わされると考えたことは?貴方の魔法が暴走して誰かを巻き込まないと言い切れる?」
あ、アリアドネ様がお母さんの顔になってる。かわいそうだけど今は余計な口出しはできないかな。
「謝ります。ごめんなさい。」
しばらくしてリークはうつむいたまま絞り出すように言った。
「分かってくれたならいいの。貴方に不自由な思いをさせている自覚はあるし…
リノアのおかげで魔力もだいぶ落ち着いてきたし。別棟に貴方の友人になれそうな子を何人か招待してみましょう。」
「友人ならもうできました!」
リークは急に元気になって顔をあげる。
「ディルとマリーベルです。」
両手で私とディルを指し示す彼の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
「賢者ニリーナの名を語った不届き者がリド教の一部の人間を誘導してリトアとイシェラの間に戦の種を撒こうとしていたのはさすがに知ってるだろ?」
「はい。あ、いや、うん。知ってる。」
「お前の父親とリノアの父親は以前から調査をしていたらしい。今、怪しいと思われる家には平民、貴族問わず調査の手が伸びている。
その中で一番功績をあげているのが飛馬の騎士だ。
更にこないだ、ある貴族が自分の罪を平民に被せようとした。何人かの役人は買収されてその平民を捕らえたけど飛馬の騎士が疑問を抱き独自に調査をして全てが明るみに出たんだ。
今、平民たちの間で彼は英雄だよ。
しかもかっこいいのは、解放された平民がお礼を言ったら
私が気づかずともニリーナ様の目は誤魔化されなかったでしょう。
とだけ言って去っていったらしい。
その噂を聞いた貴族たちは調査に入られる前に身の潔白を証明したくて春雷や公爵の元に殺到してる。
自ら関わっていたことを告白しにくる人も増えてる。
だから春雷たちが忙しいのは当たり前だ。」
「そうだったんですね。」
全然知らなかった。
私は応接間の窓を見上げてポカンとしてしまった。
「お前、呑気だな~
春雷や公爵はどんな小さな情報も見逃さないらしい。その情報網も全く分からないらしくて後ろ暗いところがある貴族連中は震えてるぞ。
そういう連中は家族を人質にとって脅したりするんだよ。気をつけろよ?」
情報網の元に関して私は思い当たるけどな…
横目でのんちゃんを見るけど彼女は素知らぬ顔でカップを口元に運んでいる。
「人質に関してはあまり心配なさらなくても大丈夫だと思いますよ。
お屋敷にはかなりの防御がほどこされていますし。我々使用人も多少心得がありますので。」
ダミアンさんが新しいカップを出しながらにっこりした。
「そうよ~スリジェ家は使用人はもちろん一族の方々もそこらの騎士より強いんだから。セリーナ様は特にその美しい身のこなしで男女問わず憧れられていたのよ?」
ダミアンさんが新しく用意したカップの前にすべるような身のこなしで座ったのはアリアドネ様だった。
「母上!」
リークは勢いよく立ち上がり目を丸くしている。
「ハァイ、私の天使。急に姿を隠すから心配したわ。」
「なんで母上がここに?」
「それはこっちのセリフよ。勝手に王宮を抜け出したりして。使ったことのない魔法を一人で試すのはやめてちょうだいって言ってるのに。」
リークは頬を膨らませてプイっと横を向いた。
「いつまでも子供扱いするのはやめていただきたい。」
「子供扱いじゃないわ。一国の王子として自覚してちょうだいと言っているのよ。貴方を見失った誰かが責めを負わされると考えたことは?貴方の魔法が暴走して誰かを巻き込まないと言い切れる?」
あ、アリアドネ様がお母さんの顔になってる。かわいそうだけど今は余計な口出しはできないかな。
「謝ります。ごめんなさい。」
しばらくしてリークはうつむいたまま絞り出すように言った。
「分かってくれたならいいの。貴方に不自由な思いをさせている自覚はあるし…
リノアのおかげで魔力もだいぶ落ち着いてきたし。別棟に貴方の友人になれそうな子を何人か招待してみましょう。」
「友人ならもうできました!」
リークは急に元気になって顔をあげる。
「ディルとマリーベルです。」
両手で私とディルを指し示す彼の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
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