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第一章 リトア王国

リーク王子のわがままの訳

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両手で私とディルを指し示す彼の顔には満面の笑みが浮かんでいた。

「あら…」

アリアドネ様は面白がるように私たちを眺めてからにっこり微笑んだ。

「良かったわ。ディルくんもマリーちゃんもとてもいい子ですものね。」

「母上は2人をご存知だったのですか?」

「うふふ、ちょっとね。」

意味深な返しにリークは拗ねたように口を尖らせている。

「知り合いだったなら紹介してくださればよかったのに。」

「あら、リノアがいれば友人はいらないって拗ねてたのは誰だったかしら?」

「王宮に来た連中は嫌いです。」

アリアドネ様は困ったように頬に手を当てて首をかしげた。

「困ったわね~ディルとマリーももちろん友人としてありがたいけど隣国の者ばかりと仲が良いとか言われたら面倒でしょう?」

「リークは王宮に来た方たちは何故嫌だったの?」

「ニヤニヤギラギラしてるから。」

キッパリとした口調からリークの強い思いが伺える。

困惑した様子のアリアドネ様をのんちゃんが真っ直ぐ見つめて口を開いた。

「リーク様は人を見抜く力に長けているのだと思います。
嘘をつかれたりしたらすぐに分かりますよね?」

「当たり前だ。顔や体の動きを見ていれば分かる。皆んなも分かるだろ?」

当然と言わんばかりに問いかけられて私は黙り込んでしまう。ディルも困った笑みを浮かべているしアリアドネ様は何か考えこんでいる。

「なるほどね~確かに、貴方が嫌がった従者や、騎士、大臣たちも皆んな後から何かしら問題が見つかっていたのよね。」

アリアドネ様は立ち上がりリークの隣にしゃがんだ。

「分かってあげられなくてごめんなさい。
これからは気をつけるし、もっと貴方の意思を尊重するわ。」

拗ねた顔だったリークの顔にジワジワ笑顔が広がっていく。

「ありがとう。母上。」

ギュッとアリアドネ様に抱きつくリーク。
かわいい。そして良かった~今までただのわがままだと思われてたんだもんね。

「あぁ。でも公然とマリーちゃんやディルくんと仲良くするためにはイシェラ王国の友達も作らなきゃね。」

「えぇ~面倒くさい。いらないです。」

「そうなのよね~面倒くさいのよ。王族って。」

嫌そうな表情を浮かべる2人はよく似ていた。

のんちゃんはそんな二人に笑いながら提案し始める。

「ユーグ家のご子息とお会いになられたことは?」

「王立魔導師長、リチャード・ユーグの息子?まだ会ったことはないわね。父親のリチャードはリークが好きじゃないタイプの人間に見えるけど…」

「子供が必ずしも父親に似るとはかぎりませんから。ご子息だけで渋るようならリークの婚約者候補に挙がっていたイライザ様も一緒にお呼びすれば魔導師長殿も頷かれるかもしれません。」

アリアドネ様はしばらく考えこんでいたけれど最後にはうなずいてのんちゃんの耳元に顔を寄せた。

「何か事情がありそうね?」

「さぁ、私も小耳にはさんだだけですので。」

二人してウフフふふ~と意味深な笑い声をあげている姿がちょっぴり怖く感じた。
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