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第二章 イシェラ王国
式典の始まりです
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陛下がおいでになる合図と共に会場中の人間が静かに頭を下げる。もちろん私も。
数人の足音と衣擦れの音がした後、陛下からお許しをいただき顔をあげる。
イシェラ王国国王とリトア王国国王が並び後ろに両国の王族の方たちと騎士が並ぶ。
その騎士の中にカストルの姿を見つけ立派な姿になんだかジンとする。
私たちに会ってしばらくは言葉も発しないしマントの中に身を縮めこんで顔も見せなかった彼だけど何度も会って話すうちにだんだんと緊張を解いてくれた。
のんちゃんが何か色々アドバイスしていたのが一番大きいんだと思うけど、いつも二人で話していたからどんな話をしていたのかは分からない。
半年もするとフードを被ることもなくなり、意外と言っては失礼かもしれないけど剣の実力を買われたのとリークからの信頼もあついことから陛下直々に専属騎士に任命され、リーク直属の第二王子騎士団の一員となって頑張っているのだ。
イライザと同じ薄緑色の髪に黄色い瞳、焦げ茶色の詰め襟の制服がよく似合っている。
これほどの人数に注目される場でもキリッと立っている姿は感動もの……ん?
カストルの目が光を失っている気がする。
もしかして気が遠くなってる?
がんばれカストル!
カストルに気を取られているうちに本日の主役、クリアフォルト王弟殿下が入場し陛下の前に進み出る。
労いとお褒めの言葉に続き、褒賞の話になる。
「褒賞金はもちろん、領地でも何でもそなたが望むものを何なりと申せ。そなたがいなければせっかく友好関係を築いていたリトア王国との関係に亀裂が入っていたかもしれない。」
キルライト陛下の言葉にクリアフォルト様はスッと顔をあげる。
「褒賞金も領地も望みません。
私はただ愛する者のために危険を取り除いただけです。
私が愛する唯一の方のために。」
クリアフォルト様の視線が真っ直ぐに陛下の後ろに立つアリアドネ様に向けられる。
アリアドネ様は頬を染めながらクリアフォルト様と見つめ合う。でも皆の視線が集まっていることに気づき苦しそうにそっと視線を下に下げた。
それでもクリアフォルト様はアリアドネ様を見つめ続けている。
「ふむ。」
二人の顔を交互に見ながら陛下は唸った。
「彼女を得ることはそなたの長きにわたる願いであった。
国王として、兄として叶えてやりたいと思うが…アリアドネ。そなたの気持ちはどうだ?」
陛下のこの質問は予定外なはずだ。私も、お父様たちもアリアドネ様本人も少なからず驚いている。
「私は…私は…」
アリアドネ様はチラッとリークを見た。
リークがアリアドネ様に何か小声で言っている。
それで決心がついたのか、アリアドネ様は美しいカーテシーの姿勢をとり陛下に答える。
「恐れながら、私の気持ちはクリアフォルト王弟殿下と寸分違わぬものでございます。」
「それは違うな。」
クリアフォルト様の声が響き渡った。
「私の方が数段貴女を愛している。この世にいるどの者たちよりも深く。」
アリアドネ様は頭を下げたままだから表情が見えないけど、小さく震えているのはカーテシーを続けているせいではないと思う。
陛下の御前にも関わらず堪えきれなかったヒソヒソ声が会場に響き始める。
数人の足音と衣擦れの音がした後、陛下からお許しをいただき顔をあげる。
イシェラ王国国王とリトア王国国王が並び後ろに両国の王族の方たちと騎士が並ぶ。
その騎士の中にカストルの姿を見つけ立派な姿になんだかジンとする。
私たちに会ってしばらくは言葉も発しないしマントの中に身を縮めこんで顔も見せなかった彼だけど何度も会って話すうちにだんだんと緊張を解いてくれた。
のんちゃんが何か色々アドバイスしていたのが一番大きいんだと思うけど、いつも二人で話していたからどんな話をしていたのかは分からない。
半年もするとフードを被ることもなくなり、意外と言っては失礼かもしれないけど剣の実力を買われたのとリークからの信頼もあついことから陛下直々に専属騎士に任命され、リーク直属の第二王子騎士団の一員となって頑張っているのだ。
イライザと同じ薄緑色の髪に黄色い瞳、焦げ茶色の詰め襟の制服がよく似合っている。
これほどの人数に注目される場でもキリッと立っている姿は感動もの……ん?
カストルの目が光を失っている気がする。
もしかして気が遠くなってる?
がんばれカストル!
カストルに気を取られているうちに本日の主役、クリアフォルト王弟殿下が入場し陛下の前に進み出る。
労いとお褒めの言葉に続き、褒賞の話になる。
「褒賞金はもちろん、領地でも何でもそなたが望むものを何なりと申せ。そなたがいなければせっかく友好関係を築いていたリトア王国との関係に亀裂が入っていたかもしれない。」
キルライト陛下の言葉にクリアフォルト様はスッと顔をあげる。
「褒賞金も領地も望みません。
私はただ愛する者のために危険を取り除いただけです。
私が愛する唯一の方のために。」
クリアフォルト様の視線が真っ直ぐに陛下の後ろに立つアリアドネ様に向けられる。
アリアドネ様は頬を染めながらクリアフォルト様と見つめ合う。でも皆の視線が集まっていることに気づき苦しそうにそっと視線を下に下げた。
それでもクリアフォルト様はアリアドネ様を見つめ続けている。
「ふむ。」
二人の顔を交互に見ながら陛下は唸った。
「彼女を得ることはそなたの長きにわたる願いであった。
国王として、兄として叶えてやりたいと思うが…アリアドネ。そなたの気持ちはどうだ?」
陛下のこの質問は予定外なはずだ。私も、お父様たちもアリアドネ様本人も少なからず驚いている。
「私は…私は…」
アリアドネ様はチラッとリークを見た。
リークがアリアドネ様に何か小声で言っている。
それで決心がついたのか、アリアドネ様は美しいカーテシーの姿勢をとり陛下に答える。
「恐れながら、私の気持ちはクリアフォルト王弟殿下と寸分違わぬものでございます。」
「それは違うな。」
クリアフォルト様の声が響き渡った。
「私の方が数段貴女を愛している。この世にいるどの者たちよりも深く。」
アリアドネ様は頭を下げたままだから表情が見えないけど、小さく震えているのはカーテシーを続けているせいではないと思う。
陛下の御前にも関わらず堪えきれなかったヒソヒソ声が会場に響き始める。
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