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第三章 魔法学園
迎賓館での憂鬱な会食 (マリーベル視点)
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お風呂に入ってサッパリ汗を流しアイリーンが運んできてくれた夕食を食べていた時、何やら廊下が騒がしくなり不審に思った私は様子を見に行ってもらった。
「イライザ様が突然お一人で戻っていらしたそうで後ほどマリー様にお会いしたいとおっしゃっていたそうです。」
「え?こんなに早く帰ってきたの?どうしたんだろう。」
不安に思いつつ私は食事を済ませ、食後のお茶を2人分用意してもらった。
タイミングよく現れたイライザは目元が赤く何やら落ち込んだ様子で驚いた私は彼女のもとへ駆け寄り椅子へとエスコートする。
「いったいどうしたのイライザ。」
尋ねる私に彼女はなかなか口を開かなかったけど温かい紅茶を勧めホッとひと息ついてからイライザは迎賓館で何が起きたか話してくれた。
信じられなかった。いや、食事に毒を盛られたり事故に見せかけて殺されかけたことがあると聞いていたんだから当然予想しておくべき事態だったんだろうけど…
他国の迎賓館で、同じ建物に王子たちも暮らしているというのにそんな強行手段に出るなんて。
何より、そんな緊迫した暮らしをしているすぐ側でのんきに暮らしていたと思うとのんちゃんが戻ってくるまではとりあえずもう少し嫌がらせを我慢してもらおうなんて考えていた自分が嫌になる。
「意識は戻っていましたし。王室に仕えるお医者様が見てくださっているのでとりあえずは安心ですが。私、彼女に酷いことを言ってしまいましたわ。弱っている彼女に。どう考えても最低の振る舞いでした。」
イライザもずーんと落ち込んでいる。
どんよりした空気を払うようにアイリーンが笑顔でお茶菓子を運び何やらゴソゴソやっていたと思うと
「もしも~し」
能天気なのんちゃんの声が部屋に響き渡った。
「え?のんちゃん?」
「り、リノア?」
私とイライザは同時に立ち上がり私はアイリーンに近づきリノアは何故か扉の方へにじり寄っていく。
「私、私、今リノアに会わせる顔がないですわ。」
「へ?なんで?」
聞いてもイライザは真っ赤な顔で首を振るばかり。
「マリー?イライザ?どうかした?」
呼ばれたので私はアイリーンが開いて持っている本の前までやって来た。
ページの上にのんちゃんの映像が浮かび上がっている。
「のんちゃん元気?」
「元気、元気。マリーは変わりない?ルルが大変だったね。イライザは?」
もうルルのことを知っているのんちゃん。
情報早すぎ。
「えっと…イライザはちょっとまだ動揺がおさまってなくて…」
こちらに振るなと言わんばかりに顔の前で手を振っているイライザをチラッと見てから彼女を隠すようにのんちゃんの前に立つ。
「そっか、イライザは現場にいたんだっけ。」
「のんちゃん、何で遠くにいるのに分かるの?」
「え?あぁ、ルルにかけてた防御魔法で伝わってくるんだよ。」
「防御魔法…」
ちゃんと効いてたのかな…
なんて疑ったのがバレたらしい。のんちゃんが不機嫌そうな顔になる。
「防御魔法をかけた時にルルと話し合って最低限のレベルにしたんだよ。証拠集めの為にね。」
「証拠?」
「そっ、ルルの周りから怪しい人物を外すのにただルルが嫌だからなんて理由にしたら帝国であることないこと言われまくるだろうから証拠集めをしてたんだよ。
防御魔法のレベルを意識が飛びそうになる前ギリギリになったら稲光で攻撃してどんな敵も弾くよう設定したんだ~
代わりにルルが苦痛を感じたり少しでも嫌だと思った時にルル目線で状況や会話が録画されてる。
被害者目線で見なきゃ伝わらないことってあるからね~帝国側が証拠として信じてくれるかが怪しかったけど今回の騒動のせいで信じざるを得ないだろうね。」
最低限のレベルの防御魔法にしちゃどんな敵も弾くって…
ちょっと悪そうな顔をしているのんちゃん。
まさか、わざとだったとか言わないよね?
「わざとだったなんてことは…」
恐る恐る聞くとのんちゃんは、両手を振って否定する。
「さすがにわざと相手を怒らせるよう言ったりはしないよ~ただ、今のところ決定打にかけるとは言ったけど。」
「わざと無茶させるよう言ったようなものではありませんか!」
ずっと扉の前で聞いていたイライザがカンカンになって早足で近づいてきた。
「あ、イライザやっほ~元気?」
「のんきに挨拶している場合ではありません。あなた、ルルに申し訳ないと思わないのですか?」
「だってルルが望んだから手伝ってるだけだもん。
自分は周りにどう思われてもいいからとにかく帝国に揉み消されない確固たる証拠が欲しいって。」
「どうしてそこまで…」
「ソーマ王子の弱みが家族くらいしか見当たらないからでしょ。
イライザの言う通り家族の為に自分は犠牲になってもいいなんてバカバカしいしソーマ王子はそんなこと望んでない。でもルルの命を天秤にかけようとする輩がうじゃうじゃいるのは事実で綺麗事言って諦めてくれるような奴らじゃない。
正論言って生きてけるような環境じゃないんだよ。
ルルたちが生きてきた世界は。」
イライザはまるでのんちゃんに叩かれたように立ちすくみ、そっと顔を下に向けた。
「そう、そうですわよね。邸の中でぬくぬく育った私が大きな口をたたくなんて。正論振りかざしてルルを傷つけるなんて。愚か者ですわよね。」
「言っとくけどルルからイライザの映像が送られて来たことは今日を含めて一度もないからね。
防御魔法が発動したから精霊に状況を送ってもらっただけだから。」
「なんですの…その規格外…」
しょんぼりと肩を落としながらもイライザは小さく笑った。
どうすればいいか分からなかったけどとりあえずイライザを横から抱きしめて背中を撫でる。
ルルは、今ごろどうしてるかな?窓の向こうにチラッと見える迎賓館の明かりを見つめながら私は小さくため息をついた。
「イライザ様が突然お一人で戻っていらしたそうで後ほどマリー様にお会いしたいとおっしゃっていたそうです。」
「え?こんなに早く帰ってきたの?どうしたんだろう。」
不安に思いつつ私は食事を済ませ、食後のお茶を2人分用意してもらった。
タイミングよく現れたイライザは目元が赤く何やら落ち込んだ様子で驚いた私は彼女のもとへ駆け寄り椅子へとエスコートする。
「いったいどうしたのイライザ。」
尋ねる私に彼女はなかなか口を開かなかったけど温かい紅茶を勧めホッとひと息ついてからイライザは迎賓館で何が起きたか話してくれた。
信じられなかった。いや、食事に毒を盛られたり事故に見せかけて殺されかけたことがあると聞いていたんだから当然予想しておくべき事態だったんだろうけど…
他国の迎賓館で、同じ建物に王子たちも暮らしているというのにそんな強行手段に出るなんて。
何より、そんな緊迫した暮らしをしているすぐ側でのんきに暮らしていたと思うとのんちゃんが戻ってくるまではとりあえずもう少し嫌がらせを我慢してもらおうなんて考えていた自分が嫌になる。
「意識は戻っていましたし。王室に仕えるお医者様が見てくださっているのでとりあえずは安心ですが。私、彼女に酷いことを言ってしまいましたわ。弱っている彼女に。どう考えても最低の振る舞いでした。」
イライザもずーんと落ち込んでいる。
どんよりした空気を払うようにアイリーンが笑顔でお茶菓子を運び何やらゴソゴソやっていたと思うと
「もしも~し」
能天気なのんちゃんの声が部屋に響き渡った。
「え?のんちゃん?」
「り、リノア?」
私とイライザは同時に立ち上がり私はアイリーンに近づきリノアは何故か扉の方へにじり寄っていく。
「私、私、今リノアに会わせる顔がないですわ。」
「へ?なんで?」
聞いてもイライザは真っ赤な顔で首を振るばかり。
「マリー?イライザ?どうかした?」
呼ばれたので私はアイリーンが開いて持っている本の前までやって来た。
ページの上にのんちゃんの映像が浮かび上がっている。
「のんちゃん元気?」
「元気、元気。マリーは変わりない?ルルが大変だったね。イライザは?」
もうルルのことを知っているのんちゃん。
情報早すぎ。
「えっと…イライザはちょっとまだ動揺がおさまってなくて…」
こちらに振るなと言わんばかりに顔の前で手を振っているイライザをチラッと見てから彼女を隠すようにのんちゃんの前に立つ。
「そっか、イライザは現場にいたんだっけ。」
「のんちゃん、何で遠くにいるのに分かるの?」
「え?あぁ、ルルにかけてた防御魔法で伝わってくるんだよ。」
「防御魔法…」
ちゃんと効いてたのかな…
なんて疑ったのがバレたらしい。のんちゃんが不機嫌そうな顔になる。
「防御魔法をかけた時にルルと話し合って最低限のレベルにしたんだよ。証拠集めの為にね。」
「証拠?」
「そっ、ルルの周りから怪しい人物を外すのにただルルが嫌だからなんて理由にしたら帝国であることないこと言われまくるだろうから証拠集めをしてたんだよ。
防御魔法のレベルを意識が飛びそうになる前ギリギリになったら稲光で攻撃してどんな敵も弾くよう設定したんだ~
代わりにルルが苦痛を感じたり少しでも嫌だと思った時にルル目線で状況や会話が録画されてる。
被害者目線で見なきゃ伝わらないことってあるからね~帝国側が証拠として信じてくれるかが怪しかったけど今回の騒動のせいで信じざるを得ないだろうね。」
最低限のレベルの防御魔法にしちゃどんな敵も弾くって…
ちょっと悪そうな顔をしているのんちゃん。
まさか、わざとだったとか言わないよね?
「わざとだったなんてことは…」
恐る恐る聞くとのんちゃんは、両手を振って否定する。
「さすがにわざと相手を怒らせるよう言ったりはしないよ~ただ、今のところ決定打にかけるとは言ったけど。」
「わざと無茶させるよう言ったようなものではありませんか!」
ずっと扉の前で聞いていたイライザがカンカンになって早足で近づいてきた。
「あ、イライザやっほ~元気?」
「のんきに挨拶している場合ではありません。あなた、ルルに申し訳ないと思わないのですか?」
「だってルルが望んだから手伝ってるだけだもん。
自分は周りにどう思われてもいいからとにかく帝国に揉み消されない確固たる証拠が欲しいって。」
「どうしてそこまで…」
「ソーマ王子の弱みが家族くらいしか見当たらないからでしょ。
イライザの言う通り家族の為に自分は犠牲になってもいいなんてバカバカしいしソーマ王子はそんなこと望んでない。でもルルの命を天秤にかけようとする輩がうじゃうじゃいるのは事実で綺麗事言って諦めてくれるような奴らじゃない。
正論言って生きてけるような環境じゃないんだよ。
ルルたちが生きてきた世界は。」
イライザはまるでのんちゃんに叩かれたように立ちすくみ、そっと顔を下に向けた。
「そう、そうですわよね。邸の中でぬくぬく育った私が大きな口をたたくなんて。正論振りかざしてルルを傷つけるなんて。愚か者ですわよね。」
「言っとくけどルルからイライザの映像が送られて来たことは今日を含めて一度もないからね。
防御魔法が発動したから精霊に状況を送ってもらっただけだから。」
「なんですの…その規格外…」
しょんぼりと肩を落としながらもイライザは小さく笑った。
どうすればいいか分からなかったけどとりあえずイライザを横から抱きしめて背中を撫でる。
ルルは、今ごろどうしてるかな?窓の向こうにチラッと見える迎賓館の明かりを見つめながら私は小さくため息をついた。
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