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第三章 魔法学園

悩めるイライザは大変そうです

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とにかく私も落ち着いて。っとイライザにうながされて紅茶を飲みほすとタイミングよくアイリーンが次の紅茶を運んできてくれる。

新しく運ばれた紅茶はふわりと甘い香りのするハーブティーで添えられた白い花からも同じいい香りがする。

イライザはさっそく新しいカップを手に取り香りを楽しんでから小さくため息をついた。

「とはいえ私がリノアに代わってリークの婚約者になるのは危険すぎますわ。」

「そんなぁ」

確かにリノアがリークの婚約者になったらユーグ公爵の野心がさらに燃え上がりそうだけど…

「マリーがどこまで認識しているか分かりませんがエドワード様が卒業と共に皇太子になられることが決まっている今でさえリークを皇太子に推す声は少なからずあるのです。その筆頭が表立ってはいませんがお父様ですわ。」

「のんちゃんがそこを考えないわけないからきっと大丈夫じゃないかな?」

他力本願だけど私が余計な動きをしてのんちゃんの邪魔をしてもよくないし。
リノアも複雑そうにしつつうなずいている。

「それは確かにそうですわ。とにかくアロイス様が帰っていらして話を聞くまでは私はリークと距離をおきたいんですの。それなのに…」

言っているそばから扉がノックされて返事も聞かずにリークが入ってきた。

「ほらまた来ましたわ。」

「なんだよ~そんな嫌そうにすんなよな。」

リークは心外そうに眉をひそめてズンズン入ってくるとイライザの隣に立ちカップを持つ彼女の右手に手を重ねて持ち上げると身をかがめて紅茶を一口飲んだ。

「あ?なんだよこれ。匂い強っ、しかも苦くね?」

「なっなっなっ!!?」

イライザは驚愕しすぎて言葉が出ないみたい。

私も固まったまま二人を見つめる。

暖かい陽だまりの光を集めたような金髪に空色の目を細めて愛おしそうにイライザを見下ろすリーク。
若草色の艶やかなウェーブがかった長い髪で桜色に染まった顔を必死に隠そうとしながらそっとリークを見上げているイライザ。

絵になるな~

必死に抵抗しているイライザには悪いけど私は二人のやりとりで目の保養をさせてもらう。

いや~リーク大胆だな~
お互い好意を持ってなきゃちょっとストーカーっぽいけど。
こういうことサラッとできる人って実在するんだね。
ただしイケメンに限るってこういうことか~

ボンヤリしていたら真っ赤になって涙目のイライザに睨まれた。

「マリーったら薄情ですわ。
見ていないで助けてくださいませ。」

あらあらという感じでリークの分のカップを運んできたアイリーンがリークに椅子をすすめて二人を引き離すことに成功している。
さすがアイリーン。流れるような自然な動きに感心してしまう。

「なんだよ、そんなに嫌がることないだろ?傷つくなー」

リークは足を組みカップを手に取る。香りからしてコーヒーらしい。

「リーク、イライザは別に嫌がってるわけじゃないよ、ただ変化に戸惑っているだけで。
だってちょっと前までリークにはリノアがいるから好きになっちゃいけないと思ってたみたいだし。」

「マリー!」

突然イライザが叫んで飛び上がると両手で私の口を塞ぐ。

「なんだよ、それじゃあイライザがもう俺を好きみたいじゃないか。」

リークはカップを置き不審そうに私たちに目を向ける。

口を塞がれたままコクコクうなずくとリークの顔がパッと輝く。

「お黙りなさいマリー!」

イライザが怒ってるけど、私一言も喋ってないよ?

「イライザ様、主人に代わりお詫びいたしますのでどうか、手を離していただけませんか?」

アイリーンが深々と頭を下げる。

えっ?なんで?

「ホープもごめんなさいする。マリー許してあげて。」

いつの間にか現れたホープも頭を下げる。

「そ、そんなアイリーン、聖獣様までおやめください。離しますわ。離しますから。」

イライザは熱いものを触ってしまったようにパッと私から離れる。

そうして離れたイライザの体が抱き込まれたのがリークの腕の中で慌てて首だけで振り返ったイライザにリークが今まで見せた中で1番の輝く笑顔見せた。

「イライザもう観念したほうがいいんじゃない?」

「そうだぞイライザ諦めろ。」

「もうなんなんですの!二人とも嫌いですわ。」

逃げだそうとするイライザを更に抱きしめ直して

「悪い、ちょっとこいつ借りるわ。」

と言うなりリークは素早く肩にかけていたマントでイライザを覆い隠すとシュッと姿を消した。

「だ、大丈夫かなぁイライザ。」

ポカンと見送る私はその後すぐにアイリーンとホープからお説教を受けた。

人の気持ちを軽々しくその相手に話してはいけないと。

「人の恋路は黙って暖かく見守るものですよ、マリー様。」

「そうよ~マリー。邪魔すると妖精に蹴られて死んじゃうの。ホープだって知ってるよ。」

二人のお説教は皆んなが部屋に戻ってくるまで続いた。
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