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第三章 魔法学園

彼女の企み  (偽ニリーナ視点)

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ロベリアの気配が消えた。完全に。

確かめに行ってもいいがその労力すら惜しい。
馬鹿な学園長が全ての事件をロベリアに被せようとしている。
王宮に仕える彼の親族は籠絡済みだから心配はないけど学園内で彼女に非難が集中するのはまずい。これからは私がロベリア・ハフスになるのだから。

私は全身を鏡に映し、見事な赤毛をパサッと手で後ろに払いのける。

真っ白な肌、赤茶色の瞳は光の加減で金の輝きを持つ。

この娘が持つどの色も火の精霊の祝福と力に溢れている。もちろん、私ほどではないけれど。
確かにあの娘が常に言っていたようにこれほどの証を持っていれば高位貴族や王族にだって望まれても不思議はない。

同世代にリノア・エシャルロットやイライザ・ユーグ、セーラ・ローランドがいたのが運のつき。

恵まれているんだかいないんだか不思議な娘だ。

私はジッと鏡に映る姿に見入る。
本人が自惚れるのもまぁ無理はない程度に整った容姿、ただ中身が残念すぎた。
賢さをどこかに置き忘れたのかと思うほど立ち回りが下手くそで見ていてイライラしっぱなし。

「まっ、私の手にかかれば学園内の醜聞なんてすぐさま塗り替えられる。」

もっと早くにこうしていれば良かったが、目障りなあのアロイス・エシャルロットが居たせいでなかなか実行に移せなかった。

鏡台の前に移動し、髪色に合う華やかな赤い紅をひく手を止め顔を顰める。
見慣れた表情だ。あの娘はしょっちゅうこんな表情ばかりしていた。自分の武器を最大限に振るえず悪態ばかりついていた哀れな娘。

アロイスの身体が見つからないのは誤算だが精神体を失った今、それはむくろに他ならない。憎らしいあのスリジェ家の娘を絶望に追いやるには幻影で充分だ。

「せいぜい私が有効活用してやるわ。感謝なさい。」

私は鏡に映るロベリアの頬をスッとなぞり極上の笑みを浮かべた。

なかなか悪くない。最近は地味な姿ばかりしていたから久しぶりに美しい姿で華やかに振る舞うことができる。

まずは学園長に、それから攻略対象たちに会いに行かなければ。

ニヤリと浮かびそうになる笑みを押し込めてパチンと化粧ケースを閉じると足早に、しかし優雅に部屋を後にした。
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