201 / 246
第三章 魔法学園
聖女の手記を読み解きます
しおりを挟む
「聖女の手記?」
部屋で紅茶を飲んでいた時急に切り出された聞き慣れない言葉に私は首をかしげた。
向かい側にいるのんちゃんは夕食会という名の作戦会議にむけて久しぶりにリノアの姿だ。
成長して男性らしくなったにも関わらず眩しいほど美しい。
金色の長い髪は流れるままに深い青のドレスが白い肌を引き立てていてまるで光を放っているみたいだ。
幻覚もかけているから…と本人は笑っているけど幻覚を纏う必要なんてないくらいのんちゃんの女装は完璧だと思う。
サラリと髪を後ろにはねる様子は大人の色気が混じっている。ポーッと見惚れている私に呆れながらのんちゃんは指を一振りして酷く古ぼけた茶色い革表紙の手帳を取り出した。
「わぁ。開いた瞬間にバラバラになっちゃいそうだけど?」
「うん、だから保護魔法で覆ってある。」
また軽々と言ってるけど学園や王宮の大人たちが聞いたらすがりついてきそうな魔法だ。
「聖女ってあの伝説の聖女?実在したんだ~」
おとぎばなしだと思ってたよ。
「実在するよ、マリーのご先祖様だし。」
「え?!」
驚いて固まる私にのんちゃんはお行儀悪くテーブルにひじをついていたずらっぽい笑みを浮かべる。
「読んでみたら。ご先祖様もマリーと同じように聖女と呼ばれることに違和感を持ってたみたいだよ。」
うながされて恐る恐る開いてみる。
触っているのに触っていないみたいな不思議な感覚。
たいして分厚いものでもないその手帳は日記というほどのものでもなくポツポツと走り書きから長文から色々だった。
【私の息子美形すぎ!】
開いたページで最初に飛び込んできたのがそれだった。
ご丁寧にかなり頑張って描き込んだ赤ちゃんのスケッチまでついている。確かに天使みたいに綺麗でかわいいけど…
私は無言で顔をあげのんちゃんを見つめる。
のんちゃんは肩をすくめて見せただけで先を読むよう促してくる。
【王宮に行くと聖女様。と崇められて困っちゃう。私そんなすごい者じゃないのに。神様に周りの好きに呼ばせるように言われてなかったら否定してまわるのに。
私よりたぶんお姉さんの方が強い力を持っているのにひたすら隠してるみたいだからその話を持ち出せなくてツライ。
旦那様と我が子に癒してもらう。】
「お姉さん?」
再び顔を上げるとのんちゃんは
「あっ、話すの忘れてた。」
と言って聖女の言う【お姉さん】の話をしてくれた。
「また一人で危ないことしてる!」
怒ったらいいのか呆れたらいいのかわからない私は抗議の声を上げる。
「まぁまぁ、今に始まったことじゃないし。」
「それ、自分で言うことじゃないからね?」
ひとしきり文句を言ったらやっとのんちゃんの話が頭に入ってきた。
「待って、じゃぁ偽ニリーナも私たちと同じ転生者ってこと?」
「ちょっと違うかなぁ。彼女はこの世界に転移してきたんだ。」
「転移?」
「そう、転移。つまり俺たちが有希と望として生きていた世界からその姿形のままこの世界に来た。いや、引き込まれたのかな?
俺たちが知ってる偽ニリーナの姿はどれも本物じゃない。
本当はおそらく日本人らしい姿をしてるはずだよ。
でも彼女はこの世界でもう何百年も生きてるはずだ。そこが俺たちと大きく違うところ。そして彼女の強みでもある。
まぁ力の方は弱ってきてるから倒すのはそんなに難しくないだろうけど俺はできれば竜の封印を解いて彼女を連れて行って欲しいんだよなぁ。」
サラッとその気になれば倒せる発言をするのんちゃん。相変わらずだなぁ、でも彼女のことを考えてあげてるんだね。私はなんだか胸が熱くなってのんちゃんの両手を握った。
「そうだよね、何百年も持ち続けているんだから会わせてあげなきゃだよね。」
「あー、うん。まぁね。」
のんちゃんは私と違ってなんだか煮え切らない返事をする。
部屋で紅茶を飲んでいた時急に切り出された聞き慣れない言葉に私は首をかしげた。
向かい側にいるのんちゃんは夕食会という名の作戦会議にむけて久しぶりにリノアの姿だ。
成長して男性らしくなったにも関わらず眩しいほど美しい。
金色の長い髪は流れるままに深い青のドレスが白い肌を引き立てていてまるで光を放っているみたいだ。
幻覚もかけているから…と本人は笑っているけど幻覚を纏う必要なんてないくらいのんちゃんの女装は完璧だと思う。
サラリと髪を後ろにはねる様子は大人の色気が混じっている。ポーッと見惚れている私に呆れながらのんちゃんは指を一振りして酷く古ぼけた茶色い革表紙の手帳を取り出した。
「わぁ。開いた瞬間にバラバラになっちゃいそうだけど?」
「うん、だから保護魔法で覆ってある。」
また軽々と言ってるけど学園や王宮の大人たちが聞いたらすがりついてきそうな魔法だ。
「聖女ってあの伝説の聖女?実在したんだ~」
おとぎばなしだと思ってたよ。
「実在するよ、マリーのご先祖様だし。」
「え?!」
驚いて固まる私にのんちゃんはお行儀悪くテーブルにひじをついていたずらっぽい笑みを浮かべる。
「読んでみたら。ご先祖様もマリーと同じように聖女と呼ばれることに違和感を持ってたみたいだよ。」
うながされて恐る恐る開いてみる。
触っているのに触っていないみたいな不思議な感覚。
たいして分厚いものでもないその手帳は日記というほどのものでもなくポツポツと走り書きから長文から色々だった。
【私の息子美形すぎ!】
開いたページで最初に飛び込んできたのがそれだった。
ご丁寧にかなり頑張って描き込んだ赤ちゃんのスケッチまでついている。確かに天使みたいに綺麗でかわいいけど…
私は無言で顔をあげのんちゃんを見つめる。
のんちゃんは肩をすくめて見せただけで先を読むよう促してくる。
【王宮に行くと聖女様。と崇められて困っちゃう。私そんなすごい者じゃないのに。神様に周りの好きに呼ばせるように言われてなかったら否定してまわるのに。
私よりたぶんお姉さんの方が強い力を持っているのにひたすら隠してるみたいだからその話を持ち出せなくてツライ。
旦那様と我が子に癒してもらう。】
「お姉さん?」
再び顔を上げるとのんちゃんは
「あっ、話すの忘れてた。」
と言って聖女の言う【お姉さん】の話をしてくれた。
「また一人で危ないことしてる!」
怒ったらいいのか呆れたらいいのかわからない私は抗議の声を上げる。
「まぁまぁ、今に始まったことじゃないし。」
「それ、自分で言うことじゃないからね?」
ひとしきり文句を言ったらやっとのんちゃんの話が頭に入ってきた。
「待って、じゃぁ偽ニリーナも私たちと同じ転生者ってこと?」
「ちょっと違うかなぁ。彼女はこの世界に転移してきたんだ。」
「転移?」
「そう、転移。つまり俺たちが有希と望として生きていた世界からその姿形のままこの世界に来た。いや、引き込まれたのかな?
俺たちが知ってる偽ニリーナの姿はどれも本物じゃない。
本当はおそらく日本人らしい姿をしてるはずだよ。
でも彼女はこの世界でもう何百年も生きてるはずだ。そこが俺たちと大きく違うところ。そして彼女の強みでもある。
まぁ力の方は弱ってきてるから倒すのはそんなに難しくないだろうけど俺はできれば竜の封印を解いて彼女を連れて行って欲しいんだよなぁ。」
サラッとその気になれば倒せる発言をするのんちゃん。相変わらずだなぁ、でも彼女のことを考えてあげてるんだね。私はなんだか胸が熱くなってのんちゃんの両手を握った。
「そうだよね、何百年も持ち続けているんだから会わせてあげなきゃだよね。」
「あー、うん。まぁね。」
のんちゃんは私と違ってなんだか煮え切らない返事をする。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
106
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる