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第4章 夏休みは何をするもの?
夢はなに?
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「…そういうのって、慣れるもの?」
涼の指先が千尋の髪を撫でながら聞く。
「慣れるっていうかさ。子供の頃は、なんで俺だけが病気なんだってイライラして、もうどうにでもなれって無茶したり、父さんや看護師さんに八つ当たりしたりしてた。でも、もうその時期は過ぎたかな。今は…受け入れるしかないって思ってる。」
「受け入れる?」
「うん。そうしないとやってられないだろ。確かに、毎日びくびくして生きてるし、健康な人から見たら、体調にばかり気を使って、無理もできない人生なんてつまらないって思うのかもしれない。…でも、それが俺の現実だから、いつまでも卑屈になってもいられないだろ」
「…つまらないなんて思わないよ。」
「細ーく細ーく、でも、自分の力で生きていく。それが今の俺の夢かな。」
「…なんとなくわかった気がする。」
いきなり重たい話をしたから、涼も返事に困っているようだった。どう言えばいいのか探しているのだろう。わかりやすく、困ったように首をかしげ、唇を少し尖らせている仕草につい苦笑してしまう。
元気で明るい生活を送ってる人は、どうすれば生きられるか、なんて考えもしないことだろうし、そんなことを言われても困るだけだろう。
「……じゃさ、涼は将来の夢って何?」
涼が自分のことを話すことがあまりない気がして、ふと、聞いてみた。
「俺ですか? んー、今は特にないな」
何も考えたことありません、というようなあまりにも軽い口調だった。肩をすくめる仕草もついてきて、冗談みたいに聞こえる。
「今じゃなくてもさ、たとえば子どもの頃、宇宙飛行士になりたかったとか」
「宇宙は絶対ムリですね。なんだかんだ制約が多そう。息して動くのも大変なのに、なぜ行きたいかよくわかんないな。アベンジャーズに誘われても断るな、絶対。」
「誘われねーよ。絶対、そんなヤツは。」
アベンジャーズだって、根性あるヤツしか欲しくないだろう。
「そうだな。しいていえば、前は自分の身体(からだ)を使った仕事がしたいって思ってたかな。」
「身体?」
意外な言葉に、思わずオウム返しになる。
「頭脳とか知識じゃなくて?」
「うん。身体」
「スポーツ選手、とか?」
「まさか。今から始めるには遅すぎるでしょ」
「……じゃあ、何?」
身体を使う仕事?筋肉系?いやいや、この細い身体だし、じゃ、植木職人とか、寿司職人?いやそれは、身体を使うっていうよりも技術を使うだろうし…他に身体を使うって?
カラダ?えっ?え?
「えっ…カラダを使うって…」
「ハハッ、今すっごいエッチな想像したでしょ」
涼がのけぞるように笑った。
「へぇ、千尋さんでもそういう顔するんだ。だったら今度、俺と一緒に身体を使うことを想像しておいてくださいね」
声を少し低くしてくすっと笑い、指先で千尋の唇をなぞる。
「おまえ…」
ふざけんな、と言おうとした口は慌てて閉じた。
これ以上何か言ったら、本当に口の中に、涼が指をつっこんできそうな気がした。
ホント、こいつの距離感ってバグってるから、思いも付かないようなことを仕掛けてきそうだ。
「熱は下がったみたいだから、そろそろ店、手伝いに行ってきます。おとなしく寝ててくださいね」
からかう笑みを残して、涼が立ち上がる。
「……ありがとな。いつも」
「そうだ。俺は千尋さんのそばにいるだけで楽しいけど、でも、それじゃ千尋さんが気になるっていうのなら、夏休みに二人でやりたいことを決めて、二人でやりましょう。」
涼はバイト用の黒いエプロンを頭からかぶりながら言う。
「やりたいこと、ねえ…」
夏休みに特別、何かして過ごすなんて、考えたこともなかったが、、夏という言葉だけで頭の中に風景が流れてくる。ひまわり、青空、かき氷…けれどどれも決め手に欠けて、すぐに通り過ぎてしまった。
「今、急には思いつかないな。涼は?」
「俺は、うーんと、俺は思いついたらすぐやっちゃうから、特にやりたいことって、ストックしてないんです。強いていえば…やっぱり夏の定番。花火大会に行きたいかな」
「花火か……じゃあ俺は、ちょっと考えさせて」
涼の指先が千尋の髪を撫でながら聞く。
「慣れるっていうかさ。子供の頃は、なんで俺だけが病気なんだってイライラして、もうどうにでもなれって無茶したり、父さんや看護師さんに八つ当たりしたりしてた。でも、もうその時期は過ぎたかな。今は…受け入れるしかないって思ってる。」
「受け入れる?」
「うん。そうしないとやってられないだろ。確かに、毎日びくびくして生きてるし、健康な人から見たら、体調にばかり気を使って、無理もできない人生なんてつまらないって思うのかもしれない。…でも、それが俺の現実だから、いつまでも卑屈になってもいられないだろ」
「…つまらないなんて思わないよ。」
「細ーく細ーく、でも、自分の力で生きていく。それが今の俺の夢かな。」
「…なんとなくわかった気がする。」
いきなり重たい話をしたから、涼も返事に困っているようだった。どう言えばいいのか探しているのだろう。わかりやすく、困ったように首をかしげ、唇を少し尖らせている仕草につい苦笑してしまう。
元気で明るい生活を送ってる人は、どうすれば生きられるか、なんて考えもしないことだろうし、そんなことを言われても困るだけだろう。
「……じゃさ、涼は将来の夢って何?」
涼が自分のことを話すことがあまりない気がして、ふと、聞いてみた。
「俺ですか? んー、今は特にないな」
何も考えたことありません、というようなあまりにも軽い口調だった。肩をすくめる仕草もついてきて、冗談みたいに聞こえる。
「今じゃなくてもさ、たとえば子どもの頃、宇宙飛行士になりたかったとか」
「宇宙は絶対ムリですね。なんだかんだ制約が多そう。息して動くのも大変なのに、なぜ行きたいかよくわかんないな。アベンジャーズに誘われても断るな、絶対。」
「誘われねーよ。絶対、そんなヤツは。」
アベンジャーズだって、根性あるヤツしか欲しくないだろう。
「そうだな。しいていえば、前は自分の身体(からだ)を使った仕事がしたいって思ってたかな。」
「身体?」
意外な言葉に、思わずオウム返しになる。
「頭脳とか知識じゃなくて?」
「うん。身体」
「スポーツ選手、とか?」
「まさか。今から始めるには遅すぎるでしょ」
「……じゃあ、何?」
身体を使う仕事?筋肉系?いやいや、この細い身体だし、じゃ、植木職人とか、寿司職人?いやそれは、身体を使うっていうよりも技術を使うだろうし…他に身体を使うって?
カラダ?えっ?え?
「えっ…カラダを使うって…」
「ハハッ、今すっごいエッチな想像したでしょ」
涼がのけぞるように笑った。
「へぇ、千尋さんでもそういう顔するんだ。だったら今度、俺と一緒に身体を使うことを想像しておいてくださいね」
声を少し低くしてくすっと笑い、指先で千尋の唇をなぞる。
「おまえ…」
ふざけんな、と言おうとした口は慌てて閉じた。
これ以上何か言ったら、本当に口の中に、涼が指をつっこんできそうな気がした。
ホント、こいつの距離感ってバグってるから、思いも付かないようなことを仕掛けてきそうだ。
「熱は下がったみたいだから、そろそろ店、手伝いに行ってきます。おとなしく寝ててくださいね」
からかう笑みを残して、涼が立ち上がる。
「……ありがとな。いつも」
「そうだ。俺は千尋さんのそばにいるだけで楽しいけど、でも、それじゃ千尋さんが気になるっていうのなら、夏休みに二人でやりたいことを決めて、二人でやりましょう。」
涼はバイト用の黒いエプロンを頭からかぶりながら言う。
「やりたいこと、ねえ…」
夏休みに特別、何かして過ごすなんて、考えたこともなかったが、、夏という言葉だけで頭の中に風景が流れてくる。ひまわり、青空、かき氷…けれどどれも決め手に欠けて、すぐに通り過ぎてしまった。
「今、急には思いつかないな。涼は?」
「俺は、うーんと、俺は思いついたらすぐやっちゃうから、特にやりたいことって、ストックしてないんです。強いていえば…やっぱり夏の定番。花火大会に行きたいかな」
「花火か……じゃあ俺は、ちょっと考えさせて」
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