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第5章 鳥の巣のデザイン
巣のデザイン
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「……え、鳥の巣箱?」
「うん」
千尋は真顔でうなずいた。夏休みにやりたいことをずっと考えて、最終的に千尋の頭の中に残ったのがそれだった。
「……それって、中学の工作みたいなやつ」
涼が吹き出すように笑いながら、千尋の部屋のゲーミングチェアに座ったまま足をぶらぶらさせる。
「中1だったかな。技術の授業で巣箱を作るっていうのがあって、できなかったのは夏休みに宿題になってたんだけど。俺、その時、ずっと学校に行けてない時期でそんな課題があったのも知らなくてさ。夏休み終わって、みんなの巣箱が教室に並んでるのに、俺のだけがなくて、それがなんか心残りでさ…」
我ながらバカらしいとは思うが、巣箱が飾られた教室に自分が作ったのがないことや、提出しなくて当たり前だとみんなから思われていることが、地味につらかった。
「工作ね。意外だけど、夏っぽいと言えば夏っぽいし、千尋さんっぽい」
涼は目を輝かせて、くすくす笑いながら立ち上がる。
「でも、まさか大学生になって工作とは思わなかったけど。じゃ、作りましょう。で、ベランダに置く?それとも庭の木?出来たら小鳥待ちもしようよ。お茶とかおやつとか準備して、ずっと静かに二人で黙ったまま小鳥を待つのも楽しそう。やるなら、ちゃんとしたやつ作ろう。」
「え、マジで?」
「もちろん。工具は俺が揃えます。ずっと残って、最強の思い出になりますね」
とりあえず、巣箱を裏庭の木に取りつけることにした。千尋の家は商店街に面した側が店になっているが、1階には殺風景ながらも、小さな裏庭があって、そこに数本の木が植えてある。エアコンの室外機が並ぶベランダよりも、きっと鳥にとっていい環境だろう。
「俺、デザインを考えてもいいですか?」
涼が自分のバッグの中からタブレットを取り出した。
「もちろん。でもさ、鳥の巣箱にデザインなんている?」
授業で作っていた巣箱は単なる四角の箱で、一つの面に丸い穴があるだけのシンプルなものだったから、巣箱というとそのデザインだと思っていた。
「何にでもデザインは必要。俺、デザインとか好きなんだよね」
涼はタブレット用のペンを取り出し、イラスト用アプリを起動させた。
「イラスト作成?涼はそういうこと好きなの?」
手慣れた様子で、あっという間に立体的な箱を描き出していく。
「まずはここで構想を練ってから、3Dで仕上げてみようよ。ね、どこが開いたほうがいい?
上が空いたほうが掃除がしやすいかな?」
「いや、考えたことないけど、掃除とか必要?鳥が自分でやるんじゃないの。出入り口がひとつあれば十分でしょ。」
「それじゃ凝れるところがないじゃん」
「凝らなくていいんだって」
「…うーん」
考える時の癖なのか、頬を少し膨らませながら涼がタブレットをにらんでいる。真剣に無心なそんな横顔は初めて見た。
ペン先が止まり、涼が視線だけ千尋に向けた。
「断熱材って、やっぱりいると思う?」
思いついたように投げかけられた問いに、千尋は「ええっ?」と声を裏返らせ、慌ててPCを立ち上げる。
「普通どうなんだ? 冬は平気でも夏は暑すぎるとか?ちょっと調べる…」
キーボードを打つ指が自然と跳ねる。
思いがけず涼が真剣に乗ってくれたことが、楽しくて仕方なかった。
本気で一緒に考えてくれるなんて、誰かと何かを作るのは初めてだ。
その事実だけで、心の奥がわかりやすく跳ねていく。
「うん」
千尋は真顔でうなずいた。夏休みにやりたいことをずっと考えて、最終的に千尋の頭の中に残ったのがそれだった。
「……それって、中学の工作みたいなやつ」
涼が吹き出すように笑いながら、千尋の部屋のゲーミングチェアに座ったまま足をぶらぶらさせる。
「中1だったかな。技術の授業で巣箱を作るっていうのがあって、できなかったのは夏休みに宿題になってたんだけど。俺、その時、ずっと学校に行けてない時期でそんな課題があったのも知らなくてさ。夏休み終わって、みんなの巣箱が教室に並んでるのに、俺のだけがなくて、それがなんか心残りでさ…」
我ながらバカらしいとは思うが、巣箱が飾られた教室に自分が作ったのがないことや、提出しなくて当たり前だとみんなから思われていることが、地味につらかった。
「工作ね。意外だけど、夏っぽいと言えば夏っぽいし、千尋さんっぽい」
涼は目を輝かせて、くすくす笑いながら立ち上がる。
「でも、まさか大学生になって工作とは思わなかったけど。じゃ、作りましょう。で、ベランダに置く?それとも庭の木?出来たら小鳥待ちもしようよ。お茶とかおやつとか準備して、ずっと静かに二人で黙ったまま小鳥を待つのも楽しそう。やるなら、ちゃんとしたやつ作ろう。」
「え、マジで?」
「もちろん。工具は俺が揃えます。ずっと残って、最強の思い出になりますね」
とりあえず、巣箱を裏庭の木に取りつけることにした。千尋の家は商店街に面した側が店になっているが、1階には殺風景ながらも、小さな裏庭があって、そこに数本の木が植えてある。エアコンの室外機が並ぶベランダよりも、きっと鳥にとっていい環境だろう。
「俺、デザインを考えてもいいですか?」
涼が自分のバッグの中からタブレットを取り出した。
「もちろん。でもさ、鳥の巣箱にデザインなんている?」
授業で作っていた巣箱は単なる四角の箱で、一つの面に丸い穴があるだけのシンプルなものだったから、巣箱というとそのデザインだと思っていた。
「何にでもデザインは必要。俺、デザインとか好きなんだよね」
涼はタブレット用のペンを取り出し、イラスト用アプリを起動させた。
「イラスト作成?涼はそういうこと好きなの?」
手慣れた様子で、あっという間に立体的な箱を描き出していく。
「まずはここで構想を練ってから、3Dで仕上げてみようよ。ね、どこが開いたほうがいい?
上が空いたほうが掃除がしやすいかな?」
「いや、考えたことないけど、掃除とか必要?鳥が自分でやるんじゃないの。出入り口がひとつあれば十分でしょ。」
「それじゃ凝れるところがないじゃん」
「凝らなくていいんだって」
「…うーん」
考える時の癖なのか、頬を少し膨らませながら涼がタブレットをにらんでいる。真剣に無心なそんな横顔は初めて見た。
ペン先が止まり、涼が視線だけ千尋に向けた。
「断熱材って、やっぱりいると思う?」
思いついたように投げかけられた問いに、千尋は「ええっ?」と声を裏返らせ、慌ててPCを立ち上げる。
「普通どうなんだ? 冬は平気でも夏は暑すぎるとか?ちょっと調べる…」
キーボードを打つ指が自然と跳ねる。
思いがけず涼が真剣に乗ってくれたことが、楽しくて仕方なかった。
本気で一緒に考えてくれるなんて、誰かと何かを作るのは初めてだ。
その事実だけで、心の奥がわかりやすく跳ねていく。
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