あの夏の嘘つき

suezu

文字の大きさ
45 / 48
第12章 真実

真実

しおりを挟む
 すぐさま店を出て地下鉄の駅に向かう。
心の中に残る一番の違和感の正体を確認したくて、あの花火を見た高層ビルに向かった。涼と男の人の後ろ姿を見かけたあのビルだ。

 地下鉄の駅からエスカレーターを上がりながら、ビルの冷たい外壁を見上げると、どこか無機質で、記憶の中よりも大きく感じた。
エントランス横の案内板をチェックする。企業名がずらりと並んでいる。半分以上は英語だ。法律事務所、IT企業、外資系の広告代理店。
ひとつずつ目を追っていく。
そして、想像どおり、英語表記でINTERNATIONAL HOSPITAL、病院がそのビルにあることを見つけた。
きっと涼はここに通っていたんだ。
すぐにスマホで検索をすると、「日本で唯一、アメリカ最高峰の大学病院との提携」の説明文が出てきた。
やっぱり、そうだ。
 違和感があったピースがつながって、溶けていく。

あの日の花火の場所を教えてくれたのは、涼の元恋人なんかじゃない。
たぶん、病院のドクターとかコーディネーターとか、病院の関係者だったのだろう。日本にいるとき、涼はアメリカの病院と連携しているこの病院に通っていたのだろう。
アメリカから母親が来てるって言ってたのも、もしかしたら、病気のことや治療のことの話だったのかもしれない。

バカみたいだ。
なんであの時、一瞬でも元恋人同士だって疑ったんだろう。
そして、なんで、あの夏、あんなに一緒にいたのに、涼の病気に気がつかなかったんだろうか?
 涼が隠すのがうまかったから?
いや、あいつの明るい髪色に、街でひときわ目を引く洗練された身なり、軽い口調に勝手に
恋愛経験が多い軽いヤツって思い込んでた。健康で悩みなんかなくて、すべてに恵まれて、苦労なんか知らないヤツだと勝手に思ってた。
そして、きっと涼もそう見せてた。
思い返せば、恋愛経験だって、そう多いようには見えなかった。キスのときも、ベッドの中でも、涼の指先はかすかに震えていた。
軽い言葉遣いや、手慣れたように見える仕草だって、実は全部フリだったのかもしれない。

ああそうか。チャラいふり。
……そうか。
あいつ、俺よりずっと演技がうまかったんだ。
すっかり騙されてたわ。やっぱ、アイツ、さすがだわ。
なんかさ、涼らしい。
ふふふっと思わず、声に出して笑ってしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

BL短編

水無月
BL
兄弟や幼馴染物に偏りがちです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...