一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

文字の大きさ
32 / 221

☆自宅訪問

しおりを挟む


 ――綾部さんは僕の部屋を見たいという。

 分からん。何が狙いだ?
 
 はっきりと何か希望を提示するわけでもなく、ただ僕を困らせるだけ。
 きっぱり断るにしても、まずは要件を訊いてからだそう。
 愛里の品位が名誉がかかっているのだから、そういえば愛里はトキメキTVの最終選考まで残っているわけで、これがもし主演レギュラーに選ばれてみろ、一躍有名人だ。
 こんな所で汚点をかぶるわけにはゆかない。

 仕方なく僕は綾部さんを連れて自宅へ向かった。
 綾部さんがお淑やかに僕の真横を歩いている。
 実の所、僕は戸惑っていた。

 初めて経験する事ばかりじゃないか……。
 学校帰りに女子と一緒に喫茶店に入ったのもそうだったが、現在女子と二人で歩道を歩くというのは、どうだろうか……。
 あれは遡ること小学校の体育の授業だろう、女子とペアになって二人三脚をした以外僕の記憶には無い。
 ペアになった女子は体育を休みがちになってしまったが――。

 綾部さんは全然気にせず歩いている。
 超美人の綾部さんの隣には恐怖顔の僕という超不釣り合いな二人なので、通行人に注目されまくっているのにだ。
 こんな空気が読めないところは岩田と良く似ている。
 岩田がもし女性だったなら、綾部さんみたいな女子になるのだろうか。

 僕は以前から綾部さんに疑問があった。
 良い機会だから訊ねてみようと思う。
 それは、

「あの……それにしても、綾部さんは僕の顔が怖くないのですか?」

 という事だった。

「怖いわ」

 やっぱり……。
 正直なご意見ありがとう。

「怖いわりには、表情にあらわれてないけど……我慢しているのですか?」

 綾部さんは僕を見ても、ごく僅かに顔を曇らせることはあるが、直ぐに微笑むのだ。
 怖い顔に慣れているとかだったりして。

「そうね……」

 と言って綾部さんは間をおいた。
 改めて、

「貴方だって、私の顔が素敵だと思わないの?」

 自分で素敵って言ったよこの人。

「ああ、綺麗だと思う」

「綺麗って言うわりには、喜びが足りないように思うのだけど」

 えっ。そう返してくるか!
 まあ、確かに。
 学校でも綾部さんと会話してる男子は、テンションが上げ上げ状態になっている。
 それは認めるが、『喜びが足りない』ってなんだ? 
 僕に小躍りして喜べと言いたいのか?

「それと同じよ」

 何がだ? 

「分かったよ」

「あら、頭良いのね」

「分かったのは、綾部さんが人をいじって遊んだりする性悪美人だってことだよ」 

 満足そうに綾部さんは頷いた。

「それで怒らない山柿くんは、やっぱり頭が良いのね」
 
 僕の精一杯の皮肉もするりと微笑んで受け流すこの人は、厄介この上ない。
 僕と真逆だ。相当恋愛を経験していやがる。
 




 到着した僕の自宅。
「ただいま~」と玄関を開けたら「は~い! おかえり~」と母さんの呑気な声だけが戻ってきた。
 
「おじゃまします~」

 だが綾部さんの声が廊下に響くと、スリッパを鳴らして母さんがぶっ飛んできた。

「えええええっっ!! どうしちゃったのさとしっ! あんたが女の子を連れてくるなんて」

 母さんは手で口を押さえてあわあわしている。少し目に涙を浮かべたりして「ついに、ついになんだね……」と感動しているみたいで、僕の肩をぽんぽん叩いているのだ。
 
 止めてくれ。恥ずかしい。
 母さんにとって悲願だったのか、女の子を連れて来るのが。
 達成になるのか、これが。

「はじめまして、綾部トモコと言います。
 今日は聖くんにお昼おごってもらって、誘われるまま来ちゃいました」

 おいおいおい、元々好感度抜群の上にこの口先だけのセリフ。
 君は大人になっても現代社会をうまく生きて行ける人だよ、ホント流石。

「あら~っ! そうなのぉ? この子ったら家では何にも言わないんだから」

 あ~もう。母さんニンマリ過ぎ。
 そのくだりもウザ過ぎ。

「そーなんですか。うふふふ」

「そーなのよ。うふふふ」

「……、……」

 つまんねー会話だ。

「なんだか、良い匂いですね」

 綾部さんが母さんの趣味を嗅ぎつけたようだ。

「さっき焼き始めたのよクッキー。後で味見してみてくれる?」

「わあ~っ! 楽しみにしてます」

 素直で明るい女の子って感じをビンビンにかもし出している綾部さんは、廊下に上がった僕に続く。
 母さんが用意したスリッパに、軽く笑みで会釈してから足を入れ、振り返って脱いだローファーをそろえ、その隣に僕の靴もきちんとそろえた。
 しっかりチェックしていた母さんが満足そうにうなずき、肘で僕を小突く。
 
「いい子じゃないの」

「そうだね」

 この現象をみるだけなら、僕だってそう思うって。
 
 うーん。
 これから二階の僕の部屋に綾部さんが入るのか……。
 クローゼットの鍵はしっかりと閉めたはずだし、見られて困るようなものは一切ないとは思うが……。

 うーん。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

処理中です...