一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

文字の大きさ
192 / 221

☆セミ世界のコンビニ?

しおりを挟む

 コンビニがあるだって?
 ジャングルの隣に、配送のトラックが走る路面もないこの世界に、近代的なコンビニエンスストアが存在しているっていうのか?
 電気も無さそうだから、どうやって商品を冷やしたり温めたりするのだろうか。
 首をひねりながら礼拝堂を出て、ずっとこの先にコンビニがあるからと言う説明通り、凸凹のあぜ道を進んでいた。

 すると、前方の木の陰から黒い麦わら帽子みたいなのが出てきた。
 黒光りしているメタリックボディ。地面を滑るようにあぜ道に移動し、ちょうど僕の前で停止した。
 空中に浮かぶ小ウインドウには《はぐれブラックが現れた》と表示されている。
 
 小さいが、これもモンスターなのか。 
 ジャングルじゃないから、凄い手強いモンスターが出てこないのだろう。
 これなら危険じゃなさそう。怖くない。
 
 すると、はぐれブラックがヒュンヒュンと風切音を立ててジグザグ移動を始めた。
 結構早い。身体がゼリーみたいにぶるんぶるん揺れている。
 
 攻撃してくるんだろうな。関わりたくないんだけど。
 ドラクエだったら、《逃げる》コマンドを押すぞ。

 はぐれブラックが僕の右足にぶつかってきた。いや、粘土のように足首を取り囲んだのだ。
 
 ジュワアアアアァァ。
 痛い痛いっ!!
 ブラックが巻き付いている右足首が、焼けるように痛い。
 ローファーが溶けているじゃないか。
 急いでおちんちんの剣ではぐれブラックの身体の一部をそぎ落す。
 なんと血液が出ない。デカイようかんを切ったみたいだ。
 フィンと高速で離れたはぐれブラックが、分断された自分の身体の一部を統合して元の形に戻りやがった。 
 こいつ敵を溶解して体内に取り込むタイプだ。

「ヒューヒュー♪」

 モンスターのくせに口笛まで吹いてやがる。2つの青い目を弧にした。笑っているのか? 

「僕には勝てないよ~、坂本」

 なんと、喋りやがった!  
 しかも僕の芸名まで知ってるって何で? 
 まさか……、こいつ……。

「ブラック羽沢かっ!!」  

「フッフッフッ、あいりんの右腕、僕の名は《はぐれブラック》」

 意味分からん。
 相変わらずチャラい。

「それ趣味か」

 何処に口があるのか、とにかく、ブラックはそう言いいながら身体の一部を手に変形し、僕を指さした。

「はあ?」

「服だよ服ーっ。フィギュア集めだけじゃなく、ついに自分がフィギュアになったのか。ケケケケケ」

「ゴスロリ衣装しか無かったんだ!」

「怖いだけじゃなく、キモくなったね」

 右足が火傷を負ったようにビリビリと痛い。

「剣を持ってどこにいくつもりなの、お嬢さん。ケケケケ」

 だんだん腹が立ってきた。
 僕はブラックに向かって剣を振った。

 スカッ!

 はぐれブラックは、ドラクエで例えるとはぐれメタルみたいに素早かった。

「あれ? もしかして僕に攻撃したの。また旗振りの練習を始めたのかと思ったー」
 
 口の悪さは前世界のブラック羽沢と同じだった。
 僕は横に縦に何度も剣を振ったが、空を切るばかり。たまに当っても直ぐに元の形になった。
 はぐれブラックの急所はどこだ!  

「あっ、あいりんだ!!」

「えっ! どこどこどこ??」

 ヤツが探している途中に、剣で目を突き刺してみた。
 ぴろろ~んと効果音が鳴り、空中のウインドウに表示される。


《はぐれブラックを倒した》
《9ポイントの経験値を獲得》
《7ゴールドを手に入れた》

 
 まさしくゲームだ。ドラクエだ。


《なんと、はぐれブラックが起き上がり、仲間になりたそうに、こっちを見ている》

 
 YES 
 NO 


 なるほどなあ。
 ブラックが青い瞳をうるうるさせていた。
 仕方がない……。


 YES ← ピコッ


《やっかいもの はぐれブラックが仲間になった!》


 厄介者って表示されているし……。

「僕がいれば百人力だぞ。有りがたく思えよ」

 NOを選択すれば良かった。



 はぐれブラックがついてくる。
 少し歩くと、本当に《7》と描かれた看板があって、その下、僕の記憶通りのコンビニ店があった。
 舗装された駐車場まで設備されていた。
 まるでコンビニの空間だけこの世界に時空移動したような、それくらい異質な状態だ。 
 入店すると聞き慣れたチャイムが鳴った。これも同じだ。
 制服も全く同じ――――、しかし、しかしだ。
 着ている従業員が、さきどワームのエサになっていたトロル、その小さいバージョン、子供だろうか、とにかく人間サイズのトロルがレジ前でテキパキ商品出しをしていた。
 僕を見るなり、いらっしゃいませ~、と清々しい声かけをしてきた。
 他にも店内にトロルが2名、どれも普通に従業員として仕事をこなしている。
 変な感じだ。
 まあ、はぐれブラックをお供にしている僕も相当変なんだけどね。
 
 スナック菓子、弁当、パン、どうみてもセブンと同じ商品が陳列されている店内を歩いていると、窓側の雑誌コーナーで思わず息を飲んだ。

 柏樹セナの魅力満載!
 アダルティな彼女に愛の折檻プレイ。
 安全なおしおきのすすめ。
 見られて感じる、初めての野外プレイ、その2。 
 おまけ:坂本氷魔の巨根診断。

 ――月刊SM恋コイ・10月号――。


 どうしてこの世界にSM本がっ!
 誰が読む。誰に読ませるつもりだ。
 それにこの数、この種類。 

「これも、これも、これもだ。おいおい全部SM系の本ばかりじゃないか!」

 しかも本を紐で縛ってない。 

「すすすすす、すごいすごいすごい……」

 気がつけば青い瞳を充血させたブラックが、両目をかたつむりのように長く伸ばしてSM本にかじりついていた。
 甘食ボディをウニのようにトゲトゲにしたり、サイコロのようにしている。

「モンスターがエロ本読んで興奮するかー? 掲載してるの人間だぞ」

「いーじゃん」

「おい止めとけって。十八禁だし」

 おちんちん剣をブラックの身体にあてた。
 ブラックは不満そうに「けーち」と言って、本を閉じた。

 そして、次の飲料コーナーでも、僕は立ち止まって、唖然しつつも陳列ケースを見渡した。 
 カルピスばかりだった。別の飲み物を探してみたが、やっぱり無かった。
 カルピスだけ甘口、特甘、スーパー甘、と3種類もある。
 
「ここは大魔王さま御用達の店です」

 側にいたトロル店員が言った。

 また大魔王か……。
 カルピスが好きで、趣味がSMの大魔王。 
 店員から、詳しく事情を説明してもらった。

 たくさんあった小世界は悪の大魔王『アイリ』によって滅ぼされ、残すところ後一つ、青の世界だけだと言う。
 ジャングルで見たムカデとトンボを掛けあわせたような巨大昆虫は大魔王の偵察員で、上空から以前の世界の残党刈りをしているのだそうだ。
 巨大肉食ミミズも同じ大魔王の配下たちだそうだ。
 今現在大魔王の本部隊は青の世界を攻撃中で、滅ぼされるのは時間の問題。
 いずれ完全征服され、この世界は気持ちの悪い生き物で埋め尽くされるそうだ。

 ――大魔王『アイリ』

 このカルピスとSM本だらけといい、空のセミといい……うーむ。
 僕の知っているトイレで知り合った愛里と、この世界の大魔王『アイリ』
 偶然にしてはあまりにも一致している。同一人物と考えていいだろう。 
 
「だから、ゴスロリ勇者さま。どうか大魔王を倒してください」
 
 とトロル店員は言った。
 ゴスロリ余計なんだけど。

「倒す……僕が?」

「はい」

 愛里を倒すより、仲良くなりたいんだけど。

「僕に出来ると思う?」

「モンスターを倒して経験値を獲得して、レベルを上げれば可能です」

「因みに大魔王『アイリ』のレベルっていくらくらい?」 

「さー。詳しくは知りませんが、側近のモンスターでレベル400くらいだから、それ以上かと」

「マジで!!」

「はい」

 愛里強ぇ~。
 ドラクエ好きだったからな。
 あれ、待てよ。さっきブラックが言ってたのと食い違うぞ。
 再びSM本に夢中のブラックの能力を表示する。

 
 はぐれブラック(レベル:6)
 その他ショボイので省略。


「おい」

「なんだよ、良いところなんだから、坂本」

「だから、呼び捨て止めろって」

「じゃ、ロリコン勇者」

「もっと悪いわっ!」

「ふん」

「お前たしか、『あいりんの右腕、僕の名は《はぐれブラック》』とか言ってたよな」

 ブラックの突き出た青い目がピクリと動き、ニコちゃんマークみたいになった。

「あいりんって大魔王『アイリ』のことなのか? 側近はレベル400だそうだが……お前はレベル6……たった6だよな?」

 そもそもレベル1の僕に倒される事自体がおかしい。

「嘘ついているだろ」

「おお、勇者やまがき、仲間を問い詰めるとはなにごとか」

「いまさらNPCの振りすんなって、ブラック」
 
 はぐれブラックをコンビニの外で待たせることにした。
 店内だとSM本読みまくりだもんな。
 僕はオーク店員からもっと情報を得る為、いろいろ訊ねた。

「キミって、他の村人と違って普通だね」

「私は、赤の世界……赤のアイリ様の世界の生き残りですから」

 やっぱりNPCじゃないんだ。
 
「って、あれ? 《赤のアイリ様》って誰なんだ?」

「はい。5歳の愛里さまです。亡くなったパパの真似で格闘技が好きでした」

 格闘技が好き……。
 
「まさか、マークⅡ……。いや、なんでもない……」

 そう言えば、交代人格で東北弁の愛里が出て来た時だった。
『どうして代わりにマークⅡを出さなかった』ってマークⅢに訊ねたら『もういないから』って答えたよな、たしか……。
『ヤツが片っ端から統合して』とも言っていた。
 
 ヤツ……、つまり愛里が……、この世界の愛里が、赤の愛里・マークⅡの人格を倒して統合した――。
 だから、ここは、この世界は、愛里の中。心の中なのか?
 だから愛里の思っている事が、おちんちんが剣になったりしたのだろうか。

「その大魔王が攻撃している青の世界とは、何処にあるんだ?」

「おお! 倒しに向かってくれますか!」

「いや、まあ、倒す倒さないって言うより、大魔王に会ってみたい」

「なるほど。まずは敵を調べるのが先という事ですね。
 でしたら、青の世界ではなく、茶色の世界、このままずっと3日ほど東に進むと、大魔王の城があります。
 そこで指揮をしているという話しです。
 大魔王『アイリ』は直接手を下しません。5万の下僕たちに攻撃させるのです」

 僕がさっきブラックを仲間にした要領で、愛里がモンスターを5万匹も下僕にしたってわけ?
 凄すぎないか。


 トロル店員に詳しく訊くことが出来た。
 この先、コンビニは大魔王城の中にあるだけと言う。
 僕は保存がきくパンやスナック類をたくさん買うことにした。

「4453ゴールドです」

「ゴールド……」

 やっぱり円じゃないんだ。
 RPG同様、モンスターを倒して貰えるやつだ。
 さっきのブラックの戦闘で7ゴールドほど手に入れただけ。
 僕は商品を返却して、7ゴールドのコップを一つだけ買って店を出た。

 変わらないこげ茶色の空には、ミーンミーン、ツクツクオーシ、シャワシャワシャワ、とセミ鳴き飛び交っている。
 このあぜ道をずっと東に進むと、愛里と会える。
 マークⅢが出てきてから、ずっと会っていない、僕が想っている愛里。
 存在自体消えて無くなってしまったのか、そんなことすら考えてしまっていた。
 明るい笑顔。怪獣のいびき。セミやムカデが大好き。僕の愛里が、愛里のままでいてくれているだろうか。
 僕を見た途端、側近と共に総攻撃くるかもしれない。なにせ大魔王だから……。
 いや、それ以前に、城まで辿り着けるだろうか。
 途中でジャングルで出会った巨大トンボムカデや巨大ワームが出てくるかもしれない。
 それに愛里の側近はレベル400なのだ。
 
 レベルを上げなければ。
 弱そうなモンスターを探して、経験値とゴールドを稼ごうか。
 僕の後ろをヒョロヒョロ付いてくるレベル6のブラックが、ちょっぴり頼もしく思えた。
 こんなブラックでも、いれば、レベル1の僕だけで闘いより、気持ちもパワーもずいぶん違うはずだ。
 
 
 あぜ道を4時間ほど歩いた。
 喉が渇いたので、買ったコップで小川の水をすくい、その中におちんちん剣から出るカルピスを入れて飲んだ。
 旨い。
  
「あ……」

 側でちょろちょろしていたはぐれブラックが、突然もの凄いスピードで滑るように去ってしまった。
 どうしたのか、理由は直ぐに分かった。
 空中に浮かぶ表示ウインドウを遥かに超えて、一軒家ほどもあるヘビのぬいぐるみが、僕を見下ろしていたからだった。


《大魔王側近・マムちゃん(レベル420)が現れた》


 

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

処理中です...