神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー

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一章・定住

2度ある事は3度ある

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 異世界初の街は、想像以上にクソだった。全く楽しめない。

「さっさと働け屑ども!!」

「誰が生かしてやってると思っているのだ!!」

 こんな声が、耳を凝らさなくても聞こえる。
 ダメだ、良い人が大半で、クソみたいなやつは少数だろうと安易な考えを持っていた過去の自分を殴りたい。それぐらい、クソだ。

 街の中心にある教会が一番煌びやかで、贅を蓄えているのがありありと見える。逆に、中心部から離れれば離れるほど、建物は汚れ、何年もボロ屋で生活していることが分かるほどの建物の損傷具合である。
 
 首に大きな首輪をつけた人々が、傷だらけになりながら働かせられている。考えなくても分かる、奴隷だろう。そして、彼らに偉そうに指示をしているのが真っ白な服を着た人間だ。
 あの服は聖女召喚の際に見たことがある。あの時は、あの真っ白の服を来ている者を神官と考えたが、正しかったようだ。先程から、中央にある教会から神官服着たもの達が出入りしている。
 そして、神官服を着たもの達はそのどれもが肉付きが良く、健康そうである。対して、神官服を着ていないもので健康そうなものを探すのは難しい。健康そうではあるものの、すり減った服を着ていたりする。
 
 同情はするが、この世界について全くの素人である僕は何もできない。もしかしたら、僕が見たクソみたいな光景が是とされる世界なのかもしれない。いや、そんな世界はいやだが、あくまでも僕はよそ者である。
 それに、僕は自分の利にならない事はしたくない。面倒だし。
 それに、ここで僕が何をしてもこの世を変えることなんてできない。目の前の光景を変えたいと思うのは素晴らしい心意気だとは思うが、下手な手助けはより相手を不幸にする可能性すらある。
 
 ってことで、帰ろう。安全でぬくぬくな森に帰ろう。森に魔物に襲われるのが安全と言えるかは分からないが。
 せめて、服と調理道具とか、衣食住で使えるものを買えたらよかったのだが、、、今更ながら、金を持っていないことに気がついた。
 うん、帰ろう。本当は友達探しをしたかったが、諦めよう。
 ちょっと前まで僕に備わっていたご都合主義くんは、行方不明なのかな?こうゆう時こそ、ご都合主義くんの出番なのでは?
 まあ、縁がなかったのならしょうがない。

 そうとなれば、こんな鬱々とした街からはさっさと離れるべきだね。


***


 帰り道、僕は考えていた。もしかしたら、僕の第一印象が良ければ、街に入れてもらえたのではないかと。
 第一印象とは、僕の中では最初にかけた言葉と服装とかだと思っている。顔もそうだと思うが、顔は生まれた時から変えられないし、化粧とか僕はできないので見ないこととする。
 と言うことで、吟味すべきは最初にかけた言葉と服装だね。
 僕が門番にかけた言葉は、えーっと、「お前のような怪しいものをこの街に入れるわけには行かない!」だ。
 え、いや、これは門番に言われた言葉だ。僕は、、、、何も言ってないや。
 もしかして、もしかしなくても、僕は何の弁明もできずに拒否られたってこと?またかよ!?いつもそうじゃん。
 
 気を取り直して、服装に着眼点を置く。僕の今の服装は、全身魔物の毛皮。で、これはこの世界では一般的ではないようだ。
 あっ、そうだ。こんなこともあろうかと、蜘蛛の魔物から取った糸を溜め込んでおいたんだ。  

『名前:アラクネアクイーンの糸
 備考:とても貴重な糸。この糸を使用したい服は、ドラゴンのブレスさえも防ぐと言われている。』

 僕が使っている蜘蛛の糸は、貴重らしい。でも、僕が見た魔物の中で糸を出してくれるのが、このアラクネアクイーン?って言うのしかいなかったし、それにこの魔物結構いるし、多分言うほど貴重じゃないと思う。

 話は戻って、これの何が面倒って、糸を布にするのなんだよ。採取は意外と簡単。蜘蛛の魔の魔物を見つけて、僕の魔力をぶつけるとビビって糸を出してくれる。全くもって平和的ではないが、効率的だから良しとする。
 
 今なら魔法の制御が格段に上手くなったし、スラスラと糸から布を作れると思う。と思っていたら、既に布ができていた。『作れると思う』辺りで、既に魔法が発動していたみたい。
 今までは、探知魔法と同様に自分の魔力を糸にして、それを蜘蛛の糸に纏わせ、ゆっくりと、かつ正確に織っていたので、なんか、こんな簡単にできて、肩透かしがすぎる。
 ま、まあ、いいや。楽になったに越した事はない。うん、ないったらない。


 ただ、問題がある。さっき〝布〃ってイメージをしたから、今僕の手元にあるのは布なんだよね。そう、長方形の、辺の長い方を首元にもってきて羽織るようにすると、ちょうど僕をすっぽり覆えるような大きさの布。
 、、、、、。
 うん、これで行こう!!本当は服の形にしたかったけど、もうここまできたら面倒だ。
 取り敢えずは、獣感がなくなったから良しとする。
 でも、もう直ぐ森に着くし、ここまで来ればこの布を人間にお見せする機会はまだまだかな。
 とか、思っていたら、僕の探知魔法が人間の気配を捉えた。


「あれ?人間だ。こんな森の付近にいるなんて珍しい。」

 移動するスピードを上げて、森に急いで近づくと、森の端に血まみれになりながら、倒れている人間を見つけた。

「おーい、お兄さん大丈夫ですか?うーん、ダメ?ありゃりゃ、返事なし。もしかして死んでる?」

 いや、心臓は動いてるし、返事はないが、目はうっすらと開いており、生にしがみついている。
 しかし、傷の状態は酷いね。腹の傷はウルフの魔物にやられたのかな?横っ腹を抉り取られるように噛みつかれた後が見える。こんな状態で生きている方がびっくりだね。
 あと、片目が潰れている。これは、古傷かな?既に傷が塞がっており、左目の瞼にザックリとした怪我の跡が見える。

 てか、僕こんなに重症の人間を見ても、慌てないんだね。自分自身のことだけど、僕が一番驚いている。でも、そうか。散々自分の身体で血飛沫あげてきたし、こんなの序の口か。
 
 見つけてしまった手前、見捨てるのもなんか違うし、助けるか。幸い、回復魔法の腕前は自信がある。自分の身体で実験しまくったおかげだね!!

「今治しますよー。死なないで「せ、」ん?」

 患者相手には丁寧に話しかけるってテレビで見た。実験する日が来るとは。ついでに、僕の優しさに溺れてくれれば、友達になってくれるかな?
 いや、そんなこと考えている時点で打算も打算だな。
 それに、今なんかボソッと声が聞こえた。
 僕以外の声といえば、今僕が治そうとしている男の声だろう。

「何ですか?」

「せ、、、せい、、れ、いさま。」

 およ?もしや、僕のことを見て精霊と言っているのか?
 だとしたら、嬉しいね!!そんな神秘的な存在として見てもらえるとは。ただ、惜しい。僕は精霊王だから。
 しかし、分かるものが見れば僕は精霊に見えるんだね。いやーぁ、褒められたわけではないけど、嬉しい。

「僕は今気分がいいから、その古傷もサービスで治してあげますよ。」

「っう、、あ、」

「無理に喋らなくても大丈夫ですよ。今は眠って下さい。」

 そう言って、僕は瞼に手を当て、強制的に眠らせる。
 彼を眠らせてから、本格的な治療に入る。傷は深くて、油断すれば死にそうだが、彼自身が死に争っているから、僕は治すだけでいい。
 
「うん、抵抗されるねぇ。」 

 他人を治すのは、自分を治すのと勝手が違う。僅かだが、僕の魔力に抵抗する。これは、魔法を押し付けるのではなく、優しく撫でるようにかける方が良さそうだ。
 まるで聖母のように。優しく、慈しみを持って抱擁するように。
 
 日々魔物を狩って暮らしている僕には似つかわしくない表現だが、その甲斐あってか彼の治療は成功したようだ。

 そうだ、ちょうどいいし、この人を僕の友達候補1にしよう。
 〝人間は信用ならないと〃は、やはり心の中に居続けるけど、僕の勢いは誰にも止められない!!
 彼も、またもやクソな人間なら、もう人間との交流を諦めよう。その場合は、頑張って魔物と仲間になろう。
 ファンタジー世界だ、きっといるだろう、人語を解するドラゴンとか。
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