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プロローグ
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「落ちた……」
そう、大学の単位を落としたのである。
現在大学三年生の俺、尾形幹斗は大学の就職活動ポスターなどが張られている掲示板の前で軽くめまいを起こしていた。目の前の掲示板には〈以下の者は単位認定しないものとする〉と書かれた張り紙に俺の名前だけがデカデカと書かれ誰が単位を落としたのか構内を歩く人には一目瞭然だ。
「まじか、やべぇ、ワンチャンねぇわ」
楽にとれる単位、略して楽単らくたんそう思っていたのに単位を落としてしまった、略して落単、俺も落胆。
(はは、笑えねぇ)
乾いた笑いを頭の中で浮かべ自嘲する。
たいして頭の良い大学に通っているわけでもないのに単位を落としてしまった。自分の頭のデキが良いわけでもないので当然である。
「あ~あ、やっちまった……」
意気消沈した俺は足元の感覚が無い足で駐車場へ向かう。大学の駐車場は今いる掲示板から徒歩で5分もあれば着くが大学生は使用できず、主に教員や来賓用の駐車場になっている。
ミキトは大学の裏門を抜け、近くの小さな時間制でお金の掛かる駐車場に入る。その小さな駐車場でひと際目を引く車が一台、そこに駐車されていた。
y32グロリア、これがミキトの愛車だ。ボディは角が多く車高は低くい、車体カラーはホワイト、燃費は悪く大学生が乗っている車とは思えない。内装も今どきの様なシンプルな物ではなく少しモダンな感じの茶色が内装を占めている。
「いつ見ても最高だ」
独りでに車につぶやく。
「さて、ドライブにでも行きますか」
単位を落とした事で落ち込んだ気分を紛らわせるために車でドライブをする。車のドライバーならよくやるストレスの発散方法だ。
気分転換にどこにドライブに行く?そんなの決まっている異世界さ!
――ブンッ……ヴヴヴ……
愛車にキーを差し込みエンジンをかけると眠りから覚めるようにスピードメーターが点灯する。俺はエンジンをかける時に必ずこのスピードメーターの点灯に見入ってしまう。
「さあ、異世界へドライブだ。頼むぜ相棒」
ドゥゥンッ
カッコつけた俺の問いにエンジンの駆動音が俺に応えるように唸る。
唸るエンジンの振動を感じながら右足でアクセルを踏み車を狭い駐車場から発進させ道に出る。
「光が強いな……」
フロントガラスに入る光に目を細め少し苛立つ。
駐車場から道路に出て車を走らせるが見える景色はアスファルトの地面、信号機、電線、スーパーマーケット、オシャレな恰好をして歩道を歩く大学生や自転車に乗ったおじいさんぐらいで何処にも異世界らしき物や異世界に通じるトンネルは見えない。
「異世界なんてのは空想や妄想の世界だから行けるわけがないよな」
異世界に行くのであれば大体のパターンでは何かの事故で死なないと転生は出来ない、死んでまで異世界に行きたいとは思わない。
ミキトは町の中で一番大きなパチンコ屋へと車を走らせる。
友達の少ない暇な大学生の趣味は刺激の得られるパチンコだけだ。
「今日はどんな台を打とうかな~」
前の車との車間距離を取りながら打つ台を考えるミキト、頭の中はパチンコで一杯になっている。
「パチンコには夢が詰まってるぜ」
ミキトの頭の中にはパチンコ玉が詰まっている。
「見えてきましたっ宝島!」
車の中でどの台を打とうかと考えているうちに十分ほどでパチンコ屋へ着いた。
「――」
――ピュイン!ピュイン!!
「――♪」
パチンコ屋はガラスの扉で音が遮断しきれておらず中の爆音が外に漏れ出ている。周りの飲食店などの店舗に比べると目の前にあるパチンコ屋はさながら異世界と言っても過言ではなかった。
「今日は勝てる気がする」
テンプレのフラグを建ててガラスの自動扉を潜り店内に入る。パチンコの機体から発せられる爆音は鼓膜を刺激し脳にまで刺激が達する。
ミキトは逸る思いを胸に騒がしい異空間へと消えていった――
――「勝った……10万円儲かった…! 今夜はこの金で遊びまくるぜ!」
始めに座った台が直ぐに当たりを引き十連ほどの爆連を起こした。更にその台でまた当たりを引き二十連の爆連が続き見る見るうちにパチンコ玉を貯めるドル箱は積み上げられた。これを換金して十万が今ミキトの手元にある。
「10万円勝ちの記念としてとっておこう~」
少数のパチンコ玉を記念として持って帰るためにポケットに入れる。ポケットは端数のパチンコ玉を入れられ少し重く感じられる。片手には印なしのビニール袋に入ったお菓子が入っていてチョコレート、飴玉、煎餅などの様々なお菓子が大量に詰め込まれている。
店外に出ると空の日はまだ落ちていなかった。日没まではまだ三時間はある。
「峠を走ろう」
パチンコで勝った後の心の余裕が原動力になり車を走らせたい衝動に駆られる。パチンコで興奮した状態のミキトの頭はとても正常な判断はできなかった。
ミキトは車に乗り込み助手席に印なしのビニール袋に入ったお菓子を雑に置きすぐさま愛車を阿茂峠へ走らせた――
――阿茂峠、毎年自殺者や走り屋の事故などで有名なスポットであるが俺の町から近い場所にある。
この峠は自然が多く都会に近いこの町では見ることのできない野生の鹿や猪が目撃されている。
「ここが阿茂峠か、初めて来たけど良い所だな」
電灯の少ない峠の暗闇からいつも住む町の景色を一瞥し、峠を走る。
徐々に車のスピードを上げていく
ドリフトの様な技は出来ないが急カーブの時に自分の身体に掛かる遠心力が最高に五感を刺激する。
(やばい、脈拍が速くなっているな)
こめかみで血が脳に流れている感覚がハッキリ分かる。暗いカーブの多い道といつもよりもスピードを上げて運転しているためか自然と身体に力が入る。ミラーから俺の顔は見えないが多分瞬きをしていない。
「スゥゥッ」
呼吸を忘れているのを思い出し息を吸うが鼻息は荒い
「これはパチンコで得られる興奮なんて比じゃねぇな」
パチンコでは金をかけた勝負だがこれは自分の命が掛かった勝負だ比較するまでもなく今の状況の方が興奮する。
俺の心臓は興奮によって強く拍動して痛かった。
(動物か?)
車で走り出して十五分ほどの峠の中腹部で突然人影らしきものが道端に見えた。
正確には見えた気がした。
(動物かな?)
運転に集中していて影のことは細かく考えなかったが”阿茂峠には幽霊がでる。”という噂を思い出し背筋に冷汗が吹き出す、背中とシートの間に挟まれているワイシャツは汗で濡れてシートに張り付いていた。
「いや、幽霊なんている訳が無い」
自分に言い聞かせ影は見間違いであったと思い込む。しかしそれは見間違いでも動物の影でもなかった。
「――!」
車の運転席から道の端で佇んでいる人影を確かに目の端で捉える。明らかに人型をしている身長はさほど大きくはなかった。スーツのような物を身にまとっていた様にも見えた。
「あれ?何だかスローモーションに見える?」
気付くと視界はスローモーションで映していて過ぎ行く景色の一つ一つをゆっくり鑑賞出来るほどだった。
ミキトはその時ガードレールに突っ込んでいることに気づいていなかった……
ドッ!!
前方に頭を引っ張られる感覚に襲われスローモーションの視界のまま景色が回転していく。ゆっくりと回転する景色にはキラキラと光る綺麗な車のドアガラスによるイルミネーションが飛んでいた。
(やばい……事故起こしちゃったか……俺の愛車……グロリアは大丈夫かな……)
スローモーションの世界でぼんやりと愛車の心配をする。
眠るようにミキトの意識は落ちていった……
そう、大学の単位を落としたのである。
現在大学三年生の俺、尾形幹斗は大学の就職活動ポスターなどが張られている掲示板の前で軽くめまいを起こしていた。目の前の掲示板には〈以下の者は単位認定しないものとする〉と書かれた張り紙に俺の名前だけがデカデカと書かれ誰が単位を落としたのか構内を歩く人には一目瞭然だ。
「まじか、やべぇ、ワンチャンねぇわ」
楽にとれる単位、略して楽単らくたんそう思っていたのに単位を落としてしまった、略して落単、俺も落胆。
(はは、笑えねぇ)
乾いた笑いを頭の中で浮かべ自嘲する。
たいして頭の良い大学に通っているわけでもないのに単位を落としてしまった。自分の頭のデキが良いわけでもないので当然である。
「あ~あ、やっちまった……」
意気消沈した俺は足元の感覚が無い足で駐車場へ向かう。大学の駐車場は今いる掲示板から徒歩で5分もあれば着くが大学生は使用できず、主に教員や来賓用の駐車場になっている。
ミキトは大学の裏門を抜け、近くの小さな時間制でお金の掛かる駐車場に入る。その小さな駐車場でひと際目を引く車が一台、そこに駐車されていた。
y32グロリア、これがミキトの愛車だ。ボディは角が多く車高は低くい、車体カラーはホワイト、燃費は悪く大学生が乗っている車とは思えない。内装も今どきの様なシンプルな物ではなく少しモダンな感じの茶色が内装を占めている。
「いつ見ても最高だ」
独りでに車につぶやく。
「さて、ドライブにでも行きますか」
単位を落とした事で落ち込んだ気分を紛らわせるために車でドライブをする。車のドライバーならよくやるストレスの発散方法だ。
気分転換にどこにドライブに行く?そんなの決まっている異世界さ!
――ブンッ……ヴヴヴ……
愛車にキーを差し込みエンジンをかけると眠りから覚めるようにスピードメーターが点灯する。俺はエンジンをかける時に必ずこのスピードメーターの点灯に見入ってしまう。
「さあ、異世界へドライブだ。頼むぜ相棒」
ドゥゥンッ
カッコつけた俺の問いにエンジンの駆動音が俺に応えるように唸る。
唸るエンジンの振動を感じながら右足でアクセルを踏み車を狭い駐車場から発進させ道に出る。
「光が強いな……」
フロントガラスに入る光に目を細め少し苛立つ。
駐車場から道路に出て車を走らせるが見える景色はアスファルトの地面、信号機、電線、スーパーマーケット、オシャレな恰好をして歩道を歩く大学生や自転車に乗ったおじいさんぐらいで何処にも異世界らしき物や異世界に通じるトンネルは見えない。
「異世界なんてのは空想や妄想の世界だから行けるわけがないよな」
異世界に行くのであれば大体のパターンでは何かの事故で死なないと転生は出来ない、死んでまで異世界に行きたいとは思わない。
ミキトは町の中で一番大きなパチンコ屋へと車を走らせる。
友達の少ない暇な大学生の趣味は刺激の得られるパチンコだけだ。
「今日はどんな台を打とうかな~」
前の車との車間距離を取りながら打つ台を考えるミキト、頭の中はパチンコで一杯になっている。
「パチンコには夢が詰まってるぜ」
ミキトの頭の中にはパチンコ玉が詰まっている。
「見えてきましたっ宝島!」
車の中でどの台を打とうかと考えているうちに十分ほどでパチンコ屋へ着いた。
「――」
――ピュイン!ピュイン!!
「――♪」
パチンコ屋はガラスの扉で音が遮断しきれておらず中の爆音が外に漏れ出ている。周りの飲食店などの店舗に比べると目の前にあるパチンコ屋はさながら異世界と言っても過言ではなかった。
「今日は勝てる気がする」
テンプレのフラグを建ててガラスの自動扉を潜り店内に入る。パチンコの機体から発せられる爆音は鼓膜を刺激し脳にまで刺激が達する。
ミキトは逸る思いを胸に騒がしい異空間へと消えていった――
――「勝った……10万円儲かった…! 今夜はこの金で遊びまくるぜ!」
始めに座った台が直ぐに当たりを引き十連ほどの爆連を起こした。更にその台でまた当たりを引き二十連の爆連が続き見る見るうちにパチンコ玉を貯めるドル箱は積み上げられた。これを換金して十万が今ミキトの手元にある。
「10万円勝ちの記念としてとっておこう~」
少数のパチンコ玉を記念として持って帰るためにポケットに入れる。ポケットは端数のパチンコ玉を入れられ少し重く感じられる。片手には印なしのビニール袋に入ったお菓子が入っていてチョコレート、飴玉、煎餅などの様々なお菓子が大量に詰め込まれている。
店外に出ると空の日はまだ落ちていなかった。日没まではまだ三時間はある。
「峠を走ろう」
パチンコで勝った後の心の余裕が原動力になり車を走らせたい衝動に駆られる。パチンコで興奮した状態のミキトの頭はとても正常な判断はできなかった。
ミキトは車に乗り込み助手席に印なしのビニール袋に入ったお菓子を雑に置きすぐさま愛車を阿茂峠へ走らせた――
――阿茂峠、毎年自殺者や走り屋の事故などで有名なスポットであるが俺の町から近い場所にある。
この峠は自然が多く都会に近いこの町では見ることのできない野生の鹿や猪が目撃されている。
「ここが阿茂峠か、初めて来たけど良い所だな」
電灯の少ない峠の暗闇からいつも住む町の景色を一瞥し、峠を走る。
徐々に車のスピードを上げていく
ドリフトの様な技は出来ないが急カーブの時に自分の身体に掛かる遠心力が最高に五感を刺激する。
(やばい、脈拍が速くなっているな)
こめかみで血が脳に流れている感覚がハッキリ分かる。暗いカーブの多い道といつもよりもスピードを上げて運転しているためか自然と身体に力が入る。ミラーから俺の顔は見えないが多分瞬きをしていない。
「スゥゥッ」
呼吸を忘れているのを思い出し息を吸うが鼻息は荒い
「これはパチンコで得られる興奮なんて比じゃねぇな」
パチンコでは金をかけた勝負だがこれは自分の命が掛かった勝負だ比較するまでもなく今の状況の方が興奮する。
俺の心臓は興奮によって強く拍動して痛かった。
(動物か?)
車で走り出して十五分ほどの峠の中腹部で突然人影らしきものが道端に見えた。
正確には見えた気がした。
(動物かな?)
運転に集中していて影のことは細かく考えなかったが”阿茂峠には幽霊がでる。”という噂を思い出し背筋に冷汗が吹き出す、背中とシートの間に挟まれているワイシャツは汗で濡れてシートに張り付いていた。
「いや、幽霊なんている訳が無い」
自分に言い聞かせ影は見間違いであったと思い込む。しかしそれは見間違いでも動物の影でもなかった。
「――!」
車の運転席から道の端で佇んでいる人影を確かに目の端で捉える。明らかに人型をしている身長はさほど大きくはなかった。スーツのような物を身にまとっていた様にも見えた。
「あれ?何だかスローモーションに見える?」
気付くと視界はスローモーションで映していて過ぎ行く景色の一つ一つをゆっくり鑑賞出来るほどだった。
ミキトはその時ガードレールに突っ込んでいることに気づいていなかった……
ドッ!!
前方に頭を引っ張られる感覚に襲われスローモーションの視界のまま景色が回転していく。ゆっくりと回転する景色にはキラキラと光る綺麗な車のドアガラスによるイルミネーションが飛んでいた。
(やばい……事故起こしちゃったか……俺の愛車……グロリアは大丈夫かな……)
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眠るようにミキトの意識は落ちていった……
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