異世界ドライバー~三つの能力(車の)で異世界を爆走!俺は課金で頑張って強くなる!~

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第1話 異世界へ入庫

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「――?」
明るい、病院か?それにしても眠いなんなんだ……
閉じた瞼の先に光を感じる、人口の光ではなく自然の太陽ほど強くはない優しい光だ。

眠気を帯びた目を開くとそこにはいつも運転するときの場景が広がるシックな茶色が内装のほとんどを占める車の中だった。
「あれ?俺は事故起こして死んだんじゃないのか?」
ふと、自分が死んでいる事に気がつく。車内は変わりがないが車外ではアスファルトの道もない、信号機もない、自転車に乗った人もいない何もない辺り一面真っ白な空間なのだ、自分の身に何か起こったとしか考えることはできない。
「俺、死んだのか」
だが身体に損傷は無くまるで夢の中にいるような感じだ。寝起きの働かない頭を無理やり起こして自分の身体を確認する。

「ハンドルを握るための手、ある。運転に欠かせない腕、ある。アクセルとブレーキを踏むための足、ある」
五体満足であることを確認して傷一つない身体を足の裏まで見る。
「よかった~、運転できる」
 この白い空間の先にアスファルトの公道があればの話だが。
(車は大丈夫かな!?)
車から出て愛車のボディを確認する。角の多い角ばったボディに傷は見られなかった。車体カラーのホワイトは白い空間と混ざり境界線が無くなったと錯覚するほど綺麗だった。
「傷なし!やっぱりいいボディだぜ」
愛車のボディの確認も終わり自分の置かれている状況を整理しようとしたときさっきまでは居なかったはずの女の子が車のボンネットに腰かけていた。

(さっきまでいなかったはず?てか、俺の車のボンネットに腰かけるな、怒るぞ)

車のボンネットに腰かけている女の子は見た目はサンダルにジャージ、金髪というテンプレのヤンキー女で歳は十五歳ほどに見えるが胸の発育は悪く細い身体をしている事がジャージの上からでも分かった。顔立ちは整っていて青い大きな目に長いまつ毛小さな口と服装がまともだったら何処かのお嬢様に見えるはずだ。 
個人的には貧乳+ロングヘアーなのがポイントが高い。
 ヤンキー女は俺の顔を見て開口一番の一言で
「うわっノーマルかよ雑魚じゃん」
俺に向かって言い放つ。
え?なに?ノーマルって?ノーマル=お金持っていないってこと?又は弱そうってこと?
ヤンキーの言うノーマルを自分の頭で勝手に解釈しカツアゲでもされるのかと身構えるがヤンキー女はありえないという表情で金髪の頭を抱えていた。
「大金払ってガチャ回したのに何でノーマルなのよ…」
ヤンキー女の目には絶望の色が見て取れた。
ヤンキー女はどうやらガチャでクソ雑魚ノーマルを引き当てちゃったらしい。ふふ、ざまぁと思ったけどそのクソ雑魚ノーマル俺だよね!?

「すみません、ここはどこですか?」
悠長にしている暇はない、この状況を把握するために頭を抱えたヤンキー女に尋ねる。
「チッ・・・神の部屋?」
「神の部屋?」
だるそうに答えた。もうどうでもいい、というような諦めた顔で目線は俺に向けている。
”この白い空間は神の部屋というのか、つまり目の前にいるこのヤンキー女は女神さま?”
舌打ちする女神さまなんて聞いたことはないが確認を取る。
「あなたは神様ですか?」 
小さなヤンキー女といえど虎の子、舐めてかかったらどうなるか分からない。俺は丁寧にヤンキー女に質問をした。
「あーす」
気の抜けた返事が返ってくる。
あーす?アース!地球のことか!!

「神様ですよね?」
恐る恐るもう一度聞いてみるがダメだ、やっぱり怖い
「そうだって言ってんでしょ?」
大きな目を吊り上げながら下からガンを飛ばしてくる。ヤンキー女からヤンキー女神にランクアップしたが目の前のガンを飛ばしているヤンキー女が女神さまなんて信じられない。
「もしかして異世界転生ですか!?」
少し上ずった声で目の前のヤンキー女神に確認を取る。
事故に会って死んでしまうが神様に会う、これはどう考えても異世界に最強のチート能力を持って転生の流れだ。チート能力貰えて俺TUEEEEEEEE!!!!しちゃうの?
異世界に転生した後の最強能力で周りの奴らを一捻りにしている妄想をしているとヤンキー女神は俺の期待をぶち壊す回答をしてきた。
「…バカじゃん?しないわよ」
何言ってんの?みたいな顔で俺は異世界に行けないことを告げる。

え……?嘘だよね?嘘だと言って!!

悲壮な顔で跪きヤンキー女神に訴える。下から見るヤンキー女神の顔はとても可愛く透き通った肌をしていてずっと見ていたくなった。宗教の信者が跪き神を見上げる理由が分かったような気がした

「……」
ヤンキー女神の小さな口は動かない。なにか言って?お願い!

「速く地獄に行きなさい」
こいつ閻魔大王だろ。死ね!! あ、俺が死んでたんだ。せめて俺の愛車だけは助けてくれ~
小さな口が動いたと思ったら地獄送り宣言かよ!

「そこを何とかお願いします!!」

土下座初めてだけど上手にできたかな?
土下座しながらヤンキー女神の出方を見る。表情は相変わらずだるそうで雰囲気は早く帰りたいと思った時の大学生に似ている。
「嘘でーす!」
だるそうな顔から一変、アイドルの様な笑顔で答えた。そこには正真正銘の女神さまが立っていた。

(かわいい)

「やった!! 異世界だー!!」
年甲斐にもなく土下座状態から両手を天に上げて万歳した。

「ていうのが嘘で~す」
俺の万歳をクスクスと笑いながら前言を撤回した。少しだけ笑った顔が小悪魔的でドキッとしてしまった自分が憎い。

(このクソヤンキーいい顔しているな)
異世界転生を諦めた俺はもう何も言えなくなった。閻魔大王美少女だったらいいなぁ~
地獄転生で美少女閻魔大王とその部下とのハーレムを期待して妄想しているとヤンキー女神はまたも前言撤回をした。
「というのも嘘。アンタ異世界に行きなさい」
真面目な顔で一言俺に告げる。
「ありがとうございます? 本当ですか?」
もう何が嘘で何が本当か分からない俺は期待せずに尋ねる。

「本当よ、行ってらっしゃい」
ヤンキー女神の目配せで車の前方に光の集合体の様な物が集まりその全貌が明らかになる。異世界へのゲートであろう、少しづつ姿を現す。現れたゲートは何か見覚えがあって……?

「ガレージじゃん!俺の家のガレージじゃん!」
どう見ても俺の家のガレージだった。白い塗装の施された車一台が収納できるガレージは年季によって少し塗装が剥げている部分もあり極めつけに小学生の時に俺自身が付けたアニメキャラのシールがガレージの壁に貼ってある。
(少しうれしいけど、もっとゲートらしいゲートが良かったなぁ)
想像していたゲートとは違い少し落胆するが少しだけ日常に戻れて落ち着いた。

「すみません!能力はとかは貰えないのでしょうか?」
早く行くようにヤンキー女神に催促されるが肝心のチート能力をまだ貰っていない。
異世界に行くのであれば何か能力がないと生きていけない、能力は異世界では生活必需品なのだ。何かもらえないとスライムに襲われて死んでしまうか服を溶かされてしまう。

「わかったわかった。車に能力3つだけあげるわよ」
そんなもん渡すわけねぇだろ!早く行け!とでも言われると思ったがあっさりと能力をくれるらしい、しかも車にまで、ありがたい。
「こっから選びなさい」
ヤンキー女神からリストのようなものを手渡される。能力のカタログギフト?贅沢だな
ミキトはヤンキー女神から手渡されたカタログを開き目を通し三つの能力を選定する。
カタログには能力とその能力の特徴が事細かに書かれている。

(どれどれ?スピードアップ?サイドブレーキが軽くなる能力?汚れが付かない能力?これいいな……)
どれも魅力的な能力ばかりで三つだけを選ぶのは時間がかかりそうだ。ミキトはカタログの一ページ、一ページを余すところなく読み込んでいく――

――「まだ?」
ヤンキー女神が長い時間カタログを眺めているミキトに嫌気を差し聞いてくる。
「決まった、俺の車の能力はこの3つに決めた!」
カタログから車の能力を三つ選定したミキトはヤンキー女神に車の能力の確認として指で指しながらカタログをヤンキー女神に見せる。

1つ目に”絶対壊れない能力”
こいつは異世界の整備されていないであろう道を愛車で走るときにパンクとかされては困るからな。

2つ目に”永久機関”
ガソリンなんてないであろう異世界で運転するためにこれは必要だ。どうやら魔力で永遠と走ることができるらしい

3つ目に”万能”
この能力は車以外の乗り物になることができるらしくヘリコプター、水上バイクなどにもなることができる能力らしい。
別に俺の愛車のグロリアに飽きたわけではない。たまには他の乗り物に乗るのもいいよね?

「この三つでいいの?」
「はい。この三つでお願いします」
ヤンキー女神に車の能力の確認を取り終わり自分の能力を決めることにする。しかしこのカタログは車用で人間用ではない。
「あの~、俺は何の能力を三つくれるんですか?」
どんなチート能力を貰えるのかワクワクしながらカタログを貰おうとするがヤンキー女神がカタログを出す気配はない。

「は?アンタの能力ないから」
「え?」
無慈悲な一言が返ってくる。俺の思考は暫し止まった。
「え?能力3つくれるって……」
「車だけだから」
バッサリ斬られた。どうやら俺にはチート能力どころか能力のひとつも与えてくれないらしい。

「お願いします!お願い致します!!」
神の部屋で本日2度目の土下座発動。俺はもう土下座のスペシャリストだ
「じゃあ1つだけよ……」
またもあっさりと能力を与えることを承諾した。もしかしてこのヤンキー女神押しに弱いタイプ?
能力は1つだけという点が気になるがそんな些細な事は気にしない、チート能力1つで俺TUEEEEEEEE!!!!できるから問題ない。
「あの、カタログとかってないんですか?」
チート能力にもいろんな種類があるだろうからじっくり考えて決めないといけない。チート能力を選定するためにヤンキー女神にカタログの要求をする。
「カタログ?そんなもんないよ」
こいつ何言ってんの?みたいな顔してヤンキー女神は何も出さない。そして小さな鼻から小さく息を吸ったかと思うと一呼吸で俺の能力を告げる。

「アンタの能力はアンタの世界の日用品・車部品・車関連商品の召喚能力よ!!」
と、俺のチート能力を告げた。……?待ってくれ、それは車の整備とか掃除とかに便利だけど今はチート能力ください。
「こんなんでどうやって異世界生きていくんだよ……」
「能力は課金でレベルアップできるし他の能力も手に入れられるわよ」
クソ能力を与えられうなだれる俺にヤンキー女神は能力の強化が課金によって出来ると教える。

まじで!?よかった~なんで課金制!?

「いや、あの、えっとチート能力を「「早く行きなさい!!!」」
業を煮やしたヤンキー女神は怒鳴った。お尻を蹴られながら(ありがとうございます)何の説明も無いまま俺は運転席に押し込まれる。すると勝手にエンジンがかかり前方のゲート(俺の家のガレージ)へと入庫していく。
そういえば峠の人影は幽霊だったのか?小さな疑問を持って車庫を通り異世界へと送られた。
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