異世界ドライバー~三つの能力(車の)で異世界を爆走!俺は課金で頑張って強くなる!~

シェル

文字の大きさ
5 / 8

第4話 駐車

しおりを挟む
男達との戦闘から三時間後、空はオレンジ色に染まり夜が近づいている事を告げている。周りには再び緑が見え始め林が前方に見えていた。
「車で一泊明かすか」
異世界の林での夜を明かすのは不安があるが絶対に壊れない能力があるから大丈夫だろう。
地面は背の低い草が生え風に揺られている。林は夕日によってオレンジに染められているが奥は葉によって光が遮断されているのか暗闇しか見えない。
「林には入らないで迂回するか」
地図も持たないミキトはどの方角に町があるのか分からない為無暗に林に入らない方が良いと考える。加えて辺りは日が落ちて暗くなってきている。このまま林に入るのは得策ではない。
「……?何だ?」
ミキトの目の端で林の奥で光の玉が動くのが見えた気がした。
「幽霊か?やめてくれよオバケなんて嘘さ、嘘だよね?」
ミキト以外誰もいない車内で確認を取るように独り言する。
いかに絶対壊れない能力がある車でも流石にオバケ無効とかはないはずだ、
最近オバケに会う確率高くなってんのかな?異世界に来る前の峠での人影もそうだしやめていただきたい。俺の心臓は絶対壊れない能力なんて持って無いんだ。
「オバケじゃないのか?」
光の玉はゆらゆら動く動きではなく跳んでいるようにも見えたがもしかしてエルフだろうか?
後をつけて正体を暴きたい衝動に駆られたが林の奥は闇が深く道も悪そうだ。なにより木に愛車をぶつけてしまったら嫌だ。
「明日の朝行ってみるか」
明るくなった頃に車を原チャリにして細い道を散策することにした――

――「――!」 「――」
「うるせえな……なんだ……?」
人の声らしき音に浅い眠りを妨げられたミキトは辺りを確認すると一気に目が覚めた。20人ぐらいの人が車の周りを取り囲んでいたのだ。
皆、顔は険しく臨戦態勢だ。皆、手には木製の槍、棍棒、刀、弓矢が握られている。左手には松明を持ち松明の光が淡く顔を照らしていた。
俺はまたモンスター側のようだ。

二十人の内十九人は女性、内の九人は十五歳にもいかないような女の子だった。そして男は見事な大胸筋を持つ一人だけだった。服装は全員露出が多く身軽そうな服を着ている。男のむき出しになっている発達した大胸筋が女性の胸よりも目立つ。
車を囲む影は警戒しているためかすぐに攻撃しようとする素振りは見せない。
「対話できるよな・・?」
絶対壊れないというチート?能力を持っている(車が持っている)からといって俺は誰これ構わず攻撃する様な短気な奴ではない、争いは好まないのだ。
対話を試みる為にパワーウィンドウの上だけ少し開ける。

「闘うつもりはありません!!助けてください!」
車内から外で警戒している影に呼び掛けたが何故、最後に助けてくださいなどと命乞いしたのか分からなかった。
もしかしたら神の部屋での事から下手に出ることが癖になっているのかもしれない。

「そこから出てこい!」
立派な大胸筋の男が叫ぶ。
「殺されないよね? 出ていきたくない」
勿論変な兵器に乗りながら対話なんて無理だよね、
俺がビビっているわけではない、俺が居なくなった後の愛車が心配なのだ。本当です。
身構えながら意を決して車のドアのロックを解除しドアを開ける、周りを囲んでいた女達は半歩後ろに下がった。車から降りた俺に男が大きな胸(大胸筋)を張って近づいてくる。男の圧力に押され後ずさりしたが逃げることはできない。
三メートルという距離で男は止まった。
「お前は兵士か?」
兵士であるかの確認をしてくる。 
「……違います」
深呼吸して落ち着いて答える。
「では山賊か?」
「違います」
俺の身なりが山賊に見えるのだろうか。だだの黒いスキニーパンツに白いワイシャツなんだが。どちらかというとあなたの薄服装が山賊に見える。
ダボ着いたズボンに上半身は発達した筋肉丸出しの裸、その筋肉を締めるように革で作ったのだろうホルスターを付けていてその中に短剣が見えていた。

「詳しく調べさせてもらう」
男の合図で女3人が一歩ずつ近づいてくる。
「え!?あの、すみま「「動くな」 」
背後から平坦な女性の声が聞こえたと同時に背後で短剣を突きつけられていた。前からの接近は囮で後ろからの強襲する作戦だったようだ。格闘技のようなものでもやっているのか女性の力は強く、左手を捩じり上げられ軽々と地面に押さえつけられた。

「ぐぇ、うっ」
地面に胸から落ちて肺の空気が強制的に排出され情けない声が出た。
「その鉄でできた兵器の中を調べろ」
男の命令で残りの女達が車に寄って来る。攻撃を警戒してゆっくりと車に近づく様は虎を狩る狩り人の様な動きだった。
車に触れるほど接近した女性たちは恐る恐る車のドアノブに触れドアを開く。

「操縦席?」
女性達は初めて見る車内をただ見ているだけだったが集まってきた女達の中で一番若そうな女の子が足を布で包んだだけの汚い足で車に乗り込んだ。
(あ~最悪、洗車しないと)
シートに足を乗せて汚している女の子を止められず拘束されている自分の何もできない歯がゆさに腹が立った。 

「なんかあった!」
幼い声が車内から飛んでくる。出てきた女の子の手に握られていたのは助手席に置いていたパチンコの景品の印なしビニール袋に入った大量のお菓子だった。
「なんだこれは?」
大胸筋の男はビニール袋に入っていたチョコレートを一つ取り出しまじまじと見ていたが何も分からなかったようですぐにビニール袋に戻した。
「村に連れていくぞ」
男の一言で女達は俺の腕を縄で拘束し歩き出した。
「すみません! 俺の車! グロリアは!?」
車を林の入り口に置いておくなんてできる訳が無い、盗賊に盗まれてしまう。
「ぐろりあ? その兵器のことか勿論、持っていく」
静かに男は答える。
「えっ? どうやって?」
ひとつ言わせてもらうと兵器じゃないです。車です。
 しかし誰が運ぶんだ?此処にいる女性たちが轢いて持っていくのか?

「ふっ」
車の輸送方法に疑問を持ったとき男は車のボンネットの下に手を入れた。
(もしかして……)

「う~ぬん!!」
男の大胸筋に太い血管が走ったかと思うと男は軽々と車を持ち上げる。
車は男によって縦に持ち上げられ腹が見えていた。

「村に帰るぞ」
男の一言で女性たちは林の中へ歩き出す。
少しカッコいいと思ってしまったが俺の車落とさないでくださいね?
愛車を不安定に持ち運ぶ男の動向に注目しながら縄で拘束され、連行された。 



林の中、拘束され連行されている時に辺りを見ても木と闇があるだけだった。ビニール袋に入ったお菓子を発見した女の子は歩きながらビニール袋に入ったお菓子を物珍しそうに一つ一つ手に取り見ていた。
暗い林の中を30分程歩くと地面が窪んだ一帯が現れた。その窪んだ一帯では小さな光が点の様に光っていて木で建てられた家が建ち並び商店街のようにも見えた。木でできた門は見られず男達が立っていたり巡回しているだけだった。番をしていた男達は俺の車を見て驚いている様子だった。
「こいつを後で取り調べる、牢に入れておけ。」
大胸筋の男は車を持ったまま番をしていた男達に命令した。
「この兵器は、ここに置いておこう。」
そう言い近くに在った大きな納屋へと運んで行き納屋の扉の前に車を置いた。

ズッズンッ
重い音が地面を伝わり地面に響き渡る。
「大事に扱って!! 」
連行されながら俺は愛車の無事を確認する。

俺の愛車はそのままボンネットを男に押され大きな納屋へと駐車されていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...