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3 家

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 「ただいま・・・」


 1人で帰宅した家にはまだ誰もいない。
 お母さんは仕事で夜帰ってくるのが遅いし、お父さんも多分仕事。

  
 「・・・夜ご飯作らなきゃ」

 傘をしまって靴を脱いだ私は、片手を壁に付きながら廊下に足をついた。でもその瞬間靴下も濡れてることに気が付いてすぐにその場で靴下もついでに脱いだ。

 (そうだ・・・洗濯もしなきゃいけないんだ)

 
  「ん"~・・・頭痛い」

 母親の分だけならいいのに、なんで父親のもしなければいけないのだろうか。いつも思ってる疑問だけど、大人なんだから自分ですればいいものを。
 家に帰ってもまたすぐに出て行く。正直彼が何をしてるのか良く分からない。

 木造のボロアパートに家族3人で住んでる気配なんて微塵もなくて、お母さんと私ふたりきりという事実だけ存在すればいいのにと思いながら、古びた廊下に冷たくなった素足をついて自分の部屋まで先に荷物を置きに足を進めた。

 



=======




 「はぁ・・・離婚すればいいのに」


 リビングと呼べるのか疑わしいこの空間は大人3人でギリギリ大丈夫なほどの広さだけど、たまに父親が帰ってきても私は同じ空間に居たくないから3人でリビングに居ることはまずない。


 「・・・・高校卒業したら、就職しなきゃ」

  
 大学なんてお金がないから絶対に無理だ。
 生活費もカツカツなのに贅沢なんて言ってられない。

  
  (お義父さん、きっと家にお金入れてないよね)



    『小宮幸人』

 
 これが私の父親の名前で、血が繋がってない義理の父。母親の再婚相手だから普通に接しようとした時もあったけど生理的に受け付けず、なんだかんだ言ってのらりくらりと交わし今に至る。

 
 母が再婚したのが私が12歳の時。
 小学6年生の時だった。

 
  
 「今日の夜ご飯は・・・何ができるかな」

 
 冷蔵庫を開けて余ってる材料を確認した。
 お母さんが仕事帰りにスーパーに寄ってくれるからだいたい毎回何かしら補充はあるけど同じようなものばかり買ってくるから作る料理もだいたい同じものになる。
 
 まだ袋に残っていた人参と玉ねぎと、それからじゃがいもを手に取って両手で抱えて台所の作業スペースにゴロっと並べまな板と包丁もついでに取り出した。

 
  「・・・・・」

  右手に握った包丁を光に照らす。
 
 その刃先がキレイなのは大事に使っている証拠だと思いたい。そもそも包丁なんてよっぽどな使い方をしない限り変に傷がつかないと思うのだが、その考え方は間違ってるのだろうか。

  「早く作って、お母さんの帰り待たなきゃ」


 


   



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