アイドルになった僕は五感を失った彼女の光になる

春空 桃花

文字の大きさ
5 / 19

第三章 ひまわりの想い

しおりを挟む
   ひまわり畑に行く約束の日になった。

   俺は告白すると決めたが緊張して昨日は一睡もできなかった。

「太陽!おはよう!」
   窓の外から陽葵の声が聞こえた。
「おはよう……すぐに準備するから待って」
「うわっ!すっごく眠そうじゃん!大丈夫?」
   俺が眠そうに言うと陽葵はびっくりしたように驚いていた。

「大丈夫だから……」
「大丈夫なら早くしてねー」
   陽葵は笑顔でそう言いながらすごく楽しみにしているようだった。
「お待たせ、行こっか」
   そう言うと陽葵は笑顔で頷いた。


   ひまわり畑につき、中に入るとそこには物凄い数のひまわりが咲いていた。一面が黄色く輝いていて、ひまわりの香りを乗せた風が夏の暑い季節を爽やかにしていた。
   この日はとっても快晴と言えるほど晴れていて雲一つない青空が広がっていた。
   俺たちの目には青と黄色しか映らないほど見渡してもひまわりの綺麗な景色が続いていた。

「すげぇー……」
   俺はその景色に圧倒されながらすごいの言葉しか出てこなかった。
「見て見て太陽!すごいよ!めっちゃ綺麗ー!」
「うん……」
   陽葵は子供のようにはしゃぎながら目をキラキラとさせていた。

「陽葵、向こうに道があるよ」
   俺の目線の先にはひまわりでできた道が続いており、その道を歩きながらひまわりを見て回るのがこのひまわり畑の定番コースなのだそうだ。

   俺たちも道を歩きながらひまわりを見て回ったが俺はあることに気づいた。
「なぁ、ひまわりって全部同じ方向向いてるよな?」
   植物のことを詳しく知らない俺が不思議そうに言うと陽葵は微笑みながら教えてくれた。

「ひまわりはね、太陽の方向を向いているんだよ。だからひまわりは太陽を見つめているの」

「へー……知らなかった」
「じゃあ、太陽は知らないと思うけど私と太陽の誕生花は同じ花なんだよ。何だと思う?」
   陽葵は俺のことを試すように笑顔でそう言った。

「え、分からないけどこんなとこで言うくらいだからひまわりなんじゃないの?」
「正解!」
   笑顔でそう言われ単純なヤツだなと俺も笑った。
「なんで分かったの?」
「ひまわり畑で聞かれてひまわりって答えなかったらおかしいだろ」
「あっ、確かに!」
   陽葵はひまわり畑で聞いてしまったことにあっと気づいて笑っていた。

「でもね、ひまわりの花言葉はさすがに知らないでしょ?」
「……うーん、元気?明るさ?とかじゃないの?」
   陽葵はさっきの質問のリベンジのようにそう聞いてきたが俺には全く分からなかった。

「正解はねー、『あなただけを見つめる』でした!
それと他にも『憧れ』『情熱』っていう言葉があるんだ」

「へー、あなただけを見つめるか……なんかイメージと違うな」
「そう?私は合ってると思うけど」

   俺の中でのひまわりのイメージは陽葵のような存在だと思っていた。たくさんの人に好かれてみんなの憧れですべての花の中心にいるみたいな感じがしていた。

「いや、だってひまわりは見つめる側じゃなくて見つめられる側だろ?」

「うーん、私はそうは思わないなー」
「えっ……?」

「ひまわりはみんなの憧れの存在みたいだけど、ひまわりはずっと太陽を見つめているんだよ。
ひまわりと太陽は似てるけど、ひまわりは太陽のようにみんなを輝かせることはできないからひまわりは太陽になれなかった。
ひまわりにとって太陽は憧れで遠い存在、だから太陽を見つめるってことだと思う」

   ひまわりは太陽を見つめているか、なんか俺みたいだな。陽葵だけを見つめるみたいな……。

「なるほどね。さすが花のことになると詳しいな」
「だって私の一番好きな花はひまわりだもん!」
   陽葵はなんだかすごく誇らしそうに言った。
「そうなんだ。でも何で?」

「私の名前の由来はひまわりだから。ひまわりのようにまっすぐ一途に育ち、すべての人を笑顔で元気にして、誰もが集まって来るような身近な憧れになりますようにってそんな意味で陽葵にしたらしいから」

「確かに陽葵とひまわり名前も似てるし、名前の由来通りの人になったんじゃねぇの?」
「そうかな?だったら嬉しい!」
   俺がそう言うと陽葵は嬉しそうに笑った。俺はその笑顔を見ながら今日こそちゃんと告白をしようと誓った。


「陽葵、ごめんけど俺ちょっと電話がかかってきて向こうで出てもいいか?」
「うん!」

   そう言うと俺は陽葵に見えないようにひまわりの影に隠れた。電話がかかってきたというのは嘘で本当は告白するのに緊張しすぎて心を落ち着かせたかったからだ。

   俺ははぁー……っと深く深呼吸をして自分に大丈夫と言い聞かせた。

   陽葵は俺の事を幼なじみとしか思っていないかもしれない。陽葵には俺じゃなくてもっとふさわしい人がいると思う。
   俺じゃ釣り合わないよな。
   そんなことが頭の中を駆け巡っていた。
   でも、今日だけはその思いを封印して告白すると決めたんだと強く思った。

   そして俺は覚悟を決め陽葵の元へ戻った。

「陽葵、陽葵に話したいことがあるんだ」
「私も太陽に言いたいことがある」
   俺が勇気を出しながらそう言うと陽葵は真剣な表情で俺に言った。

「太陽、好きです」

   えっ……?なんで俺よりも先に言うんだよ。
俺は思考回路が停止した状態で無意識にそう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

処理中です...