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6月 追憶
5 追憶5
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漆黒の闇だ。そこには闇が広がっていた。真っ黒な闇に時折、波が砕ける音がしていた。遠く、防波堤の突端の方には夜釣りをする人のライトが見える。俺は注意深く、幅10mの防波堤を歩いていた。注意しないと落ちてしまいそうな暗闇が広がっているからだ。ほんの少しのほんのわずかな、ずっと向こうに見える漁船の電照灯が防波堤の輪郭をかろうじて見せてくれているそれだけが一縷の望もみだ。
それは、俺の、母さんを探す俺の心の中と同じで、真っ暗な闇の中のほんのわずかな裏書のない希望だった。
そして、五分もその闇と格闘しながら、進むとその闇の向こう、防波堤の先には、母さんが、見えるはずも無い海面を見て、佇んでいた。
「母さん! 帰ろう」
俺は泣きながら、母さんの背中にしがみ付いた。母さんは俺の、必死に縋り付く手を取って、海面を見たまま、
「帰れないよ」
力無く、答えた。
「父さんに僕が謝ってもらうから、約束するから、一緒に帰って」
俺は泣きながら訴えていた。母さんも俺も服は濡れて、酷く体温を奪ったが、母さんの身体にしがみ付いたことで、母さんの体温が伝わってきて温かかった事と、夜の暗闇の誰もいない夜の防波堤で母さんに泣きながら取り付いて、懇願しなければならない事に俺は随分と惨めに感じていた。
それは、俺の、母さんを探す俺の心の中と同じで、真っ暗な闇の中のほんのわずかな裏書のない希望だった。
そして、五分もその闇と格闘しながら、進むとその闇の向こう、防波堤の先には、母さんが、見えるはずも無い海面を見て、佇んでいた。
「母さん! 帰ろう」
俺は泣きながら、母さんの背中にしがみ付いた。母さんは俺の、必死に縋り付く手を取って、海面を見たまま、
「帰れないよ」
力無く、答えた。
「父さんに僕が謝ってもらうから、約束するから、一緒に帰って」
俺は泣きながら訴えていた。母さんも俺も服は濡れて、酷く体温を奪ったが、母さんの身体にしがみ付いたことで、母さんの体温が伝わってきて温かかった事と、夜の暗闇の誰もいない夜の防波堤で母さんに泣きながら取り付いて、懇願しなければならない事に俺は随分と惨めに感じていた。
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