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本編
5 それはたぶん胡蝶の夢2
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「あの、さ。昨日話したことなんだけど。できそうかな?」
わたしがクッキーを咀嚼し終わるのを待ってから、向かい側の席に座ったルーがそう切り出した。
急に話を向けられたことに動揺して、口の中にある紅茶を、ごくりと飲み込む。
(うーー、いろいろな説明を聞いて頭がパンクしそう)
昨日は、ルーから事のあらましについて説明を受けた。
この国の大神官が魔力目当てでわたしを召喚して失敗したこと。アナスタシアの意識を押しのけてわたしの魂が表に出てしまったこと。
そして、もとに戻すのは難しいこと(←ここ重要!)
アナスタシアの意識が戻る見込みは極めて低いため、しばらくの間は、わたしがアナスタシアとして生活するのがいちばん波風が立たずにいい、というのがルーの提案だった。
もちろんしばらく様子を見て、改善策があればそちらに切り替えていく前提だという。
(小説ではメジャーだった異世界転移が。いざ自分の身に降りかかると、こんな大変だなんて思わなかったよ)
正直なところ、目覚めた当日は、ぜったい夢だと思って楽しんでたし、翌日も、わりと楽観的に考えてた。ルーからもとに戻せないと聞いても、いまひとつ実感がなかった。
でも、さすがに丸2日も経つと、今いる ”ここ” が現実だと思わざるをえない。
そうすると、じわじわと戻れないと言われたことの重大さがわかってくる。
知り合いが誰もいない、なにもわからない世界で生きていけるほど、わたしの生存スキルは高くない。ついでに言うと、そんなに料理もうまくないし、何か作れるほど手先が器用でもない。
そんなわけなので、今のわたしは五里霧中。とりあえず今は流れに逆らわずに生きていくしかないので、ルーの提案を飲むことにした。
「わかった、言われたとおりアナスタシアとして生活してみることにする。すぐにボロが出そうだけど。」
「慣れるまで僕がフォローするからね。そうだ、僕の家に住むことにしようよ。」
さも今思いつきました、という様子でにこにこと笑いながら、ルーは「原因不明の病気を治療するために魔術師の家に滞在する」設定を追加しようとした。
「それはいいけど、治療ってまさか昨日のアレをするってこと・・・?」
自分の顔はきっと赤くなっていると思いながら、聞き返すと、ルーは当然と言わんばかりに首を縦に振った。
昨日は「違う器に魂が入って不安定だから、僕の魔力を流して落ち着かせるね」と言われて、ルーに抱きしめられたうえ、何度もキスされて魔力を流し込まれた。
恥ずかしくて死にそうだった。
治療のためのキスだとわかっていても、落ち着かない。
それにルーはキス魔なんじゃないかと思う。出会ってすぐにキスしてきたし(眠り姫がキスで目覚めるのは当然だと思う。びっくりするから!)、何かにつけてキスしたがる。本人は治療と言っている以上、ある程度はきっとそうなんだろうけど、半分以上は治療目的以外のキスだと思う・・・!
エッチするとかじゃなくて、単純にキスしたくてしている感じ。いや、、魔力を流すのが好きなのか、、よくわからない。
(いやじゃないけど、さすがに心臓にわるい)
見た目美少女で10代とはいえ、中身は立派なアラサー。
一回りは年若いだろう少年からこんなことをされる罪悪感もあり、また治療とはいえこんなコトをされるという照れくささもあり、さらにその行為に気持ちよさを感じてしまう後ろめたさもあった。
だって、ルーのキスはすごく気持ちよくて、くせになる。キスだけでこんなに気持ちよくさせるなんて、どれだけ女性の扱いに慣れているのか。
優雅なしぐさで紅茶を飲む姿に見惚れつつ、改めてルーを見る。
ルーは、銀の髪に紅い瞳という不思議な色彩を持つ美男子だ。話し方や振る舞いも貴族的で洗練されており、しかも国いちばんの魔術師ということだから、女性に大層もてるに違いない。
「あの・・・ね。わたしがいたところでは、そんなにキスは日に何度もするものではなくて・・・ですね。回数を減らしてくれるとありがたいのですケド・・・。」
心持ち上目遣いで恐る恐るお願いをしてみると、ルーはにっこりと極上の笑顔を見せて当然のように言った。
「シアがこの世界に慣れるまでは毎日続ける必要があるんだよ。大丈夫、治療だから。されるがままでいいよ。しばらくは1日数回するかもしれないけど、1週間も続ければ慣れるから。気にしないで。」
(いや、気にするしっ)
これが異世界の常識なのか。それともルーだけなのか。確認する方法は、今のところ、ない。
ちなみにわたしはこの世界に来てから出会った人はルーだけだ。部屋にはトイレとバスルームがついているので部屋から出なくて済むし、たまにルーが隣の部屋に連れて行ってくれている間に、メイドさんが部屋の掃除をしてくれているようだ。
この世界の常識がわからない以上はボロが出ないようにしなくてはいけない。しばらくはルーがわたしの庇護者で、唯一の味方だ。
だから状況がわかるまでは言うとおりにしておいたほうがいいと判断して、あいまいに微笑みながら頷いた。
わたしがクッキーを咀嚼し終わるのを待ってから、向かい側の席に座ったルーがそう切り出した。
急に話を向けられたことに動揺して、口の中にある紅茶を、ごくりと飲み込む。
(うーー、いろいろな説明を聞いて頭がパンクしそう)
昨日は、ルーから事のあらましについて説明を受けた。
この国の大神官が魔力目当てでわたしを召喚して失敗したこと。アナスタシアの意識を押しのけてわたしの魂が表に出てしまったこと。
そして、もとに戻すのは難しいこと(←ここ重要!)
アナスタシアの意識が戻る見込みは極めて低いため、しばらくの間は、わたしがアナスタシアとして生活するのがいちばん波風が立たずにいい、というのがルーの提案だった。
もちろんしばらく様子を見て、改善策があればそちらに切り替えていく前提だという。
(小説ではメジャーだった異世界転移が。いざ自分の身に降りかかると、こんな大変だなんて思わなかったよ)
正直なところ、目覚めた当日は、ぜったい夢だと思って楽しんでたし、翌日も、わりと楽観的に考えてた。ルーからもとに戻せないと聞いても、いまひとつ実感がなかった。
でも、さすがに丸2日も経つと、今いる ”ここ” が現実だと思わざるをえない。
そうすると、じわじわと戻れないと言われたことの重大さがわかってくる。
知り合いが誰もいない、なにもわからない世界で生きていけるほど、わたしの生存スキルは高くない。ついでに言うと、そんなに料理もうまくないし、何か作れるほど手先が器用でもない。
そんなわけなので、今のわたしは五里霧中。とりあえず今は流れに逆らわずに生きていくしかないので、ルーの提案を飲むことにした。
「わかった、言われたとおりアナスタシアとして生活してみることにする。すぐにボロが出そうだけど。」
「慣れるまで僕がフォローするからね。そうだ、僕の家に住むことにしようよ。」
さも今思いつきました、という様子でにこにこと笑いながら、ルーは「原因不明の病気を治療するために魔術師の家に滞在する」設定を追加しようとした。
「それはいいけど、治療ってまさか昨日のアレをするってこと・・・?」
自分の顔はきっと赤くなっていると思いながら、聞き返すと、ルーは当然と言わんばかりに首を縦に振った。
昨日は「違う器に魂が入って不安定だから、僕の魔力を流して落ち着かせるね」と言われて、ルーに抱きしめられたうえ、何度もキスされて魔力を流し込まれた。
恥ずかしくて死にそうだった。
治療のためのキスだとわかっていても、落ち着かない。
それにルーはキス魔なんじゃないかと思う。出会ってすぐにキスしてきたし(眠り姫がキスで目覚めるのは当然だと思う。びっくりするから!)、何かにつけてキスしたがる。本人は治療と言っている以上、ある程度はきっとそうなんだろうけど、半分以上は治療目的以外のキスだと思う・・・!
エッチするとかじゃなくて、単純にキスしたくてしている感じ。いや、、魔力を流すのが好きなのか、、よくわからない。
(いやじゃないけど、さすがに心臓にわるい)
見た目美少女で10代とはいえ、中身は立派なアラサー。
一回りは年若いだろう少年からこんなことをされる罪悪感もあり、また治療とはいえこんなコトをされるという照れくささもあり、さらにその行為に気持ちよさを感じてしまう後ろめたさもあった。
だって、ルーのキスはすごく気持ちよくて、くせになる。キスだけでこんなに気持ちよくさせるなんて、どれだけ女性の扱いに慣れているのか。
優雅なしぐさで紅茶を飲む姿に見惚れつつ、改めてルーを見る。
ルーは、銀の髪に紅い瞳という不思議な色彩を持つ美男子だ。話し方や振る舞いも貴族的で洗練されており、しかも国いちばんの魔術師ということだから、女性に大層もてるに違いない。
「あの・・・ね。わたしがいたところでは、そんなにキスは日に何度もするものではなくて・・・ですね。回数を減らしてくれるとありがたいのですケド・・・。」
心持ち上目遣いで恐る恐るお願いをしてみると、ルーはにっこりと極上の笑顔を見せて当然のように言った。
「シアがこの世界に慣れるまでは毎日続ける必要があるんだよ。大丈夫、治療だから。されるがままでいいよ。しばらくは1日数回するかもしれないけど、1週間も続ければ慣れるから。気にしないで。」
(いや、気にするしっ)
これが異世界の常識なのか。それともルーだけなのか。確認する方法は、今のところ、ない。
ちなみにわたしはこの世界に来てから出会った人はルーだけだ。部屋にはトイレとバスルームがついているので部屋から出なくて済むし、たまにルーが隣の部屋に連れて行ってくれている間に、メイドさんが部屋の掃除をしてくれているようだ。
この世界の常識がわからない以上はボロが出ないようにしなくてはいけない。しばらくはルーがわたしの庇護者で、唯一の味方だ。
だから状況がわかるまでは言うとおりにしておいたほうがいいと判断して、あいまいに微笑みながら頷いた。
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