不埒な魔術師がわたしに執着する件について~後ろ向きなわたしが異世界でみんなから溺愛されるお話

めるの

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本編

37 黎明、または始まりとも言う2

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これから別の相手と夜を過ごすというのに、こんなこと言うわたしもたいがいだとは思う。
でも、毎日繰り返していたルーティーンだから、と苦しい言い訳を自分で自分にした。

・・・内心、現実逃避だと知っていながら。

「いいの?」

「うん、これから陛下と会って話すのに緊張もしているの。だから、、、して?」

ルーは、猫みたいに目を細めて笑うと、やさしくキスをしてくれた。それ以上の理由も聞かなかった。

はじめは軽く、何回かキスするうちに、そっと唇を割って舌が入ってくる。ためらうことなくわたしの舌を捉え、いたずらするように吸い上げる。そのまま歯茎をなぞり、快感を引き出すように咥内を舐めまわす。

(うわ、、、やっぱりすごくきもちいい)

いやなことも、不安も、全部忘れてしまいそうなキスだった。

うっとりと目を閉じると、彼の手がおしりを撫でた。下着をつけていないのでダイレクトに手の熱と感触が伝わる。いくぶん身体が強張っていることがわかったのだろう、「アレク相手にがんばらなくていいからね」と抱きしめてくれた。

(この世界で一番最初に出会ったのがルーでよかった)

ぎゅっとされると、すごく安心する。純粋な、混じりけのない紅玉の瞳は、はじめに『わたしの味方だ』と言ってくれた。彼のキスはわたしを癒してくれる。

もう一度、今度はわたしからキスをした。

「はあ、、、どうしたの。なんかいつもと違って積極的というか。」

答える代わりに、はむっと下唇を甘噛みした。彼の表情が気持ちよさそうにトロリとする。追いかけるように舌を絡め、ちゅぱっと音を立てて吸い付いた。

ほんとうは言いたい。ルーとのキスが大好きって。キモチイイこともしたいって。

女性にだってちゃんと性欲はあるし、素敵な男性に求められたらうれしい。この世界は1人の相手に添い遂げる文化ではなさそうなので、不貞とかを気にする必要もなさそうだ。

でも美しくない、ほんとうのわたしを知っても、まだ今までみたいにキスしてくれるかわからない。だから、まだ本音は言えない。

今夜だって、ほんとうはこわい。美しいアナスタシアのなかで、美しくないコトネの片鱗が透けてしまったら、失望させてしまうのではないかと不安に思う。

現実逃避して、ゆっくりとキスを味わっていると、控えめなノックの音と同時にアレクセイ陛下が音もなく中に入ってきた。部屋にルーがいることに気づいたようだが、怒っているふうではない。

思ったより来るのが早い。ふたり抱き合った腕を離して、お互い名残惜しそうに唇を離して陛下を見た。

「私も混ぜてもらえるのかな?それともルーに見られながら突っ込まれたほうが、君はひょっとして興奮する?」

邪気のない笑顔でわたしに尋ねる。嫌そうな顔で陛下を見たルーは、「シア、またね」と言って転移でいなくなってしまった。チェシャ猫みたいに、するっと。

「まったく、所有欲が強い子供はこれだから困るね。」

「・・・表現に難があるよりは、ましだと思いますけど。」

まさか面と向かって突っ込むとか言われると思わなかった。わたしの精一杯の皮肉に気にする様子もなく、陛下はわたしの頬を両手で挟んで目を覗き込むようにして尋ねた。透明度が高いアクアマリンみたいな瞳がわたしを捉える。

「ねえ、私が君の初めての相手でいいの?この前はあんなに嫌がっていたのに。」

表情も柔らかく、言っていることもちゃんとしているのに、なぜか裏に何か隠している気がしてならない。いかにも人の上に立つ人っぽい。

自分の心を落ち着かせるため深呼吸して、正直に答えた。

「このからだの初めてはあなたがいい。わたしのこともアナスタシアのことも好きじゃない相手のほうが気が楽。」

わざと敬語は使わなかった。こういう交渉ははじめが肝心だ。あくまでも対等だと主張しないと、あっという間に丸め込まれてしまう。

わたしの意図に気づいたのか、陛下の顔におや、という笑みが浮かぶ。

「陛下の言う通りにするから、わたしがこの世界で生きるための知識をちょうだい。」

「そんなことしなくても、妃として何不自由なく暮らせるのに?」

「そんなの陛下が飽きたら終わりだもの。わたしは平和に幸せに暮らしたい。そのためにはこの世界に元の世界あっちの知識を持ち込んだってかまわない。」

「言うねえ。この国が混乱するかもしれないのに私が許可すると?」

「する。陛下は、今を変えたいと思っているはず。」

虚勢を張ってみたものの、王様相手にこんな偉そうなことを言うのはさすがに怖くて少し声が震えた。でもはったりは最後まで続けないと意味がない。絞り出すように最後まで、言う。

「・・・陛下は、いわばわたしの共犯者。良くするのも悪くするのも陛下次第だから。」

アレクセイ陛下は一瞬驚いた顔をした。そのあと破顔して「もちろん」と、わたしを抱きしめた。

何が気に入ったのか知らないけど、頬ずりせんばかりの勢いだ。抱き上げてくるくるとわたしごと回る。欲に濡れた瞳が、妖しく光った。

「君は私だけのもの。大事な共犯者。満足してもらえるよう、これから君をたっぷり可愛がってあげるからね。」
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