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「シア・・・ねえ、もっとちょうだい?」
砂糖菓子みたいに甘い声でルーがキスをねだった。甲高くなく耳に心地よい、でも男性にしては高めの声。わたしはこの声にすごく弱くて、耳にするだけでふわふわしたきもちになる。
でも、ここに彼がいるのは変な話だ。だって昨晩の相手は別人なのだから。
アレクとのあれこれを思い出すと、知らず顔が熱くなる。あんな完璧王子様が(王様だけど)、あんなにねちっこくてエッチがうまいなんてどういうからくりなのか。単に経験豊富なだけなのか。すこぶる疑問だ。
いつもよりも甘く執拗なキスに訝りながら、徐々に頭がはっきりしてきた。
部屋の奥へ目を向けると、窓はしっかりとカーテンが閉まっていて外は見えない。けれど隙間から漏れる光の感じから、既に朝ではない時間帯だと思われた。昨晩は疲れたとはいえ、寝すぎだろう。
まばたきをして広い部屋を見渡すと、部屋にいるのはわたしとルーだけだった。
(アレクは帰っちゃったのかな?)
もちろん寝過ごしたわたしが悪いし、王様たるもの忙しいんだろうから仕方がないのはわかっている。それでも目覚めたときに顔は見たかったなあと、わずかに落胆した。
わたしには特別な夜だったけど(アナスタシアにとっては初体験だ)、彼にとっては単にオシゴトだったのかもしれない。わたしを抱くのはセイのためだと明言していたし。
それに正直されるがままだったので、経験豊富そうなアレクが満足できたとは思えない。
義務を果たしたから帰っただけとか言われたら、なんか切ないなあ。放置じゃさすがに哀れだと、ルーが配慮して様子を見に来てくれたのかも、といらぬ邪推までしてしまう。
下を向いて生産性の低い葛藤にぐるぐる頭を巡らせていると、不意に両頬にひんやりとした手の感触を感じた。そのまま強制的に顔を上向かせられる。
「僕のこと、ちゃんと見てよ。」
不貞腐れたような顔でルーがわたしを見た。
ちゅっ、ちゅっと戯れに啄むようなキスの後には、ねっとりとした深いキスをされた。気持ちよさに意識が引き戻される。同時に大量の魔力を流されたようで、付随する快感にくらくらする。
がまんできずに、甘い声が漏れた。
「ぅ・・・ふう、はあっ。」
「ふふ、かわいい。もっとイイのあげる。」
生暖かい舌が蠢き、体内に巡る彼の魔力がぞわぞわと内側からわたしを犯す。
ちゅぱ、ちゅぱ、という音がさらなる快感を引き出した。「ふあぁ・・・」と思わず声を漏らすと、それすら飲み込むように口を塞がれた。
・・・ぴちゃ、ぴちゃ、という淫らな水音が頭に響き、昨夜の熱が再び灯る。
時間の感覚がわからなくなるくらい、わたしたちはキスし続けていた。性的な感覚をことさら刺激するように、ひたすらゆっくりと咥内を舐め合う。時折舌を強く吸われて、びくんと腰が揺れた。いつもよりも偏執的で、もっと、もっと甘い。
半ば無意識に彼の腰に手を回そうとして、ちゃり、と金属が鳴った。
左手首に触れる冷たい感触に我に返る。一度やめようと身を離すがルーはそれを許さなかった。ときどき息継ぎのために唇を離してくれるけど、すぐにまた口を塞がれた。そして強引に流される大量の魔力。
前にルーから与えられたのは、ただただ気持ちいい快感だけだった。でも今はちょっと違う。言い方は悪いけど、無理やり犯されている感じ。理性がなくなるまで気持ちよくさせて支配しようとする、そんな意図を感じる。
やっぱり今日のルーは変だ。とにかく話をしなくてはと思うのに、快感に弱いこのからだはすでにぐにゃぐにゃだった。
ルーはいつのまにか膝立ちになり、わたしのことを跨ぐような姿勢になった。そのまま息がかかるくらい顔を近づけ、じっとこちらを見る。相変わらずの無邪気な笑顔だけど、瞳はいつもよりもとろりと濃い色をしていた。
血濡れたような紅蓮の瞳をまじまじと見て、レッドスピネルを思い出す。黒魔術師が悪魔を呼ぶために使ったという、禍々しくも美しい宝石。いまの彼の瞳はまさにそれだ。
彼の真意を探ろうとして瞳を覗き込もうとすると、ふいに暖かい掌が私の目を覆った。何も見えなくなる。続けて感じる下肢への愛撫にびくんと反応する。
「ねえ、アレクより気持ちいい?」
耳元で囁きながら、手は柔らかく私の敏感な部分を探しあてる。夜着の下は何も身に付けてないので、躊躇う気配もなく服の中に手を入れられ、胸を揉まれ、そのまま下まで触られる。貪るようなキスも終わらない。
手の動きと舌の動きがそれぞれ刺激になり、それだけでは物足りないとからだが続きを欲した。さらに、ぐちゅぐちゅという音に耳から犯される。
見えない分、ルーの行為全てによけい敏感に反応してしまう。
しばらくからだじゅうを撫でまわされた後、ようやく目隠しされていた手が外された。
ルーから与えられた愛撫とキスでもう限界だった。からだじゅうの力が抜け、ぐったりと放心したように彼の姿を映す。
目が、合う。戸惑うように揺れる瞳に先ほどまでの昏さはない。でもいつもの人なつっこい表情とは違う、冷静な魔術師としての顔をしていた。
「シア、、、君はどこまで魔力を飲み込むんだろう?」
かたちの良い唇から漏れ出たのは、そんな言葉だった。
砂糖菓子みたいに甘い声でルーがキスをねだった。甲高くなく耳に心地よい、でも男性にしては高めの声。わたしはこの声にすごく弱くて、耳にするだけでふわふわしたきもちになる。
でも、ここに彼がいるのは変な話だ。だって昨晩の相手は別人なのだから。
アレクとのあれこれを思い出すと、知らず顔が熱くなる。あんな完璧王子様が(王様だけど)、あんなにねちっこくてエッチがうまいなんてどういうからくりなのか。単に経験豊富なだけなのか。すこぶる疑問だ。
いつもよりも甘く執拗なキスに訝りながら、徐々に頭がはっきりしてきた。
部屋の奥へ目を向けると、窓はしっかりとカーテンが閉まっていて外は見えない。けれど隙間から漏れる光の感じから、既に朝ではない時間帯だと思われた。昨晩は疲れたとはいえ、寝すぎだろう。
まばたきをして広い部屋を見渡すと、部屋にいるのはわたしとルーだけだった。
(アレクは帰っちゃったのかな?)
もちろん寝過ごしたわたしが悪いし、王様たるもの忙しいんだろうから仕方がないのはわかっている。それでも目覚めたときに顔は見たかったなあと、わずかに落胆した。
わたしには特別な夜だったけど(アナスタシアにとっては初体験だ)、彼にとっては単にオシゴトだったのかもしれない。わたしを抱くのはセイのためだと明言していたし。
それに正直されるがままだったので、経験豊富そうなアレクが満足できたとは思えない。
義務を果たしたから帰っただけとか言われたら、なんか切ないなあ。放置じゃさすがに哀れだと、ルーが配慮して様子を見に来てくれたのかも、といらぬ邪推までしてしまう。
下を向いて生産性の低い葛藤にぐるぐる頭を巡らせていると、不意に両頬にひんやりとした手の感触を感じた。そのまま強制的に顔を上向かせられる。
「僕のこと、ちゃんと見てよ。」
不貞腐れたような顔でルーがわたしを見た。
ちゅっ、ちゅっと戯れに啄むようなキスの後には、ねっとりとした深いキスをされた。気持ちよさに意識が引き戻される。同時に大量の魔力を流されたようで、付随する快感にくらくらする。
がまんできずに、甘い声が漏れた。
「ぅ・・・ふう、はあっ。」
「ふふ、かわいい。もっとイイのあげる。」
生暖かい舌が蠢き、体内に巡る彼の魔力がぞわぞわと内側からわたしを犯す。
ちゅぱ、ちゅぱ、という音がさらなる快感を引き出した。「ふあぁ・・・」と思わず声を漏らすと、それすら飲み込むように口を塞がれた。
・・・ぴちゃ、ぴちゃ、という淫らな水音が頭に響き、昨夜の熱が再び灯る。
時間の感覚がわからなくなるくらい、わたしたちはキスし続けていた。性的な感覚をことさら刺激するように、ひたすらゆっくりと咥内を舐め合う。時折舌を強く吸われて、びくんと腰が揺れた。いつもよりも偏執的で、もっと、もっと甘い。
半ば無意識に彼の腰に手を回そうとして、ちゃり、と金属が鳴った。
左手首に触れる冷たい感触に我に返る。一度やめようと身を離すがルーはそれを許さなかった。ときどき息継ぎのために唇を離してくれるけど、すぐにまた口を塞がれた。そして強引に流される大量の魔力。
前にルーから与えられたのは、ただただ気持ちいい快感だけだった。でも今はちょっと違う。言い方は悪いけど、無理やり犯されている感じ。理性がなくなるまで気持ちよくさせて支配しようとする、そんな意図を感じる。
やっぱり今日のルーは変だ。とにかく話をしなくてはと思うのに、快感に弱いこのからだはすでにぐにゃぐにゃだった。
ルーはいつのまにか膝立ちになり、わたしのことを跨ぐような姿勢になった。そのまま息がかかるくらい顔を近づけ、じっとこちらを見る。相変わらずの無邪気な笑顔だけど、瞳はいつもよりもとろりと濃い色をしていた。
血濡れたような紅蓮の瞳をまじまじと見て、レッドスピネルを思い出す。黒魔術師が悪魔を呼ぶために使ったという、禍々しくも美しい宝石。いまの彼の瞳はまさにそれだ。
彼の真意を探ろうとして瞳を覗き込もうとすると、ふいに暖かい掌が私の目を覆った。何も見えなくなる。続けて感じる下肢への愛撫にびくんと反応する。
「ねえ、アレクより気持ちいい?」
耳元で囁きながら、手は柔らかく私の敏感な部分を探しあてる。夜着の下は何も身に付けてないので、躊躇う気配もなく服の中に手を入れられ、胸を揉まれ、そのまま下まで触られる。貪るようなキスも終わらない。
手の動きと舌の動きがそれぞれ刺激になり、それだけでは物足りないとからだが続きを欲した。さらに、ぐちゅぐちゅという音に耳から犯される。
見えない分、ルーの行為全てによけい敏感に反応してしまう。
しばらくからだじゅうを撫でまわされた後、ようやく目隠しされていた手が外された。
ルーから与えられた愛撫とキスでもう限界だった。からだじゅうの力が抜け、ぐったりと放心したように彼の姿を映す。
目が、合う。戸惑うように揺れる瞳に先ほどまでの昏さはない。でもいつもの人なつっこい表情とは違う、冷静な魔術師としての顔をしていた。
「シア、、、君はどこまで魔力を飲み込むんだろう?」
かたちの良い唇から漏れ出たのは、そんな言葉だった。
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