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本編
69 王宮魔術師の嘆き 【side ルー】
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「な・ん・で、僕がシアのお披露目会に出席できないのさ! 人が集まる場では宮廷魔術師が王の護衛をするのが決まりでしょ?」
わざわざ改まってアレクの私室に呼ばれたと思ったら、済まなそうな顔で言われたのは「舞踏会には欠席してもらうから」という無慈悲な一言だった。
威嚇するように、ばんっと机を叩くと思ったよりも大きな音がした。地味に手も痛い。不敬罪にもなりかねないけど構うもんかと、やさぐれた気持ちで睨むと、やれやれといった風情でアレクが肩をすくめた。
「先日のアレコレがあったせいか、セイがどうしても君は欠席させると主張してね。周りも今夜の舞踏会はに大きな危険はないだろうから王宮魔術師は不在でも問題ないんじゃないか、ということになってさ。」
「だからって無理やり欠席にするなんて勝手すぎる!」
「だって君、いつも『舞踏会なんて退屈だから出たくない』って言ってるじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「身から出た錆だと思ってあきらめてよ。その代わり舞踏会が終わったらシアと逢わせてあげるから、ね?」
子供を宥めるかのような言い方にカチンときて、余計に子供っぽい文句が口をつく。
「逢うだけじゃヤダ。誰にも邪魔されず三日三晩は一緒にいたい。」
アレクは少し困ったように柳眉を寄せて目を伏せた。
「うーーん、とりあえず丸一日はふたりきりの時間を確保するから我慢してよ。」
ようやくぎりぎりの妥協案を受け取った。「約束だからね!」と捨て台詞めいた言葉を残して部屋を出る。「相変わらずの我儘っぷりだなあ」というアレクの呟きが後ろで聞こえた。
人前でシアにキスしたのが余程気に入らなかったのか。ひどすぎる仕打ちだと思う。そもそもシアは僕のものなのに、なんでセイからそんなことを言われなくてはいけないのか。
腹いせに、ぽんっと掌から光の球を生み出して空に投げる。虹色に光るそれは、花火みたいにキラキラと光って、音もなく消えた。
(シアの安全と引き換えだから仕方なくだもんね)
がまん、がまん、と自分に言い聞かせる。
物理的な危険であれば、いくらでも僕が護ってあげられる。でも政治的な思惑が絡むとどうしてもアレクの保護下に入る必要がある。わかってはいるけれど、思い通りにいかないことばかりでいらいらする。
だめだと思いつつ、とても仕事に手を付けられなかった。せっかくゴドノフ卿から珍しい植物を譲り受けたというのに、分析しようとするとシアのことばかりが頭に浮かぶ。
舞踏会当日は、悔しいから一日中部屋に引きこもっていようと思ったけど、気になって会場に向かう前、支度を済ませたシアをこっそり遠くから見つめる。
綺麗だった。今まで見た中で、いちばん。
彼女のために誂えられたドレス。美しく輝くティアラ。緊張しているのか、不安げにアレクを見上げる瞳は儚げに揺れる。
おとぎ話から抜け出たお姫様みたいだった。
対する僕はどうだろう。
色素のない銀髪に、禍々しいほどの紅い瞳。小柄で背も高くない、お姫様の横に並ぶには不釣り合いな姿。
今まで不満なんて持ったことがなかったけれど、初めて自分の容姿に引け目を感じた。
若き美貌の国王に、似合いの妃。あんなに美しく着飾ってアレクの妃として人前に出るのかと思うと、嫉妬でぐるぐるする。知らず唇を噛んだ。
最後にシアを手に入れられればいい、ずっとそう思っていた。でもそんなのは嘘だって思い知らされる。
彼女の全部がほしい。
他の誰かに笑いかけないで。僕だけ見て。
(もうシアは僕のものなのに)
まっすぐに僕の目を見て好きだと言ってくれた。愛しい人。
僕の醜い独占欲も受け入れてくれた。
もう3日もシアとキスをしていない。あの柔らかな唇に、甘い吐息に。香り立つような身体を味わえないのはストレスでしかなかった。
あの身体を抱きしめたい。なのに、今夜はお留守番。
ひとり自室に戻り、ベッドに腰かける。
あんなに身体のラインがはっきりしたドレスを纏って、艶のあるグロスを塗った唇でほほ笑んで。シアを見た男はきっと頭の中で彼女を脱がし、口に出せないような行為を想像するに違いない。不特定多数の男どもに彼女がいかがわしい眼で見られると思うと、すごく嫌だ。
(シアの心も体も、すべて僕だけのものだ)
考えれば考えるほど我慢できなくなった。
服を脱ぎ捨てて、そっと自分自身に触れる。彼女のにおい、体温、甘い魔力。それらを想像するだけで、自身が高まって硬くなるのがわかった。
「・・・はっ・・ああっ、シアッ、シアッ」
熱いカタマリに手を添えて上下に動かす。
頭の中のシアは、捕らわれた小鳥のように僕の部屋で鎖に繋がれていた。いつも以上に快感に潤んだ瞳で僕に深いキスをねだる。ベッドに押し倒すと真っ赤になって顔を逸らすけど、僕からの愛撫を待ち望んでいるのが一目でわかった。
全部服を脱がして、頭のてっぺんから爪先まで、余すところなく舐めまわしたい。思う存分魔力を流して体中を犯し尽くしたい。
そして所有の印をあちこちにつけて、逃げられないように閉じ込めてしまいたい。
ぐちゅぐちゅと自身を扱き、高まる熱を逃がす。熱くてたまらない。我慢できない。
思う存分白濁を吐き出したものの、満足感には程遠い。
(はあ、一人でシテも空しい)
早く彼女に逢いたい。ああ、ふたりだけの時間が待ち遠しい。
「・・・・え? なんでそうなったの?」
なのにその晩、アレクから聞いたのは、シアがイヴァンの屋敷に連れていかれてしまったという報せだった。
わざわざ改まってアレクの私室に呼ばれたと思ったら、済まなそうな顔で言われたのは「舞踏会には欠席してもらうから」という無慈悲な一言だった。
威嚇するように、ばんっと机を叩くと思ったよりも大きな音がした。地味に手も痛い。不敬罪にもなりかねないけど構うもんかと、やさぐれた気持ちで睨むと、やれやれといった風情でアレクが肩をすくめた。
「先日のアレコレがあったせいか、セイがどうしても君は欠席させると主張してね。周りも今夜の舞踏会はに大きな危険はないだろうから王宮魔術師は不在でも問題ないんじゃないか、ということになってさ。」
「だからって無理やり欠席にするなんて勝手すぎる!」
「だって君、いつも『舞踏会なんて退屈だから出たくない』って言ってるじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「身から出た錆だと思ってあきらめてよ。その代わり舞踏会が終わったらシアと逢わせてあげるから、ね?」
子供を宥めるかのような言い方にカチンときて、余計に子供っぽい文句が口をつく。
「逢うだけじゃヤダ。誰にも邪魔されず三日三晩は一緒にいたい。」
アレクは少し困ったように柳眉を寄せて目を伏せた。
「うーーん、とりあえず丸一日はふたりきりの時間を確保するから我慢してよ。」
ようやくぎりぎりの妥協案を受け取った。「約束だからね!」と捨て台詞めいた言葉を残して部屋を出る。「相変わらずの我儘っぷりだなあ」というアレクの呟きが後ろで聞こえた。
人前でシアにキスしたのが余程気に入らなかったのか。ひどすぎる仕打ちだと思う。そもそもシアは僕のものなのに、なんでセイからそんなことを言われなくてはいけないのか。
腹いせに、ぽんっと掌から光の球を生み出して空に投げる。虹色に光るそれは、花火みたいにキラキラと光って、音もなく消えた。
(シアの安全と引き換えだから仕方なくだもんね)
がまん、がまん、と自分に言い聞かせる。
物理的な危険であれば、いくらでも僕が護ってあげられる。でも政治的な思惑が絡むとどうしてもアレクの保護下に入る必要がある。わかってはいるけれど、思い通りにいかないことばかりでいらいらする。
だめだと思いつつ、とても仕事に手を付けられなかった。せっかくゴドノフ卿から珍しい植物を譲り受けたというのに、分析しようとするとシアのことばかりが頭に浮かぶ。
舞踏会当日は、悔しいから一日中部屋に引きこもっていようと思ったけど、気になって会場に向かう前、支度を済ませたシアをこっそり遠くから見つめる。
綺麗だった。今まで見た中で、いちばん。
彼女のために誂えられたドレス。美しく輝くティアラ。緊張しているのか、不安げにアレクを見上げる瞳は儚げに揺れる。
おとぎ話から抜け出たお姫様みたいだった。
対する僕はどうだろう。
色素のない銀髪に、禍々しいほどの紅い瞳。小柄で背も高くない、お姫様の横に並ぶには不釣り合いな姿。
今まで不満なんて持ったことがなかったけれど、初めて自分の容姿に引け目を感じた。
若き美貌の国王に、似合いの妃。あんなに美しく着飾ってアレクの妃として人前に出るのかと思うと、嫉妬でぐるぐるする。知らず唇を噛んだ。
最後にシアを手に入れられればいい、ずっとそう思っていた。でもそんなのは嘘だって思い知らされる。
彼女の全部がほしい。
他の誰かに笑いかけないで。僕だけ見て。
(もうシアは僕のものなのに)
まっすぐに僕の目を見て好きだと言ってくれた。愛しい人。
僕の醜い独占欲も受け入れてくれた。
もう3日もシアとキスをしていない。あの柔らかな唇に、甘い吐息に。香り立つような身体を味わえないのはストレスでしかなかった。
あの身体を抱きしめたい。なのに、今夜はお留守番。
ひとり自室に戻り、ベッドに腰かける。
あんなに身体のラインがはっきりしたドレスを纏って、艶のあるグロスを塗った唇でほほ笑んで。シアを見た男はきっと頭の中で彼女を脱がし、口に出せないような行為を想像するに違いない。不特定多数の男どもに彼女がいかがわしい眼で見られると思うと、すごく嫌だ。
(シアの心も体も、すべて僕だけのものだ)
考えれば考えるほど我慢できなくなった。
服を脱ぎ捨てて、そっと自分自身に触れる。彼女のにおい、体温、甘い魔力。それらを想像するだけで、自身が高まって硬くなるのがわかった。
「・・・はっ・・ああっ、シアッ、シアッ」
熱いカタマリに手を添えて上下に動かす。
頭の中のシアは、捕らわれた小鳥のように僕の部屋で鎖に繋がれていた。いつも以上に快感に潤んだ瞳で僕に深いキスをねだる。ベッドに押し倒すと真っ赤になって顔を逸らすけど、僕からの愛撫を待ち望んでいるのが一目でわかった。
全部服を脱がして、頭のてっぺんから爪先まで、余すところなく舐めまわしたい。思う存分魔力を流して体中を犯し尽くしたい。
そして所有の印をあちこちにつけて、逃げられないように閉じ込めてしまいたい。
ぐちゅぐちゅと自身を扱き、高まる熱を逃がす。熱くてたまらない。我慢できない。
思う存分白濁を吐き出したものの、満足感には程遠い。
(はあ、一人でシテも空しい)
早く彼女に逢いたい。ああ、ふたりだけの時間が待ち遠しい。
「・・・・え? なんでそうなったの?」
なのにその晩、アレクから聞いたのは、シアがイヴァンの屋敷に連れていかれてしまったという報せだった。
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