不埒な魔術師がわたしに執着する件について~後ろ向きなわたしが異世界でみんなから溺愛されるお話

めるの

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本編

77 それはヒミツの味3

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思わぬ声にびくりとからだが強張る。ドアが少しだけ開いているので、わたしたちの声が廊下にまで漏れていたのだろう。

おそるおそるドアに視線を向けると、確かに人の気配がした。

人に見聞きされるとまずいことをしていたという自覚はあるので、さすがに心臓がドキドキする。決してわたしから誘ったわけではないですけれども!

「・・・おい、ラジウスそこにいるのか?」

「いますよ。でも姫はまだ着替えていませんから殿下は入らないでくださいね。」

さわさわと私の太ももを撫でる手を止めないままで、全く動じることもなくラジウスが答えた。

「着替え前なら何故そこにお前がいる!? 侍女は手配しただろう!」

「もう、大声出さないでくださいってば。アンナなら僕が代わるって言ったら快く譲ってくれましたよ。」

「まったく・・・様子を見るだけと言っただろうが。」

「だってあまりに無防備すぎて危なっかしいですよ、このひと。そんなわけでいま姫に魅了の制御をお伝えしているんですから、邪魔しないで下さいね。」

(あ、そういうことだったんだ)

ようやく理解できたと思ったら、不意をついてラジウスがキスをする。こんども舌を絡める、深くて甘いキス。

「ん・・・ふっ・・」

「ふふ、姫ってば、かわいい声を出しちゃって、殿下に聞こえちゃいますよー」

そう言いながら、ラジウスはわざとちゅぱちゅぱ音を立てるようにキスをした。

太ももを撫でられながら舌をつつかれると、勝手にからだが期待して下半身がじんわりする。好きじゃない人とのキスでも反応するのよね、快感に弱いこのからだは。わかってはいるけれどちょっと情けない。

ドアの向こうではイヴァンが慌てる気配がする。わたしだってこんな声を人に聞かせる趣味はない。黙っていなくちゃと頭の片隅で思う一方で、あまりの気持ちよさに負けて喘ぎ声を抑えることができなかった。

「やんっ・・・ひゃう・・」

「もっと声出していいですよ。ほら殿下も姫のかわいい声が聴きたいって。」

「勝手なこと言うなっ、そんなことは言っていない!」

「照れなくていいですよう。あと1時間したら伺いますから、それまでおひとりで処理しててもいいですからねー。」

「お前っ、後で覚えておけよっ。」

皇子らしからぬ科白を吐いて、バタンッと勢いよくドアを閉められた。一応外に声が漏れないよう気遣ってはくれたらしい。






そのあとも、何回もキスされて部屋を出るときにはふらふらだった。

魔力の制御方法を教えてくれただけだと思うけど、、、けど、あんなにがっつりキスされるとは思わなかった。しかもなぜかものすごく気持ちよくて。

しかも「で感じちゃったんですよね」とか「ヌルヌルしたの、気持ちいいですね」とか耳元で囁かれるから、よけいゾクゾクするのが止まらなかった。

こんなに気持ちよくなっちゃっているのに、あくまでも魔力の制御を教えてもらっているだけなのが地味につらい。このからだでめちゃくちゃ気持ちがいいセックスを経験してしまったせいか、熱を鎮めてほしくて余計にからだが疼く。

ラジウスは、わたしの欲望になんて気づきもしないのか、もしくは気づいていながら放置しているだけなのか知らないけれど、キスして太ももを触る以上のことはしなかった。

とりあえず気を取り直して身だしなみを整える。用意されていた何着かのうち、ワインレッドの軽やかなワンピースを選んで着替えさせてもらった。

本日は移動日だと聞いているので動きやすさ重視。カットが工夫されているみたいで、からだのラインにきれいに沿ってとても着心地が良いものだった。

手伝ってくれるのが男性であるラジウスなのでどうかと思ったが、「私のことは侍女と同じだと思ってくださいね」と言い切られ、準備を手伝ってもらう羽目になった。この世界では男性が女性のお世話をするのが珍しくないと言われたけれど、さすがににわかには受け入れがたい。

あと昨晩着ていたドレスはめちゃめちゃ手がかかっているので、大事に保管してもらうようにお願いしておく。

「さあ姫様。殿下がお待ちかねなので参りましょうか。」

そう気取って促されて部屋を出て、ラジウスとふたり、廊下を歩きながらたわいもないことを話す。

「姫は常に魅了の魔力が漏れているので、代償として常に快感を求めているんです。このままだとまともな生活できませんからね。でも短時間でずいぶん上達しましたよ。」

「・・・アリガトウゴザイマス。」

褒められた気がしないのはなんでだろう。要は消費電力(魔力)が大きくて無駄なので省エネしましょう、普段使わない電気(魔力)は消しましょう、ということみたい。

にわか仕立ての特訓のおかげで、ラジウスの魔力をせき止めるところから始まり、なんとか自分の魔力の放出も抑えられるようにまでなった。そこに至るまでさんざんキスされて、感覚が掴めたころには、からだに力が入らなくなりそうだったけど。

「今日あなたたちの国に移動して、手続きしたらすぐに帰れるかしら?」

気にかかっていることを尋ねると、一拍間を置いた後で答えが返ってきた。

「そうですねえ。議会の承認が必要なので数日は滞在いただく必要があると思います。せっかくなのでその間は街をご案内しますね。そうそう殿下がカフタンを仕立てたいとおっしゃってましたよ。」

すぐに帰れると思っていたのに、予想とは違った答えに少し落胆する。隣国に観光旅行に来たと思えばいいか。でもひとりで来ても楽しくはない。

考えていることが顔に出たのか、ラジウスが困ったように笑った。

しかたがない。わかっているけれども顔に出てしまう。とりなすように「姫が楽しめるよう誠心誠意お世話しますから期待しててくださいね」とラジウスが言うので、ごまかすように愛想笑いをする。




ラジウスはとても話しやすくて、いつのまにか客間の前に辿り着いていた。

「殿下、お待たせしました。姫をお連れいたしました。」

そういって扉を開けると、そこにはイヴァンと、今まで見たことがないくらい無表情のルーが座っていた。
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