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本編
90 瑠璃の都で何を知る4
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道中の最後に連れてきてくれたのは、賑やかな通りにある可愛いカフェだった。
木目を生かしたナチュラルなインテリアは、このあたりでいえばモダンなデザインなんだろう。それほど似ているわけではないのに、なぜか元の世界でちょくちょく通っていたお気に入りのカフェを思い出した。
ドアを開けると男性スタッフさんの「ようこそ」という挨拶が聞こえた。中は男性と女性が7対3くらいだが、それでも街中よりは女性率がぜんぜん高い。男性だけのペアは多くなく、ひとつのテーブルに女性1人と男性3人、みたいな組み合わせが目につく。
「ここってば主のお気に入りなんですよー。女性が好きなスイーツもたくさんありますから、さ、入って入って。」
ラジウスに先導されて眺めの良い窓際の席に案内される。心なしかぶすくれているルーに不安を感じつつ、おすすめだというデザートプレートを注文した。
ほどなくしてテーブルに運ばれてきたのは、色とりどりのフルーツが乗った大ぶりのタルトだった。赤いフルーツがきらきらとしてとても食欲をそそる。それと甘い香りがするカフェオレ。わたしとセイラ、イヴァンが同じもので、ラジウスが生クリームが乗ったヘーゼルナッツ風味のコーヒー、ルーがフレッシュジュースをセレクトした。
「うーーー、おいしい。」
口に入れるとフルーツの酸味とクリームの甘味で天国に行きそうなくらいおいしい。無言で食べていると、わたしに負けず劣らず幸せそうな顔で、イヴァンがタルトをほおばっていた。
セイと似た容姿のイヴァンがスイーツをうれしそうに食べる姿は、意外で、そしてものすごくかわいかった。
わたしの視線に気づいたのか、イヴァンがぴたりと食べるのをやめた。明らかに「しまった」という顔をしている。
「ああ、、すまん。男なのにこんなもの食べて変だよな。つい。」
「へ? いや、スイーツ好きに悪い人はいないというし、かわいくてつい見とれてただけで。」
慌てて訂正すると、ばつの悪そうな顔でイヴァンが言った。
「その、、、おかしくないか? こんな大の男がこんな」
話の意図が読めずに首をかしげていると、見かねたラジウスが補足してくれた。
「すみませんね、この国では、男性が甘いものを好むのは男らしくないと考える風潮があるんですよ。しかも以前ご令嬢から『立派な騎士がお菓子好きなんて変です』と言われたらしくって。僕もセイラも慣れてるんで忘れてましたけど、主は気にしてるんで。」
そっか、この国は甘いものを食べる男性は人気がないのか。
「わたしがいた国では、甘いもの好きな男性は珍しくなかったですよ。普段はそう見えない強面の男性が実はかわいいもの好きだったり、やさしそうに見えて実はイジワルだったりという、意外性が評価されていました。」
事情をしらないセイラがいるから、ちょっとだけ濁して説明すると、「やさしそうでいじわるだったら詐欺じゃないですか」と返されて言葉に詰まる。
残念ながら、この世界にはギャップ萌えという感覚はないようだ。どう説明していいかわからなくてそれ以上は何も言えなかったが、本人が気にしていることはよくわかった。
スイーツ好きの騎士なんて素敵だけどなあ。気休めかもしれないけど「わたしも凛々しい騎士が甘いもの好きというギャップは好きですけど」と付け加えた。イヴァンは「ありがと」と小さく笑った。
半日以上歩き回った街歩きは、とても楽しかった。帰りの馬車に乗るころには、すっかりくたくたで、うとうとしてしまった。
明日は、神殿に荷物を取りに行く。あとはイヴァンのおばあさんに会ってほしいと言われてたっけ。
うまくあしらえるかな。アレクの期待どおりに。
木目を生かしたナチュラルなインテリアは、このあたりでいえばモダンなデザインなんだろう。それほど似ているわけではないのに、なぜか元の世界でちょくちょく通っていたお気に入りのカフェを思い出した。
ドアを開けると男性スタッフさんの「ようこそ」という挨拶が聞こえた。中は男性と女性が7対3くらいだが、それでも街中よりは女性率がぜんぜん高い。男性だけのペアは多くなく、ひとつのテーブルに女性1人と男性3人、みたいな組み合わせが目につく。
「ここってば主のお気に入りなんですよー。女性が好きなスイーツもたくさんありますから、さ、入って入って。」
ラジウスに先導されて眺めの良い窓際の席に案内される。心なしかぶすくれているルーに不安を感じつつ、おすすめだというデザートプレートを注文した。
ほどなくしてテーブルに運ばれてきたのは、色とりどりのフルーツが乗った大ぶりのタルトだった。赤いフルーツがきらきらとしてとても食欲をそそる。それと甘い香りがするカフェオレ。わたしとセイラ、イヴァンが同じもので、ラジウスが生クリームが乗ったヘーゼルナッツ風味のコーヒー、ルーがフレッシュジュースをセレクトした。
「うーーー、おいしい。」
口に入れるとフルーツの酸味とクリームの甘味で天国に行きそうなくらいおいしい。無言で食べていると、わたしに負けず劣らず幸せそうな顔で、イヴァンがタルトをほおばっていた。
セイと似た容姿のイヴァンがスイーツをうれしそうに食べる姿は、意外で、そしてものすごくかわいかった。
わたしの視線に気づいたのか、イヴァンがぴたりと食べるのをやめた。明らかに「しまった」という顔をしている。
「ああ、、すまん。男なのにこんなもの食べて変だよな。つい。」
「へ? いや、スイーツ好きに悪い人はいないというし、かわいくてつい見とれてただけで。」
慌てて訂正すると、ばつの悪そうな顔でイヴァンが言った。
「その、、、おかしくないか? こんな大の男がこんな」
話の意図が読めずに首をかしげていると、見かねたラジウスが補足してくれた。
「すみませんね、この国では、男性が甘いものを好むのは男らしくないと考える風潮があるんですよ。しかも以前ご令嬢から『立派な騎士がお菓子好きなんて変です』と言われたらしくって。僕もセイラも慣れてるんで忘れてましたけど、主は気にしてるんで。」
そっか、この国は甘いものを食べる男性は人気がないのか。
「わたしがいた国では、甘いもの好きな男性は珍しくなかったですよ。普段はそう見えない強面の男性が実はかわいいもの好きだったり、やさしそうに見えて実はイジワルだったりという、意外性が評価されていました。」
事情をしらないセイラがいるから、ちょっとだけ濁して説明すると、「やさしそうでいじわるだったら詐欺じゃないですか」と返されて言葉に詰まる。
残念ながら、この世界にはギャップ萌えという感覚はないようだ。どう説明していいかわからなくてそれ以上は何も言えなかったが、本人が気にしていることはよくわかった。
スイーツ好きの騎士なんて素敵だけどなあ。気休めかもしれないけど「わたしも凛々しい騎士が甘いもの好きというギャップは好きですけど」と付け加えた。イヴァンは「ありがと」と小さく笑った。
半日以上歩き回った街歩きは、とても楽しかった。帰りの馬車に乗るころには、すっかりくたくたで、うとうとしてしまった。
明日は、神殿に荷物を取りに行く。あとはイヴァンのおばあさんに会ってほしいと言われてたっけ。
うまくあしらえるかな。アレクの期待どおりに。
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