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本編
95 巫女姫の望み2【side アリサ】
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目が覚めたら、誰かの人生を追体験するかのように無数の光景が頭を巡る。今まで知らなかった知識が突如頭の中に流れ込んできて衝撃を受けた。
知らなかったことを知っている、不思議な感覚。
私が受け入れた魂は、日中は常にコンピューターに向かって何かを探していた。たとえば世の中の状況を、さまざまな知識を、未来をどうやって見通すのかを。個人が気まぐれに視る未来ではなく、計算と裏付けによる客観的データに基づくシミュレーションだ。
頭の中で「根拠のない予言なんて信じてはいけない」という声が聞こえる。
予言は神の啓示ではなく、起こりえる可能性の一つを見ているにすぎない。全ての前提条件が満たされたときにだけ、予言は実現する。
私が新たに得た知識は、合理的で納得がいくものだった。もともと予言の不確実性に気づいていたので、自分なりの答えが得られた満足感もあった。
なのに、巫女である私が可能性を口にした途端、皆は考えることを放棄して無条件に信じてしまう。
予言を鵜呑みにして思考停止してはだめだ。起こりえる可能性を考慮した上で、起きないように努力することこそ重要なのだ。
未来を見通す力は魔力にはない。予言は定められた未来ではない。
なぜ、それに気が付かないのか。
ともあれ私は異世界の魔力で体内の時間を停止し、健康とは言えないまでも生きながらえた。
そしらぬ顔で「次代の皇帝は政略結婚ではなく、本人が好きになった相手を選ぶべき」と予言を装って進言もした。その結果、弟は幼馴染の令嬢と結ばれ、悲惨な未来も回避できた。
きっと私が生きている理由は、弟やその家族が幸せに笑っている姿を見るためだろう。そう思いつつ、平穏な毎日が過ぎていった。いつのまにか弟の息子が皇位を継ぎ、その息子も成人するまでになった。
皇位を退いた弟は、離宮で皇太后と過ごし、時折私のもとへ遊びに来てくれる。
予言を求めて訪れる人もほとんど来ない。私が望んだ、平和で幸せな日々だ。
ある夜、夢を通じて起こりえる未来を視た。久しぶりの未来視だ。
私の考えを理解する少女に出会い、この国の次代の巫女として跡を継いでほしいと願う光景だった。今回は、彼女の姿かたちまではっきりと見えた。自分の後継者を得られる可能性に、久々に気持ちが高揚した。
叶えたい。この未来は。
夢で見た光景を詳細に書き出し、実現するための条件を、そして裏付けとなるデータを探す。幸いキリル公国は大陸中から有能な魔術師が集まり、さまざまな情報が集まる。甥である皇帝の力を借りつつ各国から情報を求めた。
ついに、私が見た姿と同じ姿をした少女が隣国にいることを突き止めた。魔力を持ち完璧な造形を持つ美しい少女。しかも王家に連なる巫女姫の血脈。依代にはぴったりだ。
私は予言を実現するには、異世界からの召喚が不可避の条件だと考えるに至っていた。この世界しかしらない人間が、私のような考え方を持っているとは考えにくいからだ。
召喚をおこなうには、キリル公国に招く理由が必要になる。
どうやってこの国に招こうかと思案しているところで、千載一遇のチャンスが来た。孫のイヴァンが彼女を婚約者にしたいと議会に諮っているという情報を手に入れたからだ。あまりの偶然に、これこそ運命だと感じたほどだ。
奇しくも今年は10年に1度の召喚を行う年。依代の候補者はまだいない。
私は予言のオブラートに包み、神殿の長に伝える。
「第二皇子の婚約者に魔力を満たすため、召還を行うべし」と。
条件が揃った。
私の望む未来が実現する日は近い。
知らなかったことを知っている、不思議な感覚。
私が受け入れた魂は、日中は常にコンピューターに向かって何かを探していた。たとえば世の中の状況を、さまざまな知識を、未来をどうやって見通すのかを。個人が気まぐれに視る未来ではなく、計算と裏付けによる客観的データに基づくシミュレーションだ。
頭の中で「根拠のない予言なんて信じてはいけない」という声が聞こえる。
予言は神の啓示ではなく、起こりえる可能性の一つを見ているにすぎない。全ての前提条件が満たされたときにだけ、予言は実現する。
私が新たに得た知識は、合理的で納得がいくものだった。もともと予言の不確実性に気づいていたので、自分なりの答えが得られた満足感もあった。
なのに、巫女である私が可能性を口にした途端、皆は考えることを放棄して無条件に信じてしまう。
予言を鵜呑みにして思考停止してはだめだ。起こりえる可能性を考慮した上で、起きないように努力することこそ重要なのだ。
未来を見通す力は魔力にはない。予言は定められた未来ではない。
なぜ、それに気が付かないのか。
ともあれ私は異世界の魔力で体内の時間を停止し、健康とは言えないまでも生きながらえた。
そしらぬ顔で「次代の皇帝は政略結婚ではなく、本人が好きになった相手を選ぶべき」と予言を装って進言もした。その結果、弟は幼馴染の令嬢と結ばれ、悲惨な未来も回避できた。
きっと私が生きている理由は、弟やその家族が幸せに笑っている姿を見るためだろう。そう思いつつ、平穏な毎日が過ぎていった。いつのまにか弟の息子が皇位を継ぎ、その息子も成人するまでになった。
皇位を退いた弟は、離宮で皇太后と過ごし、時折私のもとへ遊びに来てくれる。
予言を求めて訪れる人もほとんど来ない。私が望んだ、平和で幸せな日々だ。
ある夜、夢を通じて起こりえる未来を視た。久しぶりの未来視だ。
私の考えを理解する少女に出会い、この国の次代の巫女として跡を継いでほしいと願う光景だった。今回は、彼女の姿かたちまではっきりと見えた。自分の後継者を得られる可能性に、久々に気持ちが高揚した。
叶えたい。この未来は。
夢で見た光景を詳細に書き出し、実現するための条件を、そして裏付けとなるデータを探す。幸いキリル公国は大陸中から有能な魔術師が集まり、さまざまな情報が集まる。甥である皇帝の力を借りつつ各国から情報を求めた。
ついに、私が見た姿と同じ姿をした少女が隣国にいることを突き止めた。魔力を持ち完璧な造形を持つ美しい少女。しかも王家に連なる巫女姫の血脈。依代にはぴったりだ。
私は予言を実現するには、異世界からの召喚が不可避の条件だと考えるに至っていた。この世界しかしらない人間が、私のような考え方を持っているとは考えにくいからだ。
召喚をおこなうには、キリル公国に招く理由が必要になる。
どうやってこの国に招こうかと思案しているところで、千載一遇のチャンスが来た。孫のイヴァンが彼女を婚約者にしたいと議会に諮っているという情報を手に入れたからだ。あまりの偶然に、これこそ運命だと感じたほどだ。
奇しくも今年は10年に1度の召喚を行う年。依代の候補者はまだいない。
私は予言のオブラートに包み、神殿の長に伝える。
「第二皇子の婚約者に魔力を満たすため、召還を行うべし」と。
条件が揃った。
私の望む未来が実現する日は近い。
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