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本編
101 転回3
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アレクは尋問をしつつ、手はわたしの髪を、背中を、やさしく撫でる。初めは温かく気持ちがいい行為だったそれは、徐々に性的な感触を伴う行為になっていた。
くすぐるように、指が胸の先を何度も往復する。つつつ、と耳の後ろから首筋までなぞられる。アレクの指に触れられると、からだぜんぶが性感帯みたいになる。
快感に頭が飛びそうになりながら、かいつまんで馬車での出来事を説明した。
「へーえ、シアにじゃなくてイヴァンに媚薬ねえ。」
わたしの胸をぐりぐりと弄りながら、アレクが不思議そうにつぶやく。
「状況証拠だと神殿が限りなく疑わしいですね。異世界からの魔力を持つ人間は10年に1人しか獲得できないわけですし、自国で確保するためにもイヴァン殿下と早々に番わせようとしたのでは。殿下の人となりですと、一度関係を持った相手は大事にするはずですし。」
かちりと眼鏡を左手で直した後、私たちの行為をあえて見ないようにしながらセイが意見を述べた。
そうはいっても広くないこの部屋で、わたしたちの行為を見ないと言っても限度がある。セイは耳のあたりがほんのり赤らんでいる。それを知ってか知らずか(うそ、絶対気づいているはず)、アレクはわざと音を立ててわたしの首に吸い付いた。唐突に。
思わず「ひゃあっ・・・ん」と変な声が出た。
視線を逸らすセイが反応するのを面白がるように、アレクはおもむろにわたしのスカートの下に手を入れ、きわどい部分を撫で始めた。こんなところで、こんなことをされているのに、気持ちがいい。
わたしが何も言わないのをいいことに、行為は徐々にエスカレートしていく。下着越しの刺激がもどかしくて、腰がゆれる。
ついに下着の中に手を入れられて、さすがに相手の手首を握って拒絶した。
私が反撃したことに対して、「黙っているとイタズラされちゃうから気をつけてねー」と、にやにやと笑いながらアレクは言葉を続けた。
「まあさっきも言ったとおり、もう君とイヴァンの婚約は無効だよ。ちなみにノルド・ガレスの娘としては死亡扱いになっているけど、ゴドノフ卿の養女として、なんら不自由はないはずだから安心してね。」
「あの・・・セイは、それでよかったの?」
こちらを見ようとしないセイに視線を向け、さっき聞けなかったことを問う。愛した相手の戸籍──それはきっと彼女が存在している証拠、が消えてしまう。それはひどく残酷なことのように思えたから。
しかしセイは、感情を乱す様子もなく淡々と答えた。
「いいんです。何も思わないかと言われればもちろんそうではないですけれど、私は今のあなたが恙なく過ごせるほうがいい。これでイヴァン殿下との婚約が解消になるのであれば、良い選択だったと思っていますよ。」
表情からは、諦めたのか、受け入れたのかは窺えなかったが、ようやくわたしを見たセイは、迷いがない表情でふわりとほほ笑んだ。
アレクは、セイの答えを聞いて満足そうに笑みを浮かべた後、恐ろしい可能性を口にした。
「本当はね、今回私の寵姫を拉致した責任を取って主犯の首を寄越せとでも言おうと思ってたんだよねー。さすがにそれくらい言えばイヴァンもびっくりするかなと思って。」
「まあ近いことを皇帝宛の書状では書いていましたがね。」
ふたり共なんてことないように言うけど、首を寄越せって、きっとそのままの意味なんだよね。瞬時にグロテスクな姿を想像してしまった。冗談で済んでほしいけれど、この様子だと本当に言い出しかねない。不安を感じて顔を上げると、アレクは安心させるようにわたしの額にキスを落とし、よしよしと頭を撫でた。
「大丈夫だよー、いちおう本気ではないからね。それくらいの覚悟をしておけって話。」
「首とは言わないまでも、主犯者の身柄を差し出せないのは、かの方の弱さでしょうね。陛下なら私の首くらい迷わず差し出しますよね。」
「必要ならね。でもちゃんと事前に了解は取るつもりはあるから安心して。」
「そんな怖い話をしないで・・・!」
現代人はそんなに人の死が身近ではないのです。怖いじゃないか。
「でもねー。為政者たるもの、首を寄越せって言われたら、笑ってそれを受けた上で別の提案をするくらいできないと生き残れないと思うよ。でも、イヴァンはできない。根が、やさしすぎるんだよね。」
そこがいいところなんだけどさ、と言いながら、アレクはわたしのからだのあちこちにキスを落としはじめた。気分屋の王様は、この話題にはもう飽きてしまったようだった。
「ね、頭痛はどう? おさまった?」
まだ少し頭の芯が痛い気はするが、がんがんするのはおさまった。こくりと頷くと、アレクはおもむろにセイに命じた。
「ねえ、セイ。私は君がシアを愛しているところを見てみたい。どんなふうに抱くのか、やってみて。」
「──・・・は?」
さすがのセイも驚いたらしい。それ以上の言葉が出てこなかった。わたしの頭も一瞬フリーズする。だって、『やってみて』って、目の前でセイといちゃいちゃしろって言ってるわけですよね・・・?
「だって、ルーが帰ってきたらそんなことさせてくれないじゃん。帰ってくるまでだから、ね?」
目の前のアレクは、にこにこと、でも否定の言葉は許さないという表情でセイに行為を強請った。
くすぐるように、指が胸の先を何度も往復する。つつつ、と耳の後ろから首筋までなぞられる。アレクの指に触れられると、からだぜんぶが性感帯みたいになる。
快感に頭が飛びそうになりながら、かいつまんで馬車での出来事を説明した。
「へーえ、シアにじゃなくてイヴァンに媚薬ねえ。」
わたしの胸をぐりぐりと弄りながら、アレクが不思議そうにつぶやく。
「状況証拠だと神殿が限りなく疑わしいですね。異世界からの魔力を持つ人間は10年に1人しか獲得できないわけですし、自国で確保するためにもイヴァン殿下と早々に番わせようとしたのでは。殿下の人となりですと、一度関係を持った相手は大事にするはずですし。」
かちりと眼鏡を左手で直した後、私たちの行為をあえて見ないようにしながらセイが意見を述べた。
そうはいっても広くないこの部屋で、わたしたちの行為を見ないと言っても限度がある。セイは耳のあたりがほんのり赤らんでいる。それを知ってか知らずか(うそ、絶対気づいているはず)、アレクはわざと音を立ててわたしの首に吸い付いた。唐突に。
思わず「ひゃあっ・・・ん」と変な声が出た。
視線を逸らすセイが反応するのを面白がるように、アレクはおもむろにわたしのスカートの下に手を入れ、きわどい部分を撫で始めた。こんなところで、こんなことをされているのに、気持ちがいい。
わたしが何も言わないのをいいことに、行為は徐々にエスカレートしていく。下着越しの刺激がもどかしくて、腰がゆれる。
ついに下着の中に手を入れられて、さすがに相手の手首を握って拒絶した。
私が反撃したことに対して、「黙っているとイタズラされちゃうから気をつけてねー」と、にやにやと笑いながらアレクは言葉を続けた。
「まあさっきも言ったとおり、もう君とイヴァンの婚約は無効だよ。ちなみにノルド・ガレスの娘としては死亡扱いになっているけど、ゴドノフ卿の養女として、なんら不自由はないはずだから安心してね。」
「あの・・・セイは、それでよかったの?」
こちらを見ようとしないセイに視線を向け、さっき聞けなかったことを問う。愛した相手の戸籍──それはきっと彼女が存在している証拠、が消えてしまう。それはひどく残酷なことのように思えたから。
しかしセイは、感情を乱す様子もなく淡々と答えた。
「いいんです。何も思わないかと言われればもちろんそうではないですけれど、私は今のあなたが恙なく過ごせるほうがいい。これでイヴァン殿下との婚約が解消になるのであれば、良い選択だったと思っていますよ。」
表情からは、諦めたのか、受け入れたのかは窺えなかったが、ようやくわたしを見たセイは、迷いがない表情でふわりとほほ笑んだ。
アレクは、セイの答えを聞いて満足そうに笑みを浮かべた後、恐ろしい可能性を口にした。
「本当はね、今回私の寵姫を拉致した責任を取って主犯の首を寄越せとでも言おうと思ってたんだよねー。さすがにそれくらい言えばイヴァンもびっくりするかなと思って。」
「まあ近いことを皇帝宛の書状では書いていましたがね。」
ふたり共なんてことないように言うけど、首を寄越せって、きっとそのままの意味なんだよね。瞬時にグロテスクな姿を想像してしまった。冗談で済んでほしいけれど、この様子だと本当に言い出しかねない。不安を感じて顔を上げると、アレクは安心させるようにわたしの額にキスを落とし、よしよしと頭を撫でた。
「大丈夫だよー、いちおう本気ではないからね。それくらいの覚悟をしておけって話。」
「首とは言わないまでも、主犯者の身柄を差し出せないのは、かの方の弱さでしょうね。陛下なら私の首くらい迷わず差し出しますよね。」
「必要ならね。でもちゃんと事前に了解は取るつもりはあるから安心して。」
「そんな怖い話をしないで・・・!」
現代人はそんなに人の死が身近ではないのです。怖いじゃないか。
「でもねー。為政者たるもの、首を寄越せって言われたら、笑ってそれを受けた上で別の提案をするくらいできないと生き残れないと思うよ。でも、イヴァンはできない。根が、やさしすぎるんだよね。」
そこがいいところなんだけどさ、と言いながら、アレクはわたしのからだのあちこちにキスを落としはじめた。気分屋の王様は、この話題にはもう飽きてしまったようだった。
「ね、頭痛はどう? おさまった?」
まだ少し頭の芯が痛い気はするが、がんがんするのはおさまった。こくりと頷くと、アレクはおもむろにセイに命じた。
「ねえ、セイ。私は君がシアを愛しているところを見てみたい。どんなふうに抱くのか、やってみて。」
「──・・・は?」
さすがのセイも驚いたらしい。それ以上の言葉が出てこなかった。わたしの頭も一瞬フリーズする。だって、『やってみて』って、目の前でセイといちゃいちゃしろって言ってるわけですよね・・・?
「だって、ルーが帰ってきたらそんなことさせてくれないじゃん。帰ってくるまでだから、ね?」
目の前のアレクは、にこにこと、でも否定の言葉は許さないという表情でセイに行為を強請った。
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