不埒な魔術師がわたしに執着する件について~後ろ向きなわたしが異世界でみんなから溺愛されるお話

めるの

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本編

102 ヤヌスの望み1 【閑話・side ?】

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その、ひとつも窓がない薄暗がりの部屋では、複数の男女が睦みあっていた。ベッドに寝ころぶ者、床に直に座っている者、さまざまだが、いずれも互いにむき出しになった性器を弄り合い、腰を振り、意味のない嬌声を上げている。

汗と体液の匂いを紛らわすよう、息苦しいほど強く焚かれた香には、強い媚薬効果がある。そのお陰か、室内にいる裸の女達はみな恍惚とした表情で相手の男たちの陰茎をしゃぶった。

「んぅ・・・っ、んん」

「もっと根元までしっかりと咥えて」

指示されるまま、女たちは無我夢中で根元まで咥えつつ、片手で竿を支え唇で扱く。同時にもう片方の手は自身の秘部に添えられていて、ぐちゅぐちゅと自慰をする。

傍から見ると、気が狂っているとしか思えない光景だった。

「正気を疑うような光景ですね・・・。場末の娼館だってこうはいかないでしょうに。」

香の煙がこない風上で、呆れたように呟く男は、この場に似つかわしくないほどきっちりと服を着こんでいた。淫靡な場にはおよそ相応しくない装いだが、王宮仕えの人間としては当たり前の格好だ。

一方、会話の相手は素肌に白いガウンを1枚羽織っているだけで、ズボンも半ば脱げている。長い睫毛を伏せる様は、絵画から抜け出たように美しい。しどけない姿ではあるが男女の営みに加わる様子もなく、見事な金髪を少し揺らしながら男の言葉に気怠げに返事をした。

「この媚薬効果がある香は、調合に苦労したんだよねー。副作用もなく、ひたすら快楽を求めて腰を振る、しかもお手頃価格。最高じゃない?」

「一国の王とは思えない発言ですが、まあその通りですね。おかげで我が国の媚薬は他国の王侯貴族に大変な人気ですよ。収入増となってありがたい限りです。──ヴィクトル・アル・ヴァルルーシ陛下。」

そう言って男──宰相ミハイル・ゼレノイは、慇懃に一礼した。

「なんか嫌味っぽい言い方だなあ。いいじゃない、国庫が潤うのはいいことだよ。」

ヴィクトルは美しい顔を皮肉気に歪めながら、ミハイルへと顔を向けた。

「で? わざわざこんなところにまで来て、いったい何の用かな?」

要件は重々わかっているはずなのに、敢えて尋ねるヴィクトルの態度に苛立ったようにミハイルは早口で言った。

「いつまでこんなこと続けるんですか? 陛下の目論見通り『色に狂った愚王』という噂は王宮だけでなく、近隣諸国まで充分広まりましたよ! この前もアレクセイ殿下が私に陛下のことをお尋ねになって・・・まったくなんて答えればよかったのか。」

「かわいい我が息子は元気だった?親に似ず、まっすぐに育つといいけど。」

「うちの息子が傍についているんです、まっすぐいい子に育つに決まっています! かわいそうに、あちこちから自分の父親の色狂いの噂を聞かされて、責任を感じているようでしたよ。」

「あーあ、真面目な子だなあ。親の顔が見てみたいよねー。」

人を食ったようなヴィクトルの言葉に、ミハイルから溜息が漏れた。

宰相である自分が、わざわざ地下に作られた密室まで足を運んだのは他でもない。北方のエシクが国境沿いで数十名の領民を攫い、保護料と言う名の法外な身代金を要求してきた件だ。こう見えて風の魔力を自在に操る王は、国内外の情報収集に長けている。既に今回の件は耳に入っているはずだった。

「エシクからの要求の件はね、受けていいよ。」

意外なほどあっさり言われて、日頃冷静沈着と評される宰相の声は、知らず上擦った。

「そうはいっても・・・丸ごと要求を呑んだら相手は味を占めるのでは。」

「あんなの、どうせ攻め込む口実が欲しいだけでしょ。断ったら嬉々として攻め込まれるだけ。それは今は避けたい。」

「ですが・・・!」

「だから国王名義の手紙をね、出してみようか。大事な民のため、身代金は言い値で支払う用意があります。でもよろしければ、どんな貞淑な王妃でも一瞬でよがり狂わせる秘伝の媚薬でも、完璧に痕跡を残さず殺害する毒薬でも、王が望むほうを差し上げます、いかがですかって。」

「果たして強欲なエシクがそんな提案を呑むでしょうか。」

「エシクの先王の死因は毒殺、おそらく現王が犯人だ。だから『断ったらあなたの食事に聖ルーシ特製の毒薬が入っているかも』って匂わせるのが大事。政敵の名前をさりげなく挙げるとかね。だいたい人のことを毒殺するような人間なんて、自分も同じように毒殺されるんじゃないかって疑うもんだよ。だから、うまーく書いておいてね。」

「媚薬は単に自信作だからおすすめしたいんだけどさ」と付け加えてから、ヴィクトルは笑みを浮かべた。
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