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本編
124 満たされる
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焦らされて、焦らされて、もう、からだがおかしくなりそうなくらい手と口で愛撫された。
胸が好きなアレクはいつものようにわたしの両胸を交互に揉みしだき、しゃぶり、時折噛んで刺激を与える。それだけでびりりと快感が襲う。
さらにくちくちと念入りに膣口を刺激され、ぞわぞわとする感覚が止まらない。いつもならば頃合いを見て挿入してくれるのに、なぜか今夜はいつまでもそのままなのだ。
(焦らさないで、気持ちよくして)
わかってほしくて目で訴えても、アレクは恐ろしく妖艶な顔で曖昧な笑みを浮かべるばかり。
絶対わかっているはずなのに。触れられた箇所の気持ちよさと奥にほしいもどかしさで意識が朦朧とする。
泣きそうなわたしの表情を見て、アレクの口の端が上がった。
「ごめんね、焦らして。君の、その、泣きそうな顔がたまらなくて。」
アレクは少しも悪びれていない顔をして短く告げると、躊躇なく硬くなったモノでわたしのナカを一気に貫いた。
「やっ・・・うぁあああっ・・んっ」
挿入された瞬間、ちかちかと目の前に星が舞う。身体全体の力が抜けた。
ずちゅ、ずちゅ、と卑猥な音と共に突き上げられる。揺さぶられるまま、されるがままに、たぷたぷと胸が揺れた。
「はは、やっぱり最高。きゅうきゅう締め付けてくる。搾り取られそう。」
そう言って、抜けるぎりぎりのところまで陰茎を抜いてから、勢いよく押し込まれる。それが二度、三度と繰り返されると、それだけで気が遠くなりそうだ。
「ああっ・・・・!」
嬌声が上がるが、自分の声じゃないみたいだと他人事みたいに思った。
「もっと、もっと・・・・もっとだよ」
吐息交じり。色気が籠もる声に、下腹部がずくりと反応する。
アレクは箍が外れたかのように一心不乱で腰を振る。気持ちよすぎて目が回る。
「身体から篭絡される」という表現があるけど、まさに今のわたしはそうに違いない。アレクから与えられる行為は時に際どくも甘美で、抜け出せなくなるほどに気持ちがいい。
先ほど垣間見た怒りの感情は、今は見る影もない。怒鳴った顔も、途方に暮れたような表情も。目の前の相手から感じられるのは、ただ、愛情と情欲のみ。
何もかも遠くなり、わたしは行為中にもかかわらず、不用意に意識を手放した。
・・・・・気が付けば、朝だった。
「あ、目が覚めた? 昨日はごめんね」
そう言って空色の瞳が細められ、キスを落とされる。まるで昨日の出来事が全て夢だと錯覚するほどに穏やかな表情だ。
「身体は清めてあるけど、お風呂入りたかったら用意させるよ。それとも何か飲む?」
こくりと頷くと、すぐに冷えた水を持ってきてくれた。王様なのに他人に対して気遣いができるのってよく考えるとすごいと思う。ありがたくグラスに口をつける。
いつもならば朝から忙しいアレクは一緒に過ごすことはない。早朝というわけでもなさそうだし不思議な気持ちで眺めていると、私の視線に気づいたのか、アレクは振り返って笑った。
「なんと! 今日は一日お休みをもらったんだよ。だから一緒にいよう?」
にこにこと無邪気な笑顔は、人前ではほとんど見せない素の表情だ。休日をもらったことを自慢げに発表する様が、なんだか可愛く見えて笑ってしまった。
「今日はふたりっきりだからね?」
ね、と念押しするように重ねて言う。よっぽどうれしいのだろう。
わたしにはアレクと父親との関係も、狂ったふりをしていたという事実も、よく理解できていない。それでも時折本人や周りの人間から語られる元国王の振舞いから何となくの状況は把握していたし、アレク本人の中で長い間葛藤があったのは昨日の会話から窺い知れた。
──それが、後ろ盾にしていた正義が紛い物だと知ったときの衝撃は如何ばかりだったろうか。
わたしは彼の顔をまじまじと見つめる。
今朝、こうやって笑うことができているのは、きっと彼の中で何らかの答えを得たからだと信じたい。
過ぎた過去は戻らないというけれども、たった一度の出来事がすべてではない。きっと彼の心の傷は一生残るけれども、少しずつ失ったものを取り戻していければいいと思う。
(終わりじゃない、生きていれば)
それから、ゆっくりと朝ご飯を食べて、たわいのない話をした。城内の書庫でさまざまな本を見せてもらった。ゼレノイ卿の話を聞いてすごく気になっていることがあったから、魔術書を物色した。ルーがいればよかったのだけれども、今日は仕方がない。
午後は、アレクの私室へお邪魔した。部屋でアレクは仕事の書類を処理して、わたしは隣で読書をした。早めに仕事を終わらせてくれたので、ゆっくりと回廊を歩きながら後宮まで戻った。
ごくごく普通の一日。デートと言えるほどの特別感はなかったけれど、共に過ごした時間は、わたしにとってとても素晴らしいものだった。
「そのうちに、セイとルーと一緒に過ごそうか。」
一緒に、というのは夜を共に過ごす意味で間違いないだろう。複数の男性との行為に当初は戸惑ったものの、今となっては忌避感がほとんどないことに自分でも驚く。
いろいろなことがあった。自分が常識だと思っていたことが、他所では非常識だということも思い知った。もちろんその逆も。いろいろなことを知ったし、学んだと思う。異なる世界を受け入れることの難しさも知ったが、代わりに今まででは得られなかったような倖せな時間を手に入れた。
たとえ、これがすべて夢だったとしても、目が覚めたら元の世界だったとしても、わたしはきっと満足だ。
胸が好きなアレクはいつものようにわたしの両胸を交互に揉みしだき、しゃぶり、時折噛んで刺激を与える。それだけでびりりと快感が襲う。
さらにくちくちと念入りに膣口を刺激され、ぞわぞわとする感覚が止まらない。いつもならば頃合いを見て挿入してくれるのに、なぜか今夜はいつまでもそのままなのだ。
(焦らさないで、気持ちよくして)
わかってほしくて目で訴えても、アレクは恐ろしく妖艶な顔で曖昧な笑みを浮かべるばかり。
絶対わかっているはずなのに。触れられた箇所の気持ちよさと奥にほしいもどかしさで意識が朦朧とする。
泣きそうなわたしの表情を見て、アレクの口の端が上がった。
「ごめんね、焦らして。君の、その、泣きそうな顔がたまらなくて。」
アレクは少しも悪びれていない顔をして短く告げると、躊躇なく硬くなったモノでわたしのナカを一気に貫いた。
「やっ・・・うぁあああっ・・んっ」
挿入された瞬間、ちかちかと目の前に星が舞う。身体全体の力が抜けた。
ずちゅ、ずちゅ、と卑猥な音と共に突き上げられる。揺さぶられるまま、されるがままに、たぷたぷと胸が揺れた。
「はは、やっぱり最高。きゅうきゅう締め付けてくる。搾り取られそう。」
そう言って、抜けるぎりぎりのところまで陰茎を抜いてから、勢いよく押し込まれる。それが二度、三度と繰り返されると、それだけで気が遠くなりそうだ。
「ああっ・・・・!」
嬌声が上がるが、自分の声じゃないみたいだと他人事みたいに思った。
「もっと、もっと・・・・もっとだよ」
吐息交じり。色気が籠もる声に、下腹部がずくりと反応する。
アレクは箍が外れたかのように一心不乱で腰を振る。気持ちよすぎて目が回る。
「身体から篭絡される」という表現があるけど、まさに今のわたしはそうに違いない。アレクから与えられる行為は時に際どくも甘美で、抜け出せなくなるほどに気持ちがいい。
先ほど垣間見た怒りの感情は、今は見る影もない。怒鳴った顔も、途方に暮れたような表情も。目の前の相手から感じられるのは、ただ、愛情と情欲のみ。
何もかも遠くなり、わたしは行為中にもかかわらず、不用意に意識を手放した。
・・・・・気が付けば、朝だった。
「あ、目が覚めた? 昨日はごめんね」
そう言って空色の瞳が細められ、キスを落とされる。まるで昨日の出来事が全て夢だと錯覚するほどに穏やかな表情だ。
「身体は清めてあるけど、お風呂入りたかったら用意させるよ。それとも何か飲む?」
こくりと頷くと、すぐに冷えた水を持ってきてくれた。王様なのに他人に対して気遣いができるのってよく考えるとすごいと思う。ありがたくグラスに口をつける。
いつもならば朝から忙しいアレクは一緒に過ごすことはない。早朝というわけでもなさそうだし不思議な気持ちで眺めていると、私の視線に気づいたのか、アレクは振り返って笑った。
「なんと! 今日は一日お休みをもらったんだよ。だから一緒にいよう?」
にこにこと無邪気な笑顔は、人前ではほとんど見せない素の表情だ。休日をもらったことを自慢げに発表する様が、なんだか可愛く見えて笑ってしまった。
「今日はふたりっきりだからね?」
ね、と念押しするように重ねて言う。よっぽどうれしいのだろう。
わたしにはアレクと父親との関係も、狂ったふりをしていたという事実も、よく理解できていない。それでも時折本人や周りの人間から語られる元国王の振舞いから何となくの状況は把握していたし、アレク本人の中で長い間葛藤があったのは昨日の会話から窺い知れた。
──それが、後ろ盾にしていた正義が紛い物だと知ったときの衝撃は如何ばかりだったろうか。
わたしは彼の顔をまじまじと見つめる。
今朝、こうやって笑うことができているのは、きっと彼の中で何らかの答えを得たからだと信じたい。
過ぎた過去は戻らないというけれども、たった一度の出来事がすべてではない。きっと彼の心の傷は一生残るけれども、少しずつ失ったものを取り戻していければいいと思う。
(終わりじゃない、生きていれば)
それから、ゆっくりと朝ご飯を食べて、たわいのない話をした。城内の書庫でさまざまな本を見せてもらった。ゼレノイ卿の話を聞いてすごく気になっていることがあったから、魔術書を物色した。ルーがいればよかったのだけれども、今日は仕方がない。
午後は、アレクの私室へお邪魔した。部屋でアレクは仕事の書類を処理して、わたしは隣で読書をした。早めに仕事を終わらせてくれたので、ゆっくりと回廊を歩きながら後宮まで戻った。
ごくごく普通の一日。デートと言えるほどの特別感はなかったけれど、共に過ごした時間は、わたしにとってとても素晴らしいものだった。
「そのうちに、セイとルーと一緒に過ごそうか。」
一緒に、というのは夜を共に過ごす意味で間違いないだろう。複数の男性との行為に当初は戸惑ったものの、今となっては忌避感がほとんどないことに自分でも驚く。
いろいろなことがあった。自分が常識だと思っていたことが、他所では非常識だということも思い知った。もちろんその逆も。いろいろなことを知ったし、学んだと思う。異なる世界を受け入れることの難しさも知ったが、代わりに今まででは得られなかったような倖せな時間を手に入れた。
たとえ、これがすべて夢だったとしても、目が覚めたら元の世界だったとしても、わたしはきっと満足だ。
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