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閑話休題
《京北台高校一年生。船寺浩二の独白》
ここ、京北台高校の校門は、まるで刑務所のような重たく分厚い鉄扉だ。
入学式の前日、重たい荷物を抱えてその門を潜ったオレは、憂鬱に受付に足を進めていた。
船寺浩二。オレは、今日、この高校に入学する。
外に出るのに外出許可が必要なだけでなく、一番近いコンビニすら徒歩二十分だなんて、囚人のような生活に気が重たくなる。
校門をくぐってくるのはオレだけじゃない。新一年生が次々に入ってくる。が、当然ながら全員が男だ。
顔中がニキビ面の男、潰れた鼻と小さな目の男、エラと頬骨の張った釣り目の男、あだ名を付けるとしたら「バカ」としか付けられないような間抜け面の男。
せめて共学なら全寮制にも夢があるのに、汗臭い現実に眩暈がしてくる。
「受付に並べー!」
これまた汗臭い、筋骨隆々とした男性教師に促されて、二列になった新入生の列に並んだ。
俺の隣に居たのは随分と小柄な男だった。
成長を見越して大きめのサイズを買ったのだろうか。学ランが萌え袖になってる。
学ランの萌え袖なんてどこの世界に需要があるんだ。きめえ。
なんて心の中で罵りつつ、顔を見てやろうと横を向いた。
女の子が居た。
小さな顔、長い睫、ピンクのほっぺた、艶やかな唇。
へ?
なんで女が学ラン着てんの? つかここ男子校だぞ?
あれか。女子が男装して男子校に入るってエロ本みたいな展開か?
なんて呆然としていると、その女の子が顔を上げた。
びっくりするぐらいに可愛かった。
ピューラーを使ってるのか、くるんと上がった睫も長かったけど下睫もはっきりわかるぐらいに長い。
女の子は、目を細め甘えた表情で俺に微笑みかけてきた。
少し開いた口から覗いた舌がエロくて、つきん、と下半身が疼く。
「こんにちは」
甘い、声。
「あ、うん」
こんな可愛い子と話すなんて生まれて始めてで、顔が真っ赤になってしまう。
「……暑い? 上着脱ぐなら荷物持っとこうか?」
女の子は赤くなったのを気温のせいだと勘違いしたようだ。小さな掌を伸ばしてきた。
掌というか、萌え袖に隠れて指先だけが覗いていたんだけど。
「いい、いや、その、大丈夫」
「そう? 僕、羽鳥夏樹っていいます。よろしく」
「お、俺は、船寺浩二。こっちこそよろしく……」
何で女の子がここにいるんだ? そう聞こうとしつつも、いい加減に気が付いた。どこからどう見ても女なのに、こいつ、男だって。
胸無いし。名前、夏樹だし。
宝石みたいな澄んだ瞳が俺をじっと見上げてくる。
唇が、小さな歯が、ほんとエロイ。口の中に指をねじ込んでやりたい。多分こいつ非力だ。俺一人でも押さえつけられる。
「船寺君は……どこから来たの?」
羽鳥の声色が変わった。
誘うみたいな、怪しい響き。
やべ、これ絶対、俺がエロイ妄想したのに気が付かれた。
表情も、見ているだけで腰が砕けそうなぐらいに怪しくて。
やべえ、まじで勃つって。
背負っていたバッグを両手で抱えなおす。下半身を隠すために。
なんだこいつ。なんで俺を誘惑しようとしてくるんだ!?
俺に一目惚れ!?
や、そりゃ、カッコいいって言われてきたし、彼女だってこれまでに何人も居たし、まぁぶっちゃけ、今ここに居る男達の中で一番カッコいいって自信はあるけど、さすがに男は、いや、でもこいつなら、全然いける。
リードを取られんのは悔しいからなんとか俺のペースに乗せないと。
「俺のことそんな知りたい? 聞きたい?」
焦らしてやる戦法だ。これで、流れを変えてやる。
羽鳥は、あはは、って笑って言った。
「うん。すっごく――知りたいなぁ」
じっと目を覗き込んでいた瞳が瞼で細められ、唇が弧を描いて。
とうとう完全に勃起した俺はバッグを抱いてその場にしゃがみ込むことしかできなかった。
「ふ、船寺君? 具合悪い? 大丈夫?」
羽鳥がわざとらしく俺を心配してくる。
横にしゃがみ込んだ羽鳥から、ふわりと甘い香りが漂ってきて俺の脳を焼いた。
「先生を呼ぼうか?」
「いい!」
完全に手玉に取られたのが悔しくて語尾が荒くなってしまう。
「そう? ほんとに大丈夫?」
握っただけでも折れそうな細い指が俺の肩に乗って、二の腕までを撫でて行く。
指の感触に益々興奮して背筋が震えた。
くそ、こいつ、どれだけ男に慣れてんだ!?
絶対、こいつ、男相手にエンコーとかしまくってるぞ。
元彼は三桁台だ。そこらの女じゃ太刀打ちできないぐらい男を食い撒くって来たに違いない。
全寮制の男子校に入ったのだって男漁りのためだろ絶対。セックス依存症って奴だな、うん。
ここに入ったのだって、姫扱いされるためだろ!
――悔しいけど姫扱いしたい。一回でもいいからこいつに突っ込みたい!!
いや、この様子なら一回どころじゃなく、毎晩でも跨ってくれるかも。
なんて願ってたけど、どうやら、俺はお姫様の眼鏡にはかなわなかったらしい。
姫は、企業グループの後継ぎでこの学校で最強の男を落としにかかっていた。
その男、八鬼白夜は完全にノーマルで、羽鳥を拒絶していたそうだが、羽鳥に落ちるまで二週間もかからなかったそうだ。
それが、俺の知る噂の全てだ。
《船寺浩二の独白、終了》
入学式の前日、重たい荷物を抱えてその門を潜ったオレは、憂鬱に受付に足を進めていた。
船寺浩二。オレは、今日、この高校に入学する。
外に出るのに外出許可が必要なだけでなく、一番近いコンビニすら徒歩二十分だなんて、囚人のような生活に気が重たくなる。
校門をくぐってくるのはオレだけじゃない。新一年生が次々に入ってくる。が、当然ながら全員が男だ。
顔中がニキビ面の男、潰れた鼻と小さな目の男、エラと頬骨の張った釣り目の男、あだ名を付けるとしたら「バカ」としか付けられないような間抜け面の男。
せめて共学なら全寮制にも夢があるのに、汗臭い現実に眩暈がしてくる。
「受付に並べー!」
これまた汗臭い、筋骨隆々とした男性教師に促されて、二列になった新入生の列に並んだ。
俺の隣に居たのは随分と小柄な男だった。
成長を見越して大きめのサイズを買ったのだろうか。学ランが萌え袖になってる。
学ランの萌え袖なんてどこの世界に需要があるんだ。きめえ。
なんて心の中で罵りつつ、顔を見てやろうと横を向いた。
女の子が居た。
小さな顔、長い睫、ピンクのほっぺた、艶やかな唇。
へ?
なんで女が学ラン着てんの? つかここ男子校だぞ?
あれか。女子が男装して男子校に入るってエロ本みたいな展開か?
なんて呆然としていると、その女の子が顔を上げた。
びっくりするぐらいに可愛かった。
ピューラーを使ってるのか、くるんと上がった睫も長かったけど下睫もはっきりわかるぐらいに長い。
女の子は、目を細め甘えた表情で俺に微笑みかけてきた。
少し開いた口から覗いた舌がエロくて、つきん、と下半身が疼く。
「こんにちは」
甘い、声。
「あ、うん」
こんな可愛い子と話すなんて生まれて始めてで、顔が真っ赤になってしまう。
「……暑い? 上着脱ぐなら荷物持っとこうか?」
女の子は赤くなったのを気温のせいだと勘違いしたようだ。小さな掌を伸ばしてきた。
掌というか、萌え袖に隠れて指先だけが覗いていたんだけど。
「いい、いや、その、大丈夫」
「そう? 僕、羽鳥夏樹っていいます。よろしく」
「お、俺は、船寺浩二。こっちこそよろしく……」
何で女の子がここにいるんだ? そう聞こうとしつつも、いい加減に気が付いた。どこからどう見ても女なのに、こいつ、男だって。
胸無いし。名前、夏樹だし。
宝石みたいな澄んだ瞳が俺をじっと見上げてくる。
唇が、小さな歯が、ほんとエロイ。口の中に指をねじ込んでやりたい。多分こいつ非力だ。俺一人でも押さえつけられる。
「船寺君は……どこから来たの?」
羽鳥の声色が変わった。
誘うみたいな、怪しい響き。
やべ、これ絶対、俺がエロイ妄想したのに気が付かれた。
表情も、見ているだけで腰が砕けそうなぐらいに怪しくて。
やべえ、まじで勃つって。
背負っていたバッグを両手で抱えなおす。下半身を隠すために。
なんだこいつ。なんで俺を誘惑しようとしてくるんだ!?
俺に一目惚れ!?
や、そりゃ、カッコいいって言われてきたし、彼女だってこれまでに何人も居たし、まぁぶっちゃけ、今ここに居る男達の中で一番カッコいいって自信はあるけど、さすがに男は、いや、でもこいつなら、全然いける。
リードを取られんのは悔しいからなんとか俺のペースに乗せないと。
「俺のことそんな知りたい? 聞きたい?」
焦らしてやる戦法だ。これで、流れを変えてやる。
羽鳥は、あはは、って笑って言った。
「うん。すっごく――知りたいなぁ」
じっと目を覗き込んでいた瞳が瞼で細められ、唇が弧を描いて。
とうとう完全に勃起した俺はバッグを抱いてその場にしゃがみ込むことしかできなかった。
「ふ、船寺君? 具合悪い? 大丈夫?」
羽鳥がわざとらしく俺を心配してくる。
横にしゃがみ込んだ羽鳥から、ふわりと甘い香りが漂ってきて俺の脳を焼いた。
「先生を呼ぼうか?」
「いい!」
完全に手玉に取られたのが悔しくて語尾が荒くなってしまう。
「そう? ほんとに大丈夫?」
握っただけでも折れそうな細い指が俺の肩に乗って、二の腕までを撫でて行く。
指の感触に益々興奮して背筋が震えた。
くそ、こいつ、どれだけ男に慣れてんだ!?
絶対、こいつ、男相手にエンコーとかしまくってるぞ。
元彼は三桁台だ。そこらの女じゃ太刀打ちできないぐらい男を食い撒くって来たに違いない。
全寮制の男子校に入ったのだって男漁りのためだろ絶対。セックス依存症って奴だな、うん。
ここに入ったのだって、姫扱いされるためだろ!
――悔しいけど姫扱いしたい。一回でもいいからこいつに突っ込みたい!!
いや、この様子なら一回どころじゃなく、毎晩でも跨ってくれるかも。
なんて願ってたけど、どうやら、俺はお姫様の眼鏡にはかなわなかったらしい。
姫は、企業グループの後継ぎでこの学校で最強の男を落としにかかっていた。
その男、八鬼白夜は完全にノーマルで、羽鳥を拒絶していたそうだが、羽鳥に落ちるまで二週間もかからなかったそうだ。
それが、俺の知る噂の全てだ。
《船寺浩二の独白、終了》
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