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<ただ、幸せなだけの日常>
ほっと息をついた
「全然つりあわなくてごめん。年に一回の誕生日なのに、八鬼が買ってくれた日用品の値段すら越えられないなんて」
恐ろしいぐらいの埋められない格差に背筋が冷たくなった。
自分が情け無くて唇が震える。慌てて手の甲で唇を隠すけど、指先まで震えていた。
「ちょっと、そこまでショック受けなくてもいいじゃない」
「つーか、釣り合ってないのは夏樹ちゃんじゃなくって八鬼の方だって。噛み付いて怪我をさせるようなクズ男なんか振っちゃえよー。あ、そだ。お小遣いもらえないなら八鬼に貰えばいいじゃん。こいつ、自分で金稼いでるからさー」
薫君が慰めてくれて、西園寺君が茶化して冗談に変えてくれようとした。
僕も笑って答えないといけないのに、体からショックが抜けてくれない。喋ろうと口を開いたら、は、って呼吸が漏れて、涙が溢れそうになった。
「ぐあ!」
「ぎゃ」
八鬼の蹴りが西園寺君の胸に入った。西園寺君は隣の席の椅子まで巻き込んで床に倒れる。
続けざまにテーブルを蹴り上げて薫君に叩き付けると、僕の手を掴んで歩き出した。
「八鬼……!? な、何してるんだよ!!」
「来い」
八鬼はやっぱり凶暴だ。何も悪い事してない小学校からの友達に、平気で蹴りを入れたりテーブルを叩き付けるなんて。
でも、ここから連れ出して貰えるのはちょっとだけありがたい。人前で泣き顔を見せる羽目になる所だったから。
部屋に戻るまでに、どうにか涙を引っ込めた。
今度こそ笑ってドアを閉めてから八鬼の背中に抱きつく。
「誕生日プレゼント……大した物は何もプレゼントできないから、今日一日何でも言うこと聞くよ」
「あ?」
八鬼が振り返らないように強く抱きついて、服に顔を埋めて言う。
「掃除でも洗濯でも宿題でも――――き、昨日の夜に、したことでも、何でもいいよ。今度は、失神しないように、するから」
「…………」
お腹に回した僕の掌を、一回り以上大きな掌がトンと叩いた。
「震えながら言うな。怖いんだろうが」
――――!!
「手まで冷たくなってるじゃねーか。馬鹿が」
怖がっているのを見抜かれてしまった。
どうしてよりによって、こんな時に鋭くなるんだろう。
前みたいに滅茶苦茶にしてくれていいのに。
そんなことぐらいしか僕にはできないのに。
何もあげられるものが無いのに。
肩が抜けそうなぐらい乱暴に腕を引っ張られて、八鬼の胸に抱き締められた。
それこそ息もできないぐらいにきつく。
「どうせなら、お前が発情した時に誘えよ。丸一日でも突っ込みっぱなしでいてやるから」
な!?
「そ、そんなことされたら絶対死ぬよ……! 体力が持たない……!」
顔を胸に押し付けられているのでくぐもった声になる僕に八鬼が低く笑う。
「お前は俺のモンなんだから余計な気を回すんじゃねえ。自分の持ち物から物を貰うなんて変だろうが」
「でも……八鬼は、僕に三万円も……」
僕の為に用意されたのはコンディショナーだけじゃない。それこそ、冷蔵庫だって、アイスだって。
「ウゼーな。お前に似合いそうな匂いだから買ったってだけだ。俺が気に入って買った物に、うだうだ余計な事考えんな」
いかにも暴君らしい台詞に、なんだかおかしくなって笑ってしまった。
「やっと笑ったな」
八鬼がほっと息をついた。
恐ろしいぐらいの埋められない格差に背筋が冷たくなった。
自分が情け無くて唇が震える。慌てて手の甲で唇を隠すけど、指先まで震えていた。
「ちょっと、そこまでショック受けなくてもいいじゃない」
「つーか、釣り合ってないのは夏樹ちゃんじゃなくって八鬼の方だって。噛み付いて怪我をさせるようなクズ男なんか振っちゃえよー。あ、そだ。お小遣いもらえないなら八鬼に貰えばいいじゃん。こいつ、自分で金稼いでるからさー」
薫君が慰めてくれて、西園寺君が茶化して冗談に変えてくれようとした。
僕も笑って答えないといけないのに、体からショックが抜けてくれない。喋ろうと口を開いたら、は、って呼吸が漏れて、涙が溢れそうになった。
「ぐあ!」
「ぎゃ」
八鬼の蹴りが西園寺君の胸に入った。西園寺君は隣の席の椅子まで巻き込んで床に倒れる。
続けざまにテーブルを蹴り上げて薫君に叩き付けると、僕の手を掴んで歩き出した。
「八鬼……!? な、何してるんだよ!!」
「来い」
八鬼はやっぱり凶暴だ。何も悪い事してない小学校からの友達に、平気で蹴りを入れたりテーブルを叩き付けるなんて。
でも、ここから連れ出して貰えるのはちょっとだけありがたい。人前で泣き顔を見せる羽目になる所だったから。
部屋に戻るまでに、どうにか涙を引っ込めた。
今度こそ笑ってドアを閉めてから八鬼の背中に抱きつく。
「誕生日プレゼント……大した物は何もプレゼントできないから、今日一日何でも言うこと聞くよ」
「あ?」
八鬼が振り返らないように強く抱きついて、服に顔を埋めて言う。
「掃除でも洗濯でも宿題でも――――き、昨日の夜に、したことでも、何でもいいよ。今度は、失神しないように、するから」
「…………」
お腹に回した僕の掌を、一回り以上大きな掌がトンと叩いた。
「震えながら言うな。怖いんだろうが」
――――!!
「手まで冷たくなってるじゃねーか。馬鹿が」
怖がっているのを見抜かれてしまった。
どうしてよりによって、こんな時に鋭くなるんだろう。
前みたいに滅茶苦茶にしてくれていいのに。
そんなことぐらいしか僕にはできないのに。
何もあげられるものが無いのに。
肩が抜けそうなぐらい乱暴に腕を引っ張られて、八鬼の胸に抱き締められた。
それこそ息もできないぐらいにきつく。
「どうせなら、お前が発情した時に誘えよ。丸一日でも突っ込みっぱなしでいてやるから」
な!?
「そ、そんなことされたら絶対死ぬよ……! 体力が持たない……!」
顔を胸に押し付けられているのでくぐもった声になる僕に八鬼が低く笑う。
「お前は俺のモンなんだから余計な気を回すんじゃねえ。自分の持ち物から物を貰うなんて変だろうが」
「でも……八鬼は、僕に三万円も……」
僕の為に用意されたのはコンディショナーだけじゃない。それこそ、冷蔵庫だって、アイスだって。
「ウゼーな。お前に似合いそうな匂いだから買ったってだけだ。俺が気に入って買った物に、うだうだ余計な事考えんな」
いかにも暴君らしい台詞に、なんだかおかしくなって笑ってしまった。
「やっと笑ったな」
八鬼がほっと息をついた。
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