僕は美女だったらしい

寺蔵

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<ただ、幸せなだけの日常>

そんな顔してない!!(1)

 ご飯が済むと、八鬼はまた個室に篭ってしまった。
 テレビは面白いのやってないし、ゲームをする気にもなれない。

 暇だなー。
 ひーまー。

 あ、そうだ。図書館に行こう。

 ここ、京北台高校には図書室じゃなく図書館がある。

 歴史の長い学校だけあって学校に寄付された本の数が膨大なので、有名なレンタル企業と提携して運営しているのだ。
 カフェと有料DVDやCDのレンタルスペースを併設した一大施設である。

 この学校は塀で囲まれている。
 だけどその図書館だけは道路側に通路状の入り口が伸びてて、一般客も自由に出入りが出来る。

 図書館の事を知った時は、こんな山の中に借りに来る人なんているんだろうか?って不思議だったんだけど、バスの停留所が目の前だし駐車場も充実しているので意外と人は多かった。道路が近くの街と街を繋ぐバイパスのせいかもしれないけど。

 うーん、手首にまでキスマークがあるなぁ。
 ちょっと暑いけど長袖と長ズボンにしよう。

 服を着てから念の為に洗面所の鏡で身だしなみをチェックする。

 うーん。

 首筋にもしっかり付いてるなぁ。四個もあるぞ

 でも……問題は無いかな?

 キスマークって、CDのパッケージなんかでみるような唇の形がくっきりしたものだって思ってた。
 実際のそれは痣に近い鬱血痕だ。
 普通に痛そうにしか見えない。それか虫刺され。

 誰もこれがキスマークだなんて思わないだろう。

 気にする必要はないか。

 何を借りようかな? 図書館にはマンガ本もあるんだよなー。

 階段を降りてコミュニケーションルームを横切る。

「あ、羽鳥」

 前から歩いてきた二人連れの片方に名前を呼ばれた。クラスメイトの野山君だ。
 僕と視線があった途端に、顔が真っ赤になった。

 なんだ?

 キスマークがばれた……ってわけでは無さそうだ。僕の目から視線を動かして無い。

「どうかした?」
「あ、いや、べつに、その、一人?」
「うん」
「珍しいな。いつもは、その」

 珍しいかな? 結構一人だけどな。八鬼のせいで友達出来ないから。
 あ、そっか。いつもは八鬼といることが多いんだ。

「どっか行くのか?」

 横に居た人が尋ねてきた。
 こっちもクラスメイトだ。やっぱり顔が赤い。

「暇だから図書館に行こうと思って」
「八鬼君と一緒じゃねーの?」
「うん」

 ……。

 会話が終わったみたいなんで、「じゃ」って挨拶して玄関に向かった。
 校庭を横切り生徒専用の入り口から図書館内に入る。

 残念ながら漫画は残ってなかった。

 なら、今日はミステリー小説にしようっと。

 ……。

 やっぱり、視線を感じるな……。

 横を見ると、二十代後半ぐらいの小太りの男の人が慌てたみたいに僕から視線を逸らした。
 逆方向を見る。
 今度は大学生っぽい二人連れの男性だ。
 目が合った途端に、僕を指差してなにやらヒソヒソ話を始めた。嫌な感じだ。

 キスマークのせいなのかな。
 虫刺されって思えるのは僕だけで、皆これがキスマークだって一発で判っちゃうのかな。

 そうだったらどうしよう。

 でもよく考えれば、僕でさえ知ってるぐらいなんだ。
 僕より年上の人たちが知っているのは当然なのかも。

 ……恥ずかしくなってきた。
 さっさと借りて部屋に戻ろう。

 なんでもいい。適当に本を手に取ろうとしたんだけど――大学生二人組みがこちらに向かって歩き出した。
 やっぱり、ニヤニヤと笑いながら。

 咄嗟に本を押し戻して図書館から逃げ出してしまった。


 あの二人組みが何を言おうとしていたのかは推測が付く。
 「キスマークついてますよ」って教えてくれようとしたんだろう。
 そんな指摘されたら恥ずかしさでショック死するよ。

 見えるところに付けるなって八鬼に文句言わないと。


 せっかく図書館までに行ったのに恥をかいただけだなんて。
 うな垂れて寮の玄関を開く。

 その途端――――。

「夏樹!!」
「うわ!? なな何!?」

 八鬼に怒鳴られてびくっとしてしまった。
 びっくりした! 後ろには薫君も一緒だ。

「この馬鹿が……!! 来い!」

 靴を靴箱に入れるのもそこそこに引っ張られる。

「ど、どうしたんだよ八鬼……? 怒ってる?」
「たりめーだろうが!」

 む。

「怒りたいのは僕の方だよ。八鬼が付けたコレのせいで変な目で見られたんだから……」

 八鬼の理不尽な怒りに納得できなくて先を歩く背中を睨みつける。

「そうじゃないわよ夏樹ちゃん」
 答えてくれたのは薫君だ。そうじゃないってどういう意味?

 部屋に入ると八鬼は僕をベッドにぽんと投げた。

「な……!?」
 上着とズボンを剥ぎ取られてしまう。

「ちょ……!?」
 薫君も居るのに簡単に下着姿にされてしまい慌てる。そんな僕の頭に、ばさっと大きな服が掛けられた。八鬼の上着だ。

 どうやらこれを着ろってことのようだ。
 二周りも大きい服を来て、ベッドの上に正座する。
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