僕は美女だったらしい

寺蔵

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もうすぐ夏休み

八鬼は有無も言わせずに

「じゃ、お休み」

 手を振った僕の前で八鬼が立ち上がる。

 室内の電気が落とされた。

「八鬼?」

 八鬼は読んでいた雑誌を片手に、もう片手に僕の手を握って廊下を歩きだした。

「八鬼??」

 行き先は、僕の部屋だった。

 え?

「くそあちぃな。エアコンもねえなんて」

 窓を大きく開けながらぼやいている。そうすると外の冷たい風が少しだけ吹き込んできた。

「えと……、どうして八鬼もここに?」
「俺がどこに行こうが俺の勝手だろうが」

 そ、それはそうかも知れないけど……。

 僕はどこかぼんやりとベッドに座り込んだ。

 八鬼は向かいのベッドに寝転んで、持ってきた雑誌で自分を扇いでる。

 これじゃ何の意味もないんだけど……。どうやって八鬼を部屋に帰らせればいいんだろう。

「そろそろ寝るぞ」

「え、あ、うん」

 八鬼が部屋の電気を消した。

「え?八鬼?」
「せめえな」

 当たり前みたいに僕のベッドに並んで、僕を腕に抱きしめた。

「ど、どうして僕のベッドに」
「俺がどこで寝ようが俺の勝手だろうが」
「だ、だって、この部屋めちゃくちゃ暑いのに……、一緒に寝るなんて八鬼も暑いだろ!?」
「わかりきったこと言うな」

 八鬼は有無も言わせずに僕を拘束したまま眠りについた。
 ぼ、僕も頑張って寝たんだけど……!

「あづいいいい……、もう無理です……!」

 一時間もせずに目を覚ましてギブアップしました。
 筋肉質なせいか、八鬼ってすごく体温が高い。
 多分37度超えてる。
 7月の熱帯夜にそんなのに抱きしめられたまま眠るなんて到底不可能だった。

「意外とギブアップすんのが速かったな」

 目を覚ましていたらしい八鬼が吐息だけで笑った。

「お前のことだから体調崩すまで粘るかとひやひやしたぜ。――――どうして急に部屋に戻るなんていいだした。なんかあったのか?」
「え」

 暗闇の中で、八鬼の目が青白く光っている。
 外から入るわずかな明かりに照らされ流れる汗も青く光った。

 瞳は真っ直ぐに僕を見つめてる。

「なにも無いよ」

 僕もその目から目をそらさないまま、笑って返事をした。

 八鬼の大きな手のひらが僕の顔を掴んだ。
 顔が、近づいてくる。
 キスだ。
 したくないな。

 八鬼が嫌だからじゃなくて、キスをしたらした回数の分だけ飽きられるのが速くなりそうで怖かった。
 週に一回だけは。この水曜日だけはキスもしたくなかった。

 顔を伏せたのに、八鬼に無理やり顔を上げさせられた。
 唇が合わさってお互いの呼気が少しだけ交わる。柔らかい触るだけのキスだった。

「ん……」
 こめかみから流れた汗を舐められてゾクリと背中が冷える。

「あ」
 シャツの中に手のひらが入ってきて、汗ばむ肌を撫でた。僕が警戒するより早くシャツを脱がされた。

「八鬼」
「勃った。責任取れ」
 汗の滲んだ汚い体に八鬼の舌が這う。

「やだ、せめてシャワー……」
「却下」
「いやだってば……!」
「お前の汗がエロ過ぎるのが悪い」
「汗がエロいってなに!? ひ、ひぃ、い――――!」

 首筋から髪の毛の中まで舐められ、そこに八鬼の吐息が触れ、悲鳴を上げてしまった。

 多分、室温は30度はあった。

 玉になった汗が流れるたびに八鬼が舌で掬い取っていく。
 覆い被さった八鬼の汗が僕の胸でぽつりと弾ける。

 僕の汗を舐め、舌なめずりする姿にゾクゾクして中に入ってた八鬼をきつく締めあげる。

 扇風機すらない部屋で、全身をお互いの汗でドロドロに汚すような夜を過ごした。
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