彼女の音が聞こえる (改訂版)

孤独堂

文字の大きさ
7 / 31

第二話 男子高校生の発想

しおりを挟む
 その日の東野高校昼休み。
 元秋の机の周りにいつもつるんでいる三人のクラスメイトが集まっていた。佐藤・大内・安藤の三人だ。
 「西女って事は胡瓜か」
 佐藤が言った。
 「胡瓜?」
 元秋が繰り返す。
 「制服緑だろ」
 大内が言う。
 「成る程ね」
 確かにそう言われればそうだと、言いながら元秋は納得した。

 今日の朝、ランニング中に川原で会った女の子の事を元秋は昼休みに友達に話したのだ。
 「でも西女じゃウチとは合わないだろ。付き合ったら皆に馬鹿にされるぞ」
 佐藤が言った。
 「あそこ偏差値低いからな。西女も東嫌ってるだろ。やっぱりウチだと東女か、南高辺りじゃないと釣り合い取れないか。それとここ」
 大内が言った。
 「お前ら馬鹿か?偏差値とか親の見栄じゃあるまいし。何処の学校だろうと好きなら付き合えばいいんだぞ。そんな事ばっかり言ってるから彼女出来ないんじゃん。大体ここは止めとけよ。別れたら後が面倒だぞ。基本普段会わない別の高校の女の子のがお互いの為に良いんだ」
 ファンクラブもあるという噂の校内で一・ニを争うモテ男、安藤が言った。
 「いや、付き合うとかそういう事じゃなく」
 元秋が言う。
 「可愛くなかったのか?」
 すかさず安藤が尋ねた。
 「可愛いは可愛いよ。あと声が良かったな。もろ俺好み。全体に純粋な感じの子だった」
 元秋が答えた。
 「PUREとPOORは似てるからな」
 大内が言った。
 「PUREとPOOR?]
 元秋が繰り返す。
 「頭が貧しい人には純粋な人が多いって事さ」
 大内が自慢気に言った。
 「やめろよ。そんなデタラメ、自慢気に言うの。佐野は陸上馬鹿だから信用しちゃうぞ」
 安藤が大内を諭す様に言った。
 「そういうもんなの?」
 「ほらー」
 元秋の言葉に言わんこっちゃないとばかりに安藤が言った。
 「それに西女って遊び人多いイメージあるから皆ヤッてるんじゃね?」
 佐藤が言う。
 「俺も聞いた事ある」
 すかさず大内が言う。
 「佐野、こりゃ簡単にヤラして貰えんじゃね」
 佐藤が言う。
 「いや、それは」
 元秋が言いかけたのを遮り安藤が言った。
 「だからお前らモテないんだよ。東京ならいざ知らず、この辺の高校でそんなにヤッてる奴いねーよ。全く噂に振り回されて、俺はお前らの友達で悲しいよ」
 そう言うと安藤は元秋の肩に寄りかかり、泣く真似をした。
 「あ、お前ら安藤泣かせた」
 元秋が言った。
 「ハハハハ、だって俺ら彼女いないし、恋愛事情とか、女子高生事情知らないもんなー」
 大内が言った。
 「その通り」
 自慢気に佐藤も言った。
 「まったく」
 安藤が呆れた声で言った後、続けて言った。
 「ところでその子、何て名前?」
 「野沢奈々」
 元秋は答えた。

 西野女子高。同じく昼休み、人気の無い校舎の裏で野沢奈々は一人トランペットを吹こうとしていた。
 スー
  スーー
 相変わらず音が出ない。
 「やっぱり、出ないや」
 奈々が寂しそうな声で言った。


    つづく

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...