彼女の音が聞こえる (改訂版)

孤独堂

文字の大きさ
15 / 31

第十話 彼女の音が聞こえる Part2

しおりを挟む
 「それでね、その幼馴染が言うの。彼女なんか出来ない、一生結婚出来ない。誰も俺の相手なんかしてくれない、きっと性的な経験も一生無理だ。なんてね」
 「性的?」
 元秋は聞き返した。
 「それでね。・・・可哀想だと思っちゃったの」
 元秋の質問には答えず、奈々は続けた。
 「その、パンツを脱いで、幼馴染の子のベッドの上にこう」
 そう言うと奈々は下着は脱がなかったが、スカートの裾を持ち、静かに河川敷の雑草の上に腰を下げて見せた。元秋にはそれが何をしている仕草か直ぐ理解が出来た。
 「そんな・・・」
 元秋は絶句しながら、奈々の仕草に想像が働き、自分が興奮している事に気付いた。
 「それだけ、それ一回だけなの」
 しゃがんだまま奈々はそう言うと泣き出した。
 「馬鹿だよ。お前ホントに馬鹿だよ!」
 元秋は大きな声で叫んだ。
 「はい!」
 ビックリした奈々が立ち上がった。
 「そんなのお前じゃなくてもいいじゃん。実際にやらなくてもいいじゃん。言葉で慰めればいいじゃん」
 言いながら、元秋は涙が出て来ていた。
 すっごい馬鹿で、愛おしい。と、思った。
 「だって、言葉が浮かばなかったんだもん。何て言えば良いか分らなかったんだもん」
 泣きながら奈々は言い返した。
 「ホントに馬鹿だなー。どうしようもなく馬鹿だ」
 そう言いながら元秋は一歩ずつ、奈々の方に近づいて行った。
 「でも、俺、、奈々の事好きみたい。お前馬鹿だから、俺が見てないと心配だ」
 元秋がそう言った瞬間、奈々は凄い速さで走り、元秋に抱きついた。
 「あっ」
 奈々の胸が自分の胸板に当たっているのを感じると、元秋は自分が奈々に興奮しているのが分り、強く奈々を抱きしめた。すると自分の心音と奈々の心音がまた聞こえて来た。二つとも速いリズムで鳴っている。今度は左右から聞こえた。速い鼓動なのに何故か元秋の心は落ち着いた。 
 「佐野君、私キスは初めてだよ」
 奈々はそう言うと、元秋の唇に唇を重ねた。
 元秋は自分が奈々に溺れて行くのを感じた。


 「成る程ね。そういう事があったんだ」
 安藤が、和希の話を聞いて言った。
 「で、その北村君の自殺で、皆奈々ちゃんの事噂するの止めたの?」
 「ええ、多分看護婦さんが話してるのでも聞いて、野沢さんが噂されてるって知って、自殺したんじゃないかって、皆言ってたから」
 「成る程ね。本当に自殺なのかな?遺書とかもあったの?」
 「さあ、それは私は分りません」
 安藤の話に和希が言った。
 「あのさー」
 「何?」
 佐藤が安藤に声を掛けた。
 「俺も大内も、その奈々ちゃんって子の事、会ってないから知らないけど、凄い事あったんだなって事は今知ったけど、その、安藤、これって何の会合?」
 「え、これは俺が奈々ちゃんに気になる点が幾つかあったから、調べて佐野にとって本当に奈々ちゃんは良い子か考える為の集まりだよ」
 「え?」
 「え?」
 「エ?」
 「えー?」
 皆一斉に言った。
 「そうなんですか?」
 舞が困った声で言った。


  つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...