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第二十二話 やさしい旅 その③
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「当たったの?へへ、じゃあ何か頂戴」
「んー、じゃあ、キス?」
「マジで」
元秋はニヤニヤした顔で聞いた。
「だってご褒美欲しいんでしょ」
「うん」
奈々の言葉に元秋は即答した。
「でも、軽いチュッてのだよ。良く本とかに書いてある様な舌入れたりするのは駄目だからね」
「露骨だな。良いよ、チュッで」
「元秋君とはゆっくり進みたいの。一遍に色々して飽きられたくないし」
奈々は真面目な顔をして言った。
「大丈夫だよ。奈々となら何だって何百回も何千回も、イヤ、何千万回もしても飽きないから」
元秋は笑いながら言った。
「馬鹿」
奈々は赤面しながら言って、それから、
「はい」
と、元秋の顔に自分の顔を近づけた。
二人の唇は一瞬重なって、直ぐ離れた。
その後、二人は少し無言で歩いた。
「あ、石段」
元秋が前に石の階段があるのに気付いて言った。
「うん、この石段上がればお寺」
「じゃあ、もう少しか」
「そうだね、じゃあ石段上がりながら私の昔話話す」
「昔話?」
元秋は尋ねた。
「そう、元秋君の知らない、覚えていない、私の昔話。そうすれば元秋君もきっとお墓参り位はしても良いかなって気になるよ」
「そお?」
「そお」
そして奈々の足が石段に掛かり、奈々は話始めた。
「幼馴染の北村颯太君はね。小学校の頃からずっと私を守ってくれたの。私、ちょっと変なトコあるから、小学校の頃は特に、クラスの女子に仲間はずれにされた時とか助けてくれて。中学もそう、私が特別支援教室と普通のクラスを行ったり来たりしてるの、やっぱり皆変な目で見て、陰口とか言ってたんだけど。颯太君が励ましてくれたり、皆に『やめろ、本気で野沢菜に悪口言いたい奴は裏で言わないで、正々堂々本人の前で言え!』とか言っちゃって、そう言うと皆言えなくなって」
「それってさ、北村君は、奈々の事が好きだったんじゃない?」
元秋が奈々の話に口を挟んだ。
「そうだよ。颯太君は小学校の頃から私の事好きって言ってた。私の事好きだから俺がお前の事守ってやるって」
「やっぱり」
元秋は奈々の事を好きだった男の話を正直聞きたくなかった。
「でもね、あんなに私の事色々してくれた人なのに、結局私はどうしても友達以上の気持ちにはならなかった。どうしてだろ?きっとね、インスピレーションとかあるんだよ。あと、見た目の好みとか。そう言うと悪い気がするけど」
奈々は石段を上がる自分の足を見ながら、話を続けた。
「それとね、自分で言うのもなんだけど、私、中学校では結構モテたの。私みたいな子が好きな男子もいるんだよ。でもね、颯太君に悪いような気がして誰とも付き合わなかった。当然、颯太君共一度も付き合ってないよ」
「へー」
何処か半信半疑で、元秋は興味なさそうに言った。
「でね、中二の春に、颯太君が自分の出る陸上の地区大会がこの町のグラウンドであるから見に来いって。凄く煩くて。しょうがないから、颯太君の事好きな女の子と二人で見に行ったの」
「ちょっと待て」
「ん?」
元秋の言葉に奈々は振り返った。
「北村君の事好きだった子いたの?」
「いたよ。付き合ってないけど」
「何かお前、罪深い女の様な気がして来た」
「なんで?」
「イヤ、いい。話続けてください」
元秋がそう言うと、奈々はまた前を向き歩きながら、話し始めた。
「それで、颯太君の事好きな女の子とグラウンドに行ったらね。そこで私、一目惚れしたの」
「へ?」
つづく
「んー、じゃあ、キス?」
「マジで」
元秋はニヤニヤした顔で聞いた。
「だってご褒美欲しいんでしょ」
「うん」
奈々の言葉に元秋は即答した。
「でも、軽いチュッてのだよ。良く本とかに書いてある様な舌入れたりするのは駄目だからね」
「露骨だな。良いよ、チュッで」
「元秋君とはゆっくり進みたいの。一遍に色々して飽きられたくないし」
奈々は真面目な顔をして言った。
「大丈夫だよ。奈々となら何だって何百回も何千回も、イヤ、何千万回もしても飽きないから」
元秋は笑いながら言った。
「馬鹿」
奈々は赤面しながら言って、それから、
「はい」
と、元秋の顔に自分の顔を近づけた。
二人の唇は一瞬重なって、直ぐ離れた。
その後、二人は少し無言で歩いた。
「あ、石段」
元秋が前に石の階段があるのに気付いて言った。
「うん、この石段上がればお寺」
「じゃあ、もう少しか」
「そうだね、じゃあ石段上がりながら私の昔話話す」
「昔話?」
元秋は尋ねた。
「そう、元秋君の知らない、覚えていない、私の昔話。そうすれば元秋君もきっとお墓参り位はしても良いかなって気になるよ」
「そお?」
「そお」
そして奈々の足が石段に掛かり、奈々は話始めた。
「幼馴染の北村颯太君はね。小学校の頃からずっと私を守ってくれたの。私、ちょっと変なトコあるから、小学校の頃は特に、クラスの女子に仲間はずれにされた時とか助けてくれて。中学もそう、私が特別支援教室と普通のクラスを行ったり来たりしてるの、やっぱり皆変な目で見て、陰口とか言ってたんだけど。颯太君が励ましてくれたり、皆に『やめろ、本気で野沢菜に悪口言いたい奴は裏で言わないで、正々堂々本人の前で言え!』とか言っちゃって、そう言うと皆言えなくなって」
「それってさ、北村君は、奈々の事が好きだったんじゃない?」
元秋が奈々の話に口を挟んだ。
「そうだよ。颯太君は小学校の頃から私の事好きって言ってた。私の事好きだから俺がお前の事守ってやるって」
「やっぱり」
元秋は奈々の事を好きだった男の話を正直聞きたくなかった。
「でもね、あんなに私の事色々してくれた人なのに、結局私はどうしても友達以上の気持ちにはならなかった。どうしてだろ?きっとね、インスピレーションとかあるんだよ。あと、見た目の好みとか。そう言うと悪い気がするけど」
奈々は石段を上がる自分の足を見ながら、話を続けた。
「それとね、自分で言うのもなんだけど、私、中学校では結構モテたの。私みたいな子が好きな男子もいるんだよ。でもね、颯太君に悪いような気がして誰とも付き合わなかった。当然、颯太君共一度も付き合ってないよ」
「へー」
何処か半信半疑で、元秋は興味なさそうに言った。
「でね、中二の春に、颯太君が自分の出る陸上の地区大会がこの町のグラウンドであるから見に来いって。凄く煩くて。しょうがないから、颯太君の事好きな女の子と二人で見に行ったの」
「ちょっと待て」
「ん?」
元秋の言葉に奈々は振り返った。
「北村君の事好きだった子いたの?」
「いたよ。付き合ってないけど」
「何かお前、罪深い女の様な気がして来た」
「なんで?」
「イヤ、いい。話続けてください」
元秋がそう言うと、奈々はまた前を向き歩きながら、話し始めた。
「それで、颯太君の事好きな女の子とグラウンドに行ったらね。そこで私、一目惚れしたの」
「へ?」
つづく
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