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(番外編) ボクはキミがスキ (下)
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野沢奈々は算数が苦手だ。小五だけど、皆より少し子供っぽい所がある。それから、泣いたり笑ったり、感情がちょっと激しい。
北村颯太はそう思っていた。
でも、『ボクはキミがスキ』
「スカートめくり!?」
清掃時間廊下を掃除していた颯太は大きな声を出した。
「シー」
剛が口の前に人差し指を立てて、静かにする様促す。
「声大きいよ。女子に聞こえちゃうだろ」
「聞こえたっていいよ!お前野沢にしたのか!?」
怒っている颯太の声は変わらず大きい。
「しょうがねえな。こっち来い」
剛はそう言うと颯太の腕を掴み男子トイレの中に連れ込んだ。
「そんな、デカイ声で騒ぐなよ。お前にも教えてやろうと思ったのに。今日の野沢のパンツ何色か知りたくないのか?」
ニヤニヤしながら剛が言った。
「お前五年にもなって恥ずかしくないのか!知りたくねーよ。二度とやるなよ、そんな恥ずかしい事!」
「なんだよ、お前アイツ好きだと思ったから教えてやろうって思ったのによ」
「嫌がっただろ?」
「は?」
「野沢嫌がっただろ?可哀想に」
そう言うと颯太は剛が逃げられない様に右腕を掴むと、腹を一発殴った。
「うっ、何すんだよ」
「二度とするなよそんな事」
そう言うと颯太は剛を睨み付けた。
「やっぱりお前には言わなきゃ良かった、こんな目に合うんなら。でもよ、やったの俺だけじゃねぇし、野沢だって、やめて~とか言って笑ってたぜ」
「そりゃあ、笑うしかなかったからだろ」
颯太が言った。
「何でだよ?本当に嫌ならもっと本気で逃げればいいし、泣けばいいじゃんかよ」
剛のその言葉にカチッっと来た颯太は剛の腹をもう一発殴った。
「うっ」
剛が苦しそうな顔をする。
「本当に困った時だって人間は笑うんだよ。バーカ。二度とするなよ」
そう言うと颯太は剛に背を向け、トイレから出て行った。
その日の放課後も奈々は居残りで補習を受けていた。
颯太は階段の所に座り、教室から先生が出て行く音がするのを待っていた。
ガラガラガラ
スタッスタッスタッ
どうやら先生は出て行ったらしい。
颯太は廊下を駆け足で教室に向かい、そして引き戸を引いた。
中では奈々が帰りの準備をしていた。
「よお、今日は終るの早かったじゃん」
颯太が奈々に声を掛ける。
「うん、先生帰りに夕食の買い物するんだって」
ランドセルを背負いながら奈々が言った。
「いいのかよ、そういうの」
「何が?」
「だから、女の先生だからっていいのかよ。公私混同じゃないのかそれって。生徒優先しろよ」
「しょうがないよ、先生だって家族いるんだから。それにこれは私が駄目だから先生が付き合って勉強教えてくれてるだけだし」
「そうだけどさー」
なんか納得いかない口調で颯太はそう言いながら、教室を奈々と出た。
校門を出ていつもの登下校の道を歩く。
「颯太君待ってたの?」
「ん、丁度皆と校庭で遊び終わって、教室行こうとしたら先生出て来た」
「そう。それなら良いんだけどね。待たなくて良いからね」
「待ってない、全然待ってないよ」
颯太は笑いながら言った。
「それよりさ、今日スカートめくりされたんだって?」
颯太は今度は深刻な顔をして言った。
「え、うん。参っちゃったー。一所懸命逃げたんだけど」
今度は奈々が笑いながら言った。
「笑うなよ、笑いながら言うなよ」
「えっ」
颯太の言葉に奈々はビックリした。
「そうやって笑ってるから付け込まれるんだ。媚びてるみたいな事するなよ、男好きだと思われるぞ。もっと本気で嫌がれよ、怒れよ」
「ごめんなさい。でも、何で颯太君が怒ってるの?」
「怒ってないよ。悔しいいんだよ。お前のパンツ見られたのが悔しいいんだよ」
そう言いながら颯太は涙が出て来た。
「なにそれ?」
奈々は困った様な顔をして言った。
「ホントちゃんとしてくれよ。お前俺と付き合う気はない、結婚しないっていつも言ってるけど、お前そんなんじゃ、俺心配だよ。俺がいない時のお前が心配だよ」
そう言う颯太はまだ泣いていた。
「私ね、私の事を知らない人と付き合いたいの。結婚したいの。だから颯太君はお兄ちゃんみたいな感じで、いつも私の側にいればいいじゃん。それなら安心でしょ?」
「そんなの全然安心出来ねーよ」
颯太は涙を拭いながら言った。
「兎に角、もう絶対スカートめくりなんかされるなよ。本気で嫌がれよ」
「はい、わかりました」
「よし」
坂の上にある学校から坂道を下って来ると、空には薄っすらと星が見え始めた。
「あ、明日七夕だね」
突然奈々が言った。
「ああ、そう言えば明日か」
「何かお願いしよ」
「明日?」
「ううん、今。今気付いたから、今ここで」
「今?」
「そう、颯太君も一緒にやって」
そう言うと奈々は颯太より一歩前に出て、二拍して手を合わせ、十秒程黙祷した。
「颯太君もした?」
振り返り奈々は颯太に聞いた。
「え、したよ。した」
「何てお願いした?」
ニコニコしながら奈々が聞く。
「お前から言えよ。言い出しっぺなんだから」
「え~、私は、皆と同じに生きられます様にって」
困りながら奈々は言った。
「なんだそれ」
「特別良くも悪くもなく、皆と同じになんの悩みもなく、普通に生きて行ければ良いなと思って」
「悩みのない人なんていないよ。普通に皆悩みは持っているよ」
颯太は少し笑いながら言った。
「意地悪。じゃあ颯太君は?」
「俺は」
颯太はそこで一呼吸置いた。
「俺は、奈々が皆と一緒に中学行って、高校行ってって、出来ます様にって」
颯太の言葉を聞いて奈々は目をキラキラさせた。
「ありがとう」
『でもホントはキミがボクをスキになりますように』
『ボクはキミがスキ』おわり
北村颯太はそう思っていた。
でも、『ボクはキミがスキ』
「スカートめくり!?」
清掃時間廊下を掃除していた颯太は大きな声を出した。
「シー」
剛が口の前に人差し指を立てて、静かにする様促す。
「声大きいよ。女子に聞こえちゃうだろ」
「聞こえたっていいよ!お前野沢にしたのか!?」
怒っている颯太の声は変わらず大きい。
「しょうがねえな。こっち来い」
剛はそう言うと颯太の腕を掴み男子トイレの中に連れ込んだ。
「そんな、デカイ声で騒ぐなよ。お前にも教えてやろうと思ったのに。今日の野沢のパンツ何色か知りたくないのか?」
ニヤニヤしながら剛が言った。
「お前五年にもなって恥ずかしくないのか!知りたくねーよ。二度とやるなよ、そんな恥ずかしい事!」
「なんだよ、お前アイツ好きだと思ったから教えてやろうって思ったのによ」
「嫌がっただろ?」
「は?」
「野沢嫌がっただろ?可哀想に」
そう言うと颯太は剛が逃げられない様に右腕を掴むと、腹を一発殴った。
「うっ、何すんだよ」
「二度とするなよそんな事」
そう言うと颯太は剛を睨み付けた。
「やっぱりお前には言わなきゃ良かった、こんな目に合うんなら。でもよ、やったの俺だけじゃねぇし、野沢だって、やめて~とか言って笑ってたぜ」
「そりゃあ、笑うしかなかったからだろ」
颯太が言った。
「何でだよ?本当に嫌ならもっと本気で逃げればいいし、泣けばいいじゃんかよ」
剛のその言葉にカチッっと来た颯太は剛の腹をもう一発殴った。
「うっ」
剛が苦しそうな顔をする。
「本当に困った時だって人間は笑うんだよ。バーカ。二度とするなよ」
そう言うと颯太は剛に背を向け、トイレから出て行った。
その日の放課後も奈々は居残りで補習を受けていた。
颯太は階段の所に座り、教室から先生が出て行く音がするのを待っていた。
ガラガラガラ
スタッスタッスタッ
どうやら先生は出て行ったらしい。
颯太は廊下を駆け足で教室に向かい、そして引き戸を引いた。
中では奈々が帰りの準備をしていた。
「よお、今日は終るの早かったじゃん」
颯太が奈々に声を掛ける。
「うん、先生帰りに夕食の買い物するんだって」
ランドセルを背負いながら奈々が言った。
「いいのかよ、そういうの」
「何が?」
「だから、女の先生だからっていいのかよ。公私混同じゃないのかそれって。生徒優先しろよ」
「しょうがないよ、先生だって家族いるんだから。それにこれは私が駄目だから先生が付き合って勉強教えてくれてるだけだし」
「そうだけどさー」
なんか納得いかない口調で颯太はそう言いながら、教室を奈々と出た。
校門を出ていつもの登下校の道を歩く。
「颯太君待ってたの?」
「ん、丁度皆と校庭で遊び終わって、教室行こうとしたら先生出て来た」
「そう。それなら良いんだけどね。待たなくて良いからね」
「待ってない、全然待ってないよ」
颯太は笑いながら言った。
「それよりさ、今日スカートめくりされたんだって?」
颯太は今度は深刻な顔をして言った。
「え、うん。参っちゃったー。一所懸命逃げたんだけど」
今度は奈々が笑いながら言った。
「笑うなよ、笑いながら言うなよ」
「えっ」
颯太の言葉に奈々はビックリした。
「そうやって笑ってるから付け込まれるんだ。媚びてるみたいな事するなよ、男好きだと思われるぞ。もっと本気で嫌がれよ、怒れよ」
「ごめんなさい。でも、何で颯太君が怒ってるの?」
「怒ってないよ。悔しいいんだよ。お前のパンツ見られたのが悔しいいんだよ」
そう言いながら颯太は涙が出て来た。
「なにそれ?」
奈々は困った様な顔をして言った。
「ホントちゃんとしてくれよ。お前俺と付き合う気はない、結婚しないっていつも言ってるけど、お前そんなんじゃ、俺心配だよ。俺がいない時のお前が心配だよ」
そう言う颯太はまだ泣いていた。
「私ね、私の事を知らない人と付き合いたいの。結婚したいの。だから颯太君はお兄ちゃんみたいな感じで、いつも私の側にいればいいじゃん。それなら安心でしょ?」
「そんなの全然安心出来ねーよ」
颯太は涙を拭いながら言った。
「兎に角、もう絶対スカートめくりなんかされるなよ。本気で嫌がれよ」
「はい、わかりました」
「よし」
坂の上にある学校から坂道を下って来ると、空には薄っすらと星が見え始めた。
「あ、明日七夕だね」
突然奈々が言った。
「ああ、そう言えば明日か」
「何かお願いしよ」
「明日?」
「ううん、今。今気付いたから、今ここで」
「今?」
「そう、颯太君も一緒にやって」
そう言うと奈々は颯太より一歩前に出て、二拍して手を合わせ、十秒程黙祷した。
「颯太君もした?」
振り返り奈々は颯太に聞いた。
「え、したよ。した」
「何てお願いした?」
ニコニコしながら奈々が聞く。
「お前から言えよ。言い出しっぺなんだから」
「え~、私は、皆と同じに生きられます様にって」
困りながら奈々は言った。
「なんだそれ」
「特別良くも悪くもなく、皆と同じになんの悩みもなく、普通に生きて行ければ良いなと思って」
「悩みのない人なんていないよ。普通に皆悩みは持っているよ」
颯太は少し笑いながら言った。
「意地悪。じゃあ颯太君は?」
「俺は」
颯太はそこで一呼吸置いた。
「俺は、奈々が皆と一緒に中学行って、高校行ってって、出来ます様にって」
颯太の言葉を聞いて奈々は目をキラキラさせた。
「ありがとう」
『でもホントはキミがボクをスキになりますように』
『ボクはキミがスキ』おわり
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