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13 初クエストでした
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精霊たち全員の冒険者登録と、パーティ登録が終わったころには、ギルド内の喧騒も少し落ち着いていた。
「正式に確認しますね。
冒険者ルカさんをリーダーとした、パーティ。《精霊の庭(スピリットガーデン)》……登録完了です」
受付嬢の言葉に、精霊たちが一斉に反応する。
ちなみにパーティ名はルミナの案が採用された。
「やった!」
「これで一人前だな!」
「一人前かどうかは、仕事次第です」
即座にセラが釘を刺す。
俺は金属プレートを握りしめたまま、少しだけ深呼吸した。
(……冒険者、か)
実感はまだ薄い。
だが、ここに来た以上、もう後戻りはできない。
「それでは、初任務におすすめなのはこちらです」
差し出された依頼書には、大きな文字でこう書かれていた。
――《薬草採取/難易度F》
「ギルド周辺の森で採れる基礎薬草の回収です。
危険度は低く、新人向けですね」
「それなら安心だね!」
ヴェントが軽く笑う。
「油断は禁物です」
「分かってる分かってる!」
こうして、俺たちの初任務は決まった。
◆
日を改めて初クエストに挑むつもりだったが、宿に泊まる金もないということで、早速薬草採取に来た。
森は、静かだった。
風が木々を揺らし、葉擦れの音が続いている。
ギルド周辺とはいえ、魔物が出ないわけではない。
「薬草……これ…」
テラが地面に生えた淡い緑の葉を指さす。
「間違いないです。かなり見つけやすいので、手分けすれば日が沈むまでには帰れそうですね。」
セラが確認し、丁寧に採取していく。
(……本当に、普通の仕事だ)
少し肩の力が抜ける。
「じゃあ、この範囲をお願いね!」
ヴェントの号令で、自然と分担されていく。
精霊たちは、それぞれの方向へ散っていた。
「やっぱり私、ついて行きましょうか?」
「ただの薬草採取なんだから大丈夫だよ。」
過保護なセラと別れて、俺も一人、森の奥へ進んだ。
(……静かだ)
ギルドの近くとは思えないほど、木々は深く、空気は冷たい。
足元を確認しながら、目当ての薬草を探す。
――そのとき。
鼻をつく、異質な匂い。
(……血?)
思わず足が止まる。
薬草の香りに紛れて、微かに漂う鉄の匂い。
気のせいじゃない。
俺は音を立てないよう、慎重に進んだ。
茂みを抜けた先――
倒れている人影が、視界に入った。
「……っ」
男の冒険者だった。
胸から腹にかけて、大きく裂けた傷。
血はすでに地面に広がり、呼吸も浅い。
(まずい……)
周囲を見渡す。
仲間の姿はない。
頭が一気に冷える。
この傷と出血で生きているということは、まだそんなに時間がたっていないはず…
つまり、まだ近くにこの冒険者を攻撃した何者かがいる。
だが、犯人を警戒する暇はない。
「結界……」
咄嗟に、聖属性に意識を集中させる。
淡い光が、俺と負傷者を包み込む。
聖属性の結界。
(セラのようにうまくできなかったけど、これで奇襲は避けられるか…)
「回復……!」
今度は、水属性に集中。
掌から淡い水の光が溢れ、傷口へと流れ込む。
だが――
「……だめだ」
再生が、追いつかない。
(俺の回復じゃ……止血が精一杯)
歯を食いしばる。
このままじゃ、助からない。
「……アクア!」
声を張り上げる。
森に響く、必死な呼び声。
「アクア!!!来てくれ!!」
どれだけ叫んでも、やはり届かない。
それなら…
「ヴェント!!聞こえるか?!」
次の瞬間だった。
――ゴウッ。
空気が、爆ぜた。
木々の枝が一斉にしなり、落ち葉が巻き上がる。
突風が森の中を一直線に切り裂き、俺の視界が一瞬、白く霞んだ。
「呼んだぁぁぁぁ!?」
ほとんど衝撃音に近い声。
同時に、何かが地面を滑るように突っ込んできて――
俺の目の前で、急制動する。
「はっ……はっ……!」
風を纏った小さな影。
ヴェントだった。
流石の風精霊。耳がいい。
足元の土がえぐれ、背後の木々がまだ揺れている。
「なに!? なに!? なんかあった!?」
一瞬で状況を把握し、視線が負傷者へ飛ぶ。
「……うわ、これはヤバい!」
「アクアを呼んでくれ! 俺の回復じゃ足りない!」
「了解!!」
言い終わる前に、ヴェントはもう跳んでいた。
――バンッ!
音だけを残し、姿が掻き消える。
風だけが、進行方向の草木を薙ぎ倒していく。
(……速っ)
ほんの数秒。
だが、その間にも、負傷者の呼吸はさらに浅くなっていく。
「……頼む……間に合ってくれ……」
結界と回復を維持しながら、必死に祈る。
――そのとき。
再び、空気が震えた。
さっきとは違う。
冷たく、澄んだ、重みのある気配。
「連れてきた!!」
ヴェントがアクアを地面に下ろす。
「……」
ポカンとなにも理解できていないアクア。
「アクア!!この冒険者、助かるか?!」
負傷者をみて、やっと頭が動き出したのか、駆け足で冒険者の近くに膝をつく。
「……し、深刻ですね。でも、まだ間に合います…」
その声に、胸の奥で何かがほどけた。
「お願いする……!」
「ま、任せてください…」
アクアはそう言って、冒険者の傷に手をかざした。
「正式に確認しますね。
冒険者ルカさんをリーダーとした、パーティ。《精霊の庭(スピリットガーデン)》……登録完了です」
受付嬢の言葉に、精霊たちが一斉に反応する。
ちなみにパーティ名はルミナの案が採用された。
「やった!」
「これで一人前だな!」
「一人前かどうかは、仕事次第です」
即座にセラが釘を刺す。
俺は金属プレートを握りしめたまま、少しだけ深呼吸した。
(……冒険者、か)
実感はまだ薄い。
だが、ここに来た以上、もう後戻りはできない。
「それでは、初任務におすすめなのはこちらです」
差し出された依頼書には、大きな文字でこう書かれていた。
――《薬草採取/難易度F》
「ギルド周辺の森で採れる基礎薬草の回収です。
危険度は低く、新人向けですね」
「それなら安心だね!」
ヴェントが軽く笑う。
「油断は禁物です」
「分かってる分かってる!」
こうして、俺たちの初任務は決まった。
◆
日を改めて初クエストに挑むつもりだったが、宿に泊まる金もないということで、早速薬草採取に来た。
森は、静かだった。
風が木々を揺らし、葉擦れの音が続いている。
ギルド周辺とはいえ、魔物が出ないわけではない。
「薬草……これ…」
テラが地面に生えた淡い緑の葉を指さす。
「間違いないです。かなり見つけやすいので、手分けすれば日が沈むまでには帰れそうですね。」
セラが確認し、丁寧に採取していく。
(……本当に、普通の仕事だ)
少し肩の力が抜ける。
「じゃあ、この範囲をお願いね!」
ヴェントの号令で、自然と分担されていく。
精霊たちは、それぞれの方向へ散っていた。
「やっぱり私、ついて行きましょうか?」
「ただの薬草採取なんだから大丈夫だよ。」
過保護なセラと別れて、俺も一人、森の奥へ進んだ。
(……静かだ)
ギルドの近くとは思えないほど、木々は深く、空気は冷たい。
足元を確認しながら、目当ての薬草を探す。
――そのとき。
鼻をつく、異質な匂い。
(……血?)
思わず足が止まる。
薬草の香りに紛れて、微かに漂う鉄の匂い。
気のせいじゃない。
俺は音を立てないよう、慎重に進んだ。
茂みを抜けた先――
倒れている人影が、視界に入った。
「……っ」
男の冒険者だった。
胸から腹にかけて、大きく裂けた傷。
血はすでに地面に広がり、呼吸も浅い。
(まずい……)
周囲を見渡す。
仲間の姿はない。
頭が一気に冷える。
この傷と出血で生きているということは、まだそんなに時間がたっていないはず…
つまり、まだ近くにこの冒険者を攻撃した何者かがいる。
だが、犯人を警戒する暇はない。
「結界……」
咄嗟に、聖属性に意識を集中させる。
淡い光が、俺と負傷者を包み込む。
聖属性の結界。
(セラのようにうまくできなかったけど、これで奇襲は避けられるか…)
「回復……!」
今度は、水属性に集中。
掌から淡い水の光が溢れ、傷口へと流れ込む。
だが――
「……だめだ」
再生が、追いつかない。
(俺の回復じゃ……止血が精一杯)
歯を食いしばる。
このままじゃ、助からない。
「……アクア!」
声を張り上げる。
森に響く、必死な呼び声。
「アクア!!!来てくれ!!」
どれだけ叫んでも、やはり届かない。
それなら…
「ヴェント!!聞こえるか?!」
次の瞬間だった。
――ゴウッ。
空気が、爆ぜた。
木々の枝が一斉にしなり、落ち葉が巻き上がる。
突風が森の中を一直線に切り裂き、俺の視界が一瞬、白く霞んだ。
「呼んだぁぁぁぁ!?」
ほとんど衝撃音に近い声。
同時に、何かが地面を滑るように突っ込んできて――
俺の目の前で、急制動する。
「はっ……はっ……!」
風を纏った小さな影。
ヴェントだった。
流石の風精霊。耳がいい。
足元の土がえぐれ、背後の木々がまだ揺れている。
「なに!? なに!? なんかあった!?」
一瞬で状況を把握し、視線が負傷者へ飛ぶ。
「……うわ、これはヤバい!」
「アクアを呼んでくれ! 俺の回復じゃ足りない!」
「了解!!」
言い終わる前に、ヴェントはもう跳んでいた。
――バンッ!
音だけを残し、姿が掻き消える。
風だけが、進行方向の草木を薙ぎ倒していく。
(……速っ)
ほんの数秒。
だが、その間にも、負傷者の呼吸はさらに浅くなっていく。
「……頼む……間に合ってくれ……」
結界と回復を維持しながら、必死に祈る。
――そのとき。
再び、空気が震えた。
さっきとは違う。
冷たく、澄んだ、重みのある気配。
「連れてきた!!」
ヴェントがアクアを地面に下ろす。
「……」
ポカンとなにも理解できていないアクア。
「アクア!!この冒険者、助かるか?!」
負傷者をみて、やっと頭が動き出したのか、駆け足で冒険者の近くに膝をつく。
「……し、深刻ですね。でも、まだ間に合います…」
その声に、胸の奥で何かがほどけた。
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