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二章 その後の物語
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しおりを挟む「ルイが治療を受けない…!?」
書斎にてアレクシアはフレディからの報告を受けて瞳を瞬かせていた。
ルイの様子がおかしな事には勿論、アレクシアは気付いていた。
しかし、まさかその結果、ルイが治療を拒む事に繋がった理由が全く分からない。
「どうやら、ステラさんの事を気にしてるみたいなんだよなぁ…」
「まさか自分のせいだと責めているんですか?」
「大正解」
大正解なんてしたくなかった答えを見事当ててしまい、アレクシアは頭を悩ませた。
「大好きな姉が亡くなったんだ。その時点でかなり精神面で追い詰めらてるのに、公爵の言葉で更に自分を追い詰めちまってるらしい。まぁ……ルイくんは10歳だ。苦痛や不安が増加すれば、それに関連する出来事を罪や罰として捉えてしまうのも無理はねぇ」
「……ルイはステラの死によって苦痛と不安を感じていた。そして自分の命を守る為にステラが様々な物を背負いながら生きていた事を知った。これまでの出来事を振り返って、罪や罰を感じ、自分を追い詰た。その結果治療を受けない、という選択をした……ということですか?」
「恐らくな」
「だとしても、治療を受けない、という選択は誰も幸せにはなれない。ステラだって望んでいませんよ…。俺、ルイと話をしてきます」
「俺っちも行く。もう一度1から病について説明してみる。救える命だ。放ったらかしになんて出来ねぇ。それに……本当はルイくんだって治療を受けたい筈なんだ。生きたい筈なんだよ…」
フレディは拳を強く握り締める。
ルイはまだ10歳だ。
人生を棒に振るには早すぎる。
そして何より2人はルイに生きて欲しい。
そう強く思ってる。
ステラが必死になって守ろうとしたルイの命を絶対に救いたい。
だから2人は再びルイを説得しに向かった。
しかし……
「だから僕は治療は受けるつもりはありません」
「ルイ…」
ルイの意思は揺らがなかった。
それどころかすっかりアレクシアとフレディの話に耳を傾けること無く、上の空で窓の外をボーッと眺めているだけだった。
「ルイ。ステラは確かにルイの命を守る為に色々なことを抱え込んだのは事実だ。けどステラはそれが苦だったとか、ルイのせいだなんて1度も口にしなかった」
「……例えそうでも、僕の存在が姉様を苦しめた事に変わりはありません。僕がいなければ姉様は、苦しむこと無く今を生きる事が出来たかもしれない…」
「なぁ、ルイくん。自分を責めたくなるのはよく分かる。だけどな。それ以上はもうよせ」
フレディの大きくてゴツゴツした手がルイの頭を優しく撫でた。
途端、ルイの目頭がカッと熱くなった。
本当は……助けて。と言いたい。
けれど、どうしても言葉にできないのだ。
自分の存在が枷となり、ステラを苦しめた。
これは紛れもない事実だが、きっとステラは首は横に振るだろう。
そして『それは違いますよ、ルイ』と微笑んでくれるだろう。
けれど、やはりどうしても自分を責めずにはいられなかった。
「ルイ。ステラは君の命を守りたくて、生きて欲しくてこれまで頑張ってきたんだ。それを……理解して欲しい」
アレクシアの言葉にルイは目を見張った。
そして
「……僕に、生きる意味なんてあるのでしょうか?」
そう弱々しく呟いた。
◇▢▢▢▢◇◇◇◇◇
アレクシアは書斎に戻った後、どうしたものかと頭を抱えた。
説得の結果は結局曖昧なままだ。
ルイはハッキリとした判断を出さなかったし、それ所か更に自分を追い込んでしまった。
「やはり俺じゃあ駄目なのか…俺の言葉じゃルイを救えないのか?」
ルイの中にある大きな罪という意識。
その意識を取り払ってあげない限り、治療の件も生きる意味もルイは見出す事が出来ずに病に朽ちていくだけだ。
じゃあ一体誰がルイを救える?
ルイの閉ざされた心の扉を開くことが出来る?
罪の意識を取り除くことが出来る?
そうアレクシアが考えた時だった。
視界に突如映った白いワンピース。
まるで風のように現れた少女___ステラにアレクシアは目を限界にまで見開いた。
ステラは目を細め、微笑む。
『やはり、アレクシア殿下には私が見えているようですね』
ステラの言葉に、姿に……アレクシアは目を擦る。
そして頬を強く抓ったりもしてみる。
___痛い。
ヒリヒリとした痛みは夢にしては現実的で……これが夢ではなくて現実だと痛感させられる。
「本当にステラ……なのか?」
『はい。ステラ・リーリエントです』
「でも、どうして……」
『こんな姿になっている理由は秘密です。けど、良かった。私の姿が見える人がアレクシア殿下で』
そうステラは言うとアレクシアの元へと寄ると
『アレクシア殿下。どうか私に力を貸して下さい』
そう言った。
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