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プロローグ
02 平均を上回る魔力が目覚めたようです
しおりを挟むセリア様から婚約破棄を告げられて数分後。
私は涙を流す事も無く、ただ用意された紅茶を見つめいていた。
紅茶の表面に映るのは無表情の私。
そんな自分の顔を見て、改めてこんな詰まらなさそうな顔をしているんだと分かった。けど、一番分かったのは私にとってどれだけセリア様という人の存在が大切だったか、という事。
「……楽しい時間はもう一生やってこないのね」
いつも正しい姿勢を心がけていたけど、もうどうでもいい。
私は椅子の背もたれに背を預け、天井を見上げる。
するとふつふつと心の底から何かが湧き上がってくるような感覚が現れ、それが遂には溢れ出てくるような感覚へと変わっていくのが分かった。
そしてその感覚が次の瞬間、激痛へと変わった。
目がチカチカしだし、体中に激痛が走る。
その急な激痛に絶えられず、私は思わず椅子から転げ落ちた。
体が熱い。
全身が痛い。
私はその場に縮こまり、呻き声を上げた。
そんな私の呻き声を聞いてか、誰かが部屋へと入ってきた。
ドタバタと響く足音。
だけどそんな足音がちゃんと聞こえのは束の間。
すぐに視界も聴覚もダメになり、私はそのまま意識を手放した。
**********
「あ、れ……」
「お姉ちゃん!」
「フェリーヌ!?」
「良かった。お姉ちゃん……お姉ちゃん!」
何故かフェリーヌに抱きつかれている私。
待って。まず、何でフェリーヌが私の部屋に居るの??
まだ頭の整理がつかない。
セリア様に婚約破棄された後、すごく悲しくてへこんでたらいきなり激痛が走って……それから……それからどうなったんだろう?
あ、そうだ。私、倒れちゃったんだ。
ようやく思い出した。
私の身に起きた事を。
けど…………
私に抱きつき泣きじゃくるフェリーヌを見つめる。
いい子……に見えるかもしれないが、それはフェリーヌの本心を知らないからだ。
フェリーヌはお父様に似て愛想が良い。
よく笑うし、よく喋る。
魔法学校では良い成績だとも聞く。
それに友人も多いとか。
だけど実は裏表が激しい子でもある。
お風呂へ行く途中、必ずフェリーヌの部屋の前を通るんだけどその度に私の悪口を言っているのを何度も聞いたことがある。まぁ驚きはしなかったけど、今現在の状況と照らし合わせてみたら驚きしかない。
だってフェリーヌは私の事が大嫌いなのだ。
そんなフェリーヌが演技とはいえ私に抱きつき、嘘泣き。
いい加減離れて欲しい。
私の頬が引き攣るのを感じていくのと同時にフェリーヌの後ろから白衣を着た少し年配の男性が顔を出す。彼はディグラード家の医者のテラードさんだ。丸メガネが特徴的な人で、そのレンズ越しにある黒の瞳とは決して目を合わせないようにしている。
何故合わせないようにしているのか……
その理由は簡単。
私がテラードさんの事を嫌っているからだ。
一ヶ月に一回必ずこの人は私のステータス検査を行う。
ステータス検査とはステータス、主に体力、精神力、防御力、攻撃力、魔力、素早さ、この六つのステータス要素を検査する事を言う。
一般的に全てのステータスが300を超えれば平均とされている。
なのでそれより下は劣っていると言うことで、私のお父様やお母様、フェリーヌの様な才能がある人だったら全てステータスが500を超えるか超えないかのステータスなのだ。
しかし、そんなお父様、お母様、フェリーヌでさえもステータスのマックスと言われる1000には届かない。
因みに私の一ヶ月前に検査した時のステータスはと言うと……
体力 80
精神力 580
防御力 30
攻撃力 5
魔力 0
素早さ 80
精神力だけが異常に高いのはこんな家庭環境を過ごしてきたからだと思われる。
魔力に関しては触れないで欲しい。
体力、防御力、素早さに関しては引きこもりなのでそれも見逃して欲しい。
テラードさんは、もしかしたら魔力が目覚めているかもしれない、という理由でステータス検査を行っているらしいけど、実はそれはただの口実。本当は全く魔力の目覚める気配する無い落ちこぼれの私を嘲笑う為に行っているんだと思う。
テラードさんが眼鏡をクイッと上げる。
そのレンズ越しにある瞳に睨まれたような気がして思わず目を逸らす。
「エデンお嬢様。体調はどうですか?」
「今は……なんとも」
「そうですか。ですが、念の為にもう一度検査しましょう。それと、ステータスの検査も」
テラードさんはそう言うと、検査の準備と共にステータス検査を行う為の石版を私へと差し出した。
そう言えばまだ今月に入ったばかりでステータス検査をしていなかった。
私は渋々と石版へと手を乗せる。
この石版には魔法石が埋め込まれている。
丸くカットされた石版の中央には大きな円があり、そこに手のひらを乗せる。手を乗せることによって魔法石の魔力がその人の体内を巡り本来の力を引き出させ、より正確なステータスを導かせるという仕組み。
本来の力を引き出させる為にこれまで魔法石が何度も魔力を私へと送った。しかし、魔法石の魔力が巡ったとしても私は今まであの結果から変わった事など一度もなかった。
……どうせ今回も同じ結果なんだから
私は目を細め、別のことを考える。
今日から何をしようかなー とか
今日から暇だなー とか
殆どが今後について。
あの一番楽しかった時間が再び訪れる事は無いからね。
私がそんな事を考えているうちに検査は終わったらしい。
石版から青白い光が溢れ出し、空に文字を描きだす。
皆がくすくすと笑い出す。
だけど石版が描き出すその文字にこの場に居た皆は言葉失い、笑っていた者達は皆唖然とし、目を丸くさせた。
私はそんな光景に首を傾げつつ、皆の視線が注がれる私のステータスへと視線を投げる。そして私もまた言葉を失った。
体力 1000
精神力 1000
防御力 1000
攻撃力 1000
魔力 1000
素早さ 1000
石版の示した私の現在のステータスはこれだった。
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