烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

文字の大きさ
3 / 78
プロローグ

03 皆の態度が急変しました

しおりを挟む

 石版が描き出した私のステータスはどう見ても有り得ないとしか言いようのない結果だった。

 まず、全体のステータスの高さ。
 全てがステータスマックスの1000である。
 てか私に魔力なんてある筈ない。
 体力も防御力も攻撃力も素早さも……引きこもりなめている数値だった。

 部屋に沈黙が走る。
 そんな沈黙を打ち消したのはフェリーヌだった。

 「こ、こんなステータス有り得ないでしょ! こいつが……エデンが何か小細工を加えたに違いないわ!」

 こんなにも声を荒らげた妹を見たのは初めてだった。
 私はゆっくり体を起こし、もう一度石版が描き出した私のステータスへと視線を向ける。
 横から凄く険しい視線を感じるけど気にしないようにしよう。

 そう決めて無視し続けていれば我慢できなくなったのかフェリーヌが再び声を上げた。

 「誰かすぐにお父様とお母様を呼んできて! 早く! 言いつけてやるんだからっ!」

 フェリーヌの言葉に一人の使用人が部屋を飛び出していった。
 誰もフェリーヌの命令には逆らえれない。
 だってフェリーヌはこの家の王女様。
 でも、いつもの天使のようなフェリーヌは今は居ない。
 完全に我を忘れ、本性が丸出しとなっている。

 そして使用人と共にお父様とお母様が私の部屋へと駆け付けた。
 石版から伸びる青白い光……それが描いた文字を見つめるなり二人は目を見張る。

 「…………テラード。石版が壊れていることは無いのか?」

 「先程フェリーヌお嬢様のステータスを計測しましたがその時は異常はありませんでした」

 「では何故……?」

 「考えられる事は一つです。何かの拍子に魔力が目覚め、その事により全てのステータス要素が爆発的に伸びたんだと思います。ですがこれは石版で測れる限界のステータス。もしかしたらエデンお嬢様は1000を大幅に超えるステータスを本当はお持ちの可能性だってあります」

 「分かった。……エデン」

 「は、はい」

 こうして名前を呼ばれたのは何時ぶりだろう?

 私は少しドキドキしながらお父様を見つめる。
 こうやって目を合わせたのも凄く久しぶりな気がした。


 「今日からディグラード家の跡継ぎはお前だ」

 「え……」

 「はぁぁぁぁぁ!?」

 いやいやいや、いくら何でもおかしすぎる。

 いきなり手のひらを返したお父様に私は唖然とした。
 一方フェリーヌは荒れていた。
 そりゃあフェリーヌだって荒れないはずが無い。
 これに関してはフェリーヌと同じ気持ちだ。

 「しかしお父様。私にはこの烙印が……」

 「……そんなの知らん。気にするな」

 今、気にするなって言いました?
 これ、お父様が押した烙印なんですけど……。

 私はおでこ……ちょうど烙印が押されている場所を撫でる。

 この失格紋のおかげで乙女の心はズタズタだったと言うのにまさかこんなにあっさりと片付けられてしまうなんて……。

 何処にもやりようのない怒りがフツフツと湧き上がってきた。

 「エデン。食事の時は必ず食堂で食事しなさい。分かったな?」

 お父様の言葉にまた私は唖然とした。

 今までこんな事言われた事が無かった。
 唖然とする私に、今度はお母様が歩み寄って来て、そっと私の手を握った。
 そんなお母様の行動に私は驚く。
 そして何とも言えない感情が湧き上がってきた。


 「エデン。何か欲しいものは無い? 何でも買ってあげるわよ?」

 私をあんなに毛嫌いしていたお母様が私に微笑みかけている。

 正直言って変な光景だし、何より気味が悪い。

 あれだけ私を見下していた使用人達でさえも急に私へ向ける視線が変わった。
 皆、私の気を引く為に必死なのが伝わってきた。

 ディグラード家の跡継ぎ……
 そんなの絶対に嫌だ……!!

 この家に居たら私はきっとお父様とお母様の良い玩具になってしまう。


 それだけは絶対に嫌だった。

 両親から愛情を全く注がれずに生きてきたけど、今更こんな事されたって嬉しくもなんともない。
 
 じゃあどうするかって……


 そうよ。
 この家を出ればいいのよ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処理中です...