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プロローグ
03 皆の態度が急変しました
しおりを挟む石版が描き出した私のステータスはどう見ても有り得ないとしか言いようのない結果だった。
まず、全体のステータスの高さ。
全てがステータスマックスの1000である。
てか私に魔力なんてある筈ない。
体力も防御力も攻撃力も素早さも……引きこもりなめている数値だった。
部屋に沈黙が走る。
そんな沈黙を打ち消したのはフェリーヌだった。
「こ、こんなステータス有り得ないでしょ! こいつが……エデンが何か小細工を加えたに違いないわ!」
こんなにも声を荒らげた妹を見たのは初めてだった。
私はゆっくり体を起こし、もう一度石版が描き出した私のステータスへと視線を向ける。
横から凄く険しい視線を感じるけど気にしないようにしよう。
そう決めて無視し続けていれば我慢できなくなったのかフェリーヌが再び声を上げた。
「誰かすぐにお父様とお母様を呼んできて! 早く! 言いつけてやるんだからっ!」
フェリーヌの言葉に一人の使用人が部屋を飛び出していった。
誰もフェリーヌの命令には逆らえれない。
だってフェリーヌはこの家の王女様。
でも、いつもの天使のようなフェリーヌは今は居ない。
完全に我を忘れ、本性が丸出しとなっている。
そして使用人と共にお父様とお母様が私の部屋へと駆け付けた。
石版から伸びる青白い光……それが描いた文字を見つめるなり二人は目を見張る。
「…………テラード。石版が壊れていることは無いのか?」
「先程フェリーヌお嬢様のステータスを計測しましたがその時は異常はありませんでした」
「では何故……?」
「考えられる事は一つです。何かの拍子に魔力が目覚め、その事により全てのステータス要素が爆発的に伸びたんだと思います。ですがこれは石版で測れる限界のステータス。もしかしたらエデンお嬢様は1000を大幅に超えるステータスを本当はお持ちの可能性だってあります」
「分かった。……エデン」
「は、はい」
こうして名前を呼ばれたのは何時ぶりだろう?
私は少しドキドキしながらお父様を見つめる。
こうやって目を合わせたのも凄く久しぶりな気がした。
「今日からディグラード家の跡継ぎはお前だ」
「え……」
「はぁぁぁぁぁ!?」
いやいやいや、いくら何でもおかしすぎる。
いきなり手のひらを返したお父様に私は唖然とした。
一方フェリーヌは荒れていた。
そりゃあフェリーヌだって荒れないはずが無い。
これに関してはフェリーヌと同じ気持ちだ。
「しかしお父様。私にはこの烙印が……」
「……そんなの知らん。気にするな」
今、気にするなって言いました?
これ、お父様が押した烙印なんですけど……。
私はおでこ……ちょうど烙印が押されている場所を撫でる。
この失格紋のおかげで乙女の心はズタズタだったと言うのにまさかこんなにあっさりと片付けられてしまうなんて……。
何処にもやりようのない怒りがフツフツと湧き上がってきた。
「エデン。食事の時は必ず食堂で食事しなさい。分かったな?」
お父様の言葉にまた私は唖然とした。
今までこんな事言われた事が無かった。
唖然とする私に、今度はお母様が歩み寄って来て、そっと私の手を握った。
そんなお母様の行動に私は驚く。
そして何とも言えない感情が湧き上がってきた。
「エデン。何か欲しいものは無い? 何でも買ってあげるわよ?」
私をあんなに毛嫌いしていたお母様が私に微笑みかけている。
正直言って変な光景だし、何より気味が悪い。
あれだけ私を見下していた使用人達でさえも急に私へ向ける視線が変わった。
皆、私の気を引く為に必死なのが伝わってきた。
ディグラード家の跡継ぎ……
そんなの絶対に嫌だ……!!
この家に居たら私はきっとお父様とお母様の良い玩具になってしまう。
それだけは絶対に嫌だった。
両親から愛情を全く注がれずに生きてきたけど、今更こんな事されたって嬉しくもなんともない。
じゃあどうするかって……
そうよ。
この家を出ればいいのよ。
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