烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

文字の大きさ
8 / 78
始まりの王都編

08 初めての友人

しおりを挟む

 「凄く美味しかったよ。ありがとう、ミレイ」

 「御礼だもの。気にしないで」

 ご飯を食べ終わった頃には私はミレイに敬語無しで話せるような仲になっていた。

 ミレイについて知れたことは、お嬢様口調の話し方は癖らしい。で敢えて家柄については詳しくは聞かなかったけど、それなりの家柄だの言うのは何となくだけど分かった。
 
 
 お腹もいっぱいになったし、友人も出来て凄く幸せだ。
 こんなに幸せでいいのだろうか?
 ふとそんな事を考えた。
 

 「ねぇ、エデン。旅をするならその服装は不向きだと思うの。だから今から私が貴方にぴったりなお洋服を選んであげる」

 「有難いけど、持ち合わせがあまり無いんだ」

 「そこに関しては大丈夫よ。私が買ってあげるわ」

 「ご飯だってご馳走になったよ? さすがにお洋服までは悪いよ」

 「これも御礼よ。気にしないで」

 ニコリと微笑むミレイ。
 ミレイの言う御礼は御礼という域を越えている気がする。
 金銭感覚の違いだろうか。
 でも、ミレイの心優しい親切心を断る事も出来ない。
  私はまたミレイの御礼に甘える事になった。

 「エデン。旅だからワンピースはダメよね? ショートパンツあたりかしら?」

 「えっと……ミレイに全部任せるよ」

 「分かったわ。私に任せて!」

 ミレイは大きく胸を張った。

 レストランを出てから少し歩いた所に沢山の服屋が並ぶ道に出ればそこにはオシャレな女性が沢山居て、いい香りもした。

 「まずはここに行きましょうか」

 ミレイが選んだのは茶色のレンガのお店。
 早速中に入る。
 
 「かわいい……!」

 店内は可愛いお洋服や雑貨、小物で埋め尽くされていた。
 ドレスやワンピース、靴に鞄に帽子にリボン。
 どれもどれも可愛いい物ばかりだった。
 そしてどれも高価である。
 多分ブランド物なんだろう。

 「エデンはどんな服でも似合いそうね。お洋服の選びがいがあるわ」

 「そうかな? 自分じゃよく分からないから」

 「えぇ。エデンはとても可愛いわよ。私がエデンに似合うお洋服を選んであげるから楽しみにしてて」

 改めて思ったけどミレイは言葉が上手い。
 一つ一つの言葉に心があり、一つ一つがグッとくる。
 けど褒められる事に慣れていない私としては恥ずかしくて仕方ない。

 「やっぱり旅人なんだから動きやすさを重視しないとダメだと思うの。だから……」

 ミレイが楽しそうに服を選び出す。
 そして最初に手に取ったのはかぼちゃパンツだった。
 確かにこれなら動きやすさもありながら可愛さもある。
 ミレイはお洋服を選ぶセンスも抜群みたい。

「無難に黒がいいかしら? いえ……ここは茶色? パステルカラーも捨て難いわ……」

 真剣さを増すミレイの瞳。
 メラメラと炎が見える気がする。

 ミレイが服選びをしているの隣で見ているのもいいけど、私も何か御礼がしたい。
 それに友達にはプレゼントを贈るのが良いと本で読んだことがある。
 ならここでミレイへのプレゼントを買おう。
 何をあげたらミレイは喜んでくれるんだろう?
 私はうーんと唸りながら店内を回ることにした。

 店内を探索してから二十分。
 迷いに迷った結果、プレゼントは髪留めに決めた。
 黄色の小さな花の着いた髪留めなんだけど、ミレイのあの淡い桃色の髪色にはぴったりな気がした。
 私はそれをお会計し、リュックへしまう。

 「エデン! ここに居たのね! さぁ、早く試着して!」

 「うん。分かった!」

 突然後ろからミレイが現れた。
 少しドキッとしたけど、何とか平常心を取り戻す。
 私はミレイに連れられ試着室に入った。


 「もう着てみた?」

 カーテン越しからミレイの声が聞こえてきた。

 「うん。だけど……なんか恥ずかしい」

 私はそう答え、ゆっくりカーテンを開ける。
 そしてカーテンを開けたのと同士にミレイが「きゃぁぁぁ」という声をあげた。

 一方私はと言うと着慣れない服装に困惑していた。

 白いブラウスに、赤のラインが入ったスカートズボン。その上からチョコレート色のローブを羽織っている。ローブにはワンポイントとしてリボンが着いていた。それから膝より上の長めな白い靴下に、茶色のブーツという格好。

 …………可愛すぎる気がするぞ。

 鏡に映る自分を見て、私はそう思った。

 「エデン。あと、これも」

 「え?」

 名前を呼ばれ振り返る。
 ミレイの腕が真っ直ぐ私へと伸びてきて、前髪に触れる。

 「辞めてっ!」

 叫んだ時は遅かった。

 ミレイが私のおでこを凝視していた。
 

 ────烙印

 気にしないで過ごそうと決めていたのに、 やはり気にせずにはいられなかった。

 ミレイは貴族(私の予想だけど……)
 だからきっとこの烙印の意味も分かってしまうだろう。
 貴族なら有り得る跡継ぎ失格を意味するこの烙印を。


 私は慌てて前髪を整える。
 見られた。
 見られてしまった。
 嫌われた?
 それだったらすごく悲しい。

 だってミレイは私の初めての友達だから。 
 
 少しの沈黙が走った後、この沈黙を打ち消したのはミレイだった。

 「…………それ、痛くないの?」

 「ち、小さい頃に押されたものだから痛くはない」

 「そう」

 気まずい

 いや、私がこの空気をつくったようなものだし……ここは私が場を和ませないと。

 そう思い口を開こうとした矢先


 ポタ

 何かが床へと落ちていった。
 そしてそれがミレイの涙だと気づいた時には何故か私は抱きしめられていた。 

 全く状況に頭がついていかない。

 「エデン。今まで辛かったと思う。大変だったとも思う」

 ギュッとミレイの腕の力が強まる。

 「だけどね、怖がらなくて大丈夫。私は失格の烙印なんて気にしない。だってエデンはエデンじゃない」

 「…………ミレイは本当に優しい人だね。ありがとう」

 
 失格紋があるからという理由で今まで散々だった私にとってミレイの言葉は本当に嬉しくて、暖かい言葉だった。

 ふと浮かぶあの時告げられた婚約破棄の言葉に、私は唇を噛み締めた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処理中です...