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謎の依頼編
11 ルゲル村に到着
しおりを挟む「ここがルゲル村……?」
視界に映るのは緑、緑、そしてまた緑。
見渡す限り緑尽くしのここがどうやらルゲル村らしい。
「ビックリしたろ? 村って言っても住んでる奴は少ないし、冒険者だって滅多に来ない。一応ギルドはあるんだけどな」
ロキさんの言葉に私は深く頷く。
村と言えば家があり、人が居る。
そしてのんびりと皆が楽しく笑い合いながら暮らす。
そんな印象しか持っていなかった私にとってこのルゲル村はそんな印象を粉々に打ち壊していった。
「旅人って言ってたけど、これからどうするんだ?」
「まだ考えてないです」
ロキさんには悪いけど旅人ってのは名前だけ。
本当は両親達から逃げる為にここまで来たなんて言える訳ない。
にしても本当に困った。
今の自分の体ならまだまだ遠くまで行けそうな気がする。
でもこんなに大自然に囲まれた村は他には無いだろう。
今まで自然とは無縁の人生だった。
この機会だし自然と触れ合ってみたいかも。
「そう言えばエデン。お前っていくつなんだ?」
「十六ですけど、それがどうかしたんですか?」
「いや。妹と歳が近そうだなーって思って聞いてみただけだ」
「そう……ですか」
ロキさんがふと悲しそうな表情を浮かべた。
ステータスが1000になってからというもの観察力も優れた気がする。直ぐに人の表情の変化などに気づくようになったのが何よりの証拠。
ロキさんはあまり表情が変わらないけど、僅かに口元が緩んだり目尻が下がったり……そんな微妙な変化でも気づくのだ。
でもステータスには観察力なんてものは無い。
じゃあ何でなんだろ??
謎は深まるばかりだった。
「なぁ、エデン。ルゲル村に住んでみる気は無いか?」
「え?」
「いや……特に決まってないって言うから。言っとくが、変な意味で言ってる訳じゃないからな!」
「それくらい分かってます」
ルゲル村に住む……か。
まぁ、悪くは無いと思う。
ここは人も少ないし、冒険者も滅多に来ないらしいから情報が流れる事は無いと思うし……。
あれ? もしかしたらこの村ほど身を隠すにはもってこいな場所は無いのかもしれない。
ならもう答えは一つしかない。
「ロキさん。私、この村に住みます!」
「そうだよな…………いきなりは無理だよな……って、本当か!? 」
「はい。 自然豊かですし。それに……」
身を潜めるにはピッタリだ。
私がそう言えば、ロキさんが嬉しそうに口元を緩める。
「分かった。ならまずは村長の所に行くか」
「はい」
*********
案内され着いたのは【ギルド】と書かれた看板のある家。
私は何度も瞬きを繰り返す。
「ここが村長の家だ。村長はギルドマスターでもあるからギルドで住んでるんだけど」
「な、なるほど」
村長でありながらギルドマスターって凄いな……
そう私は関心しながら、ロキさんに続いてギルドの中へと入った。
村人になるならステータス測らせろーなんて展開ないよね?
私は心の底からお祈りした。
「村長ー。村に住みたいっていう人を連れてきたんですけど」
「失礼します」
恐る恐る私はギルドへと足を踏み入れる。
ギルドと言えば冒険者の溜まり場。
少しドキドキした。
「あれ? 返事ないな? ちょっと見てくるか待っとけ」
「は、はい……」
そう言われ、私は大人しく端っこの壁にもたれかけて待つことにした。
滅多に冒険者は来ないと言っていたけど、本当に居ないんだ。
ギルドのフロアの中は空っぽ。
冒険者もギルドの受付嬢さんも居ない。
冒険者という職業はとても人気が高いと聞く。
特に学校に通う必要も無いし、何より誰だってなれるし、冒険者ランクが上がれば報酬の良い仕事にも挑戦できる。まぁその分いろいろ苦労はあるけど子供なら誰でも一度は憧れる職業だと思う。
冒険者は悪くは無い仕事だ。
私は一度も憧れた事は無かったけど。
「え、お客さん!?」
カウンターの方から声が聞こえてきた。
私はカウンターの方へと視線を向ける。
するとここの受付嬢だと思われる女の人と目が合った。
その人はパァっとまるで曇り空から太陽の光が差し込んだような……そんな笑みを私へと向けると
「ルゲル村へようこそ!」
と、もてなしの言葉をくれた。
「ありがとうございます。私、旅人でして……ここで暮らしたいなーって思ってるんですけど、その大丈夫でしょうか?」
「もう全然大丈夫ですよ! 大歓迎です! 直ぐにでもお家だって準備出来ちゃいます!」
受付嬢さんはそう言うと、ドタバタとした足取りで奥へと行ってしまった。
……………………また一人になってしまった。
それから数分後、ロキさんが誰かと一緒に戻ってきた。
ロキさんよりも少し背が高い茶髪の男性。
多分この人がこの村の村長でありギルドマスターの人なのかも。
服越しからでも分かる鍛え上げられた肉体を見て、私は少し唖然とする。これこそを細マッチョと言うのだろうか。
気を取り直して私はペコりと頭を下げる。
第一印象は大事だからね。
「村長。彼女がこの村に……」
「おぉぉぉ! 君が新しく住人になってくれるという女の子だね! 嬉しいぜ!」
ロキさんの声を遮り、村長さんが話し出す。
声も大きいし、とても元気いっぱいの人だった。
「ルゲル村も昔は人でいっぱいだったんだ。なのに皆王都へ行っちまった。だからこうして新しい住民が来ると嬉しくて仕方ねぇ」
村長さんは目尻に手を当てながら流れ落ちそうになる涙を何度も拭う。
村長さんはどうやらとてもいい人みたい。
私はそう確信した。
「あれ? 村長……じゃなくてマスター! いらっしゃってたんですね!」
「メル! 新しい住人だぞ!村も賑やかになるな!」
村長さんはそう言うと、白い歯をみせてニカッと笑った。
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