烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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錬金術師と魔導師編

47 魔術師団

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 あと一押し。
 そう思ったけれど次の言葉が見つからない。
 だってクロートやリリアからしたらこれは絶対に成し遂げたいこと。一方ノエルさんは禁忌を破って欲しくないと思っている。2つの思いがぶつかり合う中、どちらを味方したらいいのか私は迷い始めていた。

 一体どうすればいいの……?

 額に滲む汗が頬を伝っていった時だった。
 

 『待て!』

  突然アトリエにそんな声が響き、私はもちろん2人が声をこぼす。
 何処からか聞こえてきたその声は徐々にこちらへと近付いてきていた。

 『侵入者か? ここは精霊の森の番人しか入ることを許されないアトリエだぞ! 』

 ギシギシと軋む音をたてながら部屋の隅から姿を表したのは鎧の兵士だった。この鎧の兵士を 一目見て私は直ぐにノエルさんのによる錬金術で作られた道具だというのが分かった。
 鎧の兵士はゆっくりと歩きながら、腰に下げていた鞘へと手を伸ばす。
 そして勢いよくその鞘に収めていた剣を抜く。

 「待て! 俺達は……!」

 『侵入者は排除するよう言われている』

 なるほど。
 どうやらこの鎧の兵士は門番という訳か。
 やけにボロボロなのはきっと今まで沢山の侵入者達からこのアトリエを守って来たからだろう。
 出来れば戦いたくない。
 私は説得してみることにした。

 「ねぇ、少し話を聞いてくれないかな」

 『…………なんだ貴様』

 「私? 私はエデンと言いますけど……」

 『そうでは無い。何故貴様から主と同じオーラが見えるんだ!』

 ん? どういう事?
 私は首を傾げる。
 そんな私を見てか鎧の兵士が剣を鞘へとしまうと私の方へと歩いてくる。
 そして遂に私の目の前にまでやって来た。近くで見ると2メートル近くありそうなくらいの大きさに驚いていると突然鎧の兵士が屈み込んだ。
 いや、屈み込んだんじゃない。
 何故か鎧の兵士は膝を着いて頭を下げていたのだ。

 思わず瞬きを何回も繰り返す私。
 一体何故私はこんな事をされているのだろう?

 『そうか……貴方様が新たな番人なのですね。ようこそいらっしゃった。新たなる番人よ』

 「えっと、人違いじゃない?」

 『いえ。貴方から漂うオーラこそ貴方はまさしく精霊の森の番人である証拠です』

 香りの次はオーラか……。

 これもきっと鎧の兵士にしか見えない特殊なオーラなんだろうな……。


 『番人よ。どうかなさいましたか?』

 「あの、因みに番人っていうのはどんな事をするんすか?」

 『番人とはこの精霊の森を見守る神的存在です』

 「そうなんだ……」

 精霊の加護の次は精霊の森の番人か……
 でも取り敢えず攻撃されずに済んだから良かった。
 そう胸を撫で下ろした時だった。


 バン!!

 扉が勢いよく開くような音がして、ドタバタと足音がアトリエに響き出した。
 私は弾かれたように振り返る。
 すると次の瞬間、目の前に突如現れた火の玉に慌てて避ける……訳にはいかないので取り敢えず平手で迎え撃つ。リリアの加護のおかげで私には耐性がある為、その火の玉の熱さは微塵も感じなかった。

 「これはこれは驚いた……この私の魔法を片手で止めるとは。貴方、中々の腕前のようですね」

 「……あなたは?」

 「おや、これは失礼。私はシグナリス王国の魔術師団団長、グレスと申します」

 綺麗な銀色の長髪の男性、グレスさんはニコリと微笑む。
 彼はあのミレイやレオン殿下、ゼアさんの国の魔術師団の人で、まさかの団長。相当な実力を持った人なんだろうけど、何故そんな人が今ここに?? 

 そう思っていると……

 「貴方、名前は?」

 名前を尋ねられた。
 あっちは名乗った訳だし、名乗らない訳にはいかないよね。

 「エデンです」

 「エデンさん、ですか……。ふむふむ、そうですか。是非貴方には魔術師団に入ってもらいたいのですが……その罪深き罪人と仲間、と言うならば話は別になりますねぇ?」 

 あの優しい笑顔は何処へやら。
 グレスさんはギロりとクロートとリリアを睨みつける。
 けれどグレスさんの言葉の中にリリアは含まれていない。
 そうだ。グレスさんにはリリアの姿が見えないのだ。
 だからグレスさんの言う罪人にリリアは含まれていない。

 「あの、待って下さい! 話を聞いてください!」

 「話? 聞く必要などありません。なにせ彼が禁忌を犯そうとしていることなど随分前から目をつけていたので知っています。それに貴方も知っているでしょう? 死者蘇生を行うのは禁忌だということぐらい」

 「っ!? そ、それは……」

 「私達魔術師団はそんな罪人を捕まえるべくやって来たまでです」

 グレスさんはそう言うと、ニコリと微笑む。
 その笑顔は決して優しい笑顔……なんてものでは無い。
 暖かさなんて微塵もない冷たい笑顔だ。

 「死者蘇生などして何がしたいんですか? そもそも死んだ人間の事など直ぐに忘れてしまえばいい。そうズルズル引きずっても意味が無いだろう。それに……見ていて馬鹿らしいんですよ」

 拳に力が入るのが分かった。
 そして何よりグレスさんの言葉にクロートでもリリアでも無く1番最初に反応したのは私だった。

 「……そんな事言わないで下さい。 大好きだった人、大切だった人を忘れられないのは当たり前の事です。ノエルさんの事が大好きだから、大切だから忘れられないんです。それを……そう馬鹿にしないで!」

 自分でも驚くぐらい無機になっていた。
 グレスさんの態度と言葉に私は怒りを隠しきれなかった。
 禁忌だから勿論それは犯しちゃいけない。
 だけど2人は禁忌を犯してまでノエルさんを生き返らせたい。
 そんな強い気持ちを持ってるのにそれを馬鹿にするグレスさんが許せなかった。

 「ほほう……貴方、中々言いますね。面白い……。ならば、こうしませんか? 今から私と君とでバトルをしましょう。もし貴方が勝ったなら見逃してあげます」

 「もし私が負けたら……?」

 「罪人は牢屋へ。貴方は私の右腕となり働いてもらいます」

 「……分かりました」


 私はバトルを引き受けた。
 
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