烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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パン屋がやってきた編

52 変わった人

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 「ユウさんはどうしてルゲル村に?」

 ふと気になったので尋ねてみた。

 「実はこの村に幻の食材があると聞いて来たんです! エデンさんはご存じですか!? 幻の食材を!!」

 急に瞳がキラキラしてきたぞ……!
 それに幻の食材なんて初めて聞いたし、一体どこ情報なのだろうかそれは。
 若干不安になってきた……。

 「パン屋と言っても見習いなんですけどね。エデンさんは好きなパンとかありますか?」

 「私はクリームパンが好きです。あ、でもホイップクリームたっぷりのパンも好きです」

 「成程。女性の意見はとても大切なので伺えて良かったです。今度作った時是非アドバイスください」

 「いやいや。私、素人ですよ?」

 「素人とか素人じゃないとか関係ないですよ」

 ニコリと微笑むユウさん。
 こういう人の事を裏表のない人というんだと思う。
 ユウさんの笑顔は優しくて暖かい。
 それに一緒にいて何だか落ち着くのだ。

 「メルさんに聞きましたけどエデンさんってSランクの冒険者なんですよね? 俺、初めてSランクの冒険者見ました! 俺は冒険者カードも持ってないのでこうして採集に付き合ってもらえて本当に嬉しいです。俺、モンスターと戦った事ないので凄くドキドキしてたんです」

 「この森はモンスターがあまり出ないので大丈夫ですよ。出たとしたもCランク程度ですから」

 「Cランク?」

 しまった……。
 Cランクのモンスターなんて普通通じるわけがない。
 なにせモンスターのランクは鑑定眼が使える者にしか見えないランクなのだ。
 これはもう変な女と思われたに違いない。
 これからルゲル村に暮らす者同士仲良くやっていきたかったのに!

 後悔したって遅いのは分かってるけど、後悔せずにはいられなかった。

 私は恐る恐るユウさんの方へと視線をむける。
 けど、ユウさんの反応は私が思っていたのとは全く違うものだった。

 「もしかしてエデンさん…………鑑定眼が使えるんですか!?」

 「は、はい。そうですけど……それよりも」

 何で鑑定眼の事知ってるの!?

 驚きを隠せない私だった。

 「俺、父に聞いたことがあったんです。その鑑定眼が使える人はごく限られてるって……エデンさんってもしかしてSランクの冒険者の中でも飛び抜けて凄い冒険者だったりするんですか!?」

 キラキラ輝く瞳でそう見られると何だか照れるものである。
 でも悪い気はしない。
 だって凄いって言われて嬉しくない人なんていないと思うから。

 「飛び抜けてかは分かりませんけど、それなりに魔法も使えます。それと最近友人に剣術を学んだんです。なので剣も少々使えますし……あ、体術もそれなりに出来ますよ」

 「でもエデンさんって魔導師なんですよね? 」

 唖然とするユウさんに私は笑いかける。
 予想通りの反応だったし別に深い意味もない話だった。
 だから話題を変えようとした時だった。

 「エデンさんが物凄く強い方だというのがよく分かりました。けど、あまり無理はしちゃダメですよ」

 なんて……そんな事言われた。
 私は大きく何度も頷いた。
 そんな私を見てか笑い出すユウさんの横顔をバレないように見つめる。
 
 ここまで何かに夢中になったりする物が彼はあって私には無い。
 ちょっと羨ましい気がした。

 「それで、その幻の食材って何処にあるんですか?」

 「木の実と聞いたんですが……」

 キョロキョロと辺りを見渡すユウさん。
 この自然豊かなルゲル村の森には沢山の木の実がある。
 一つ一つ探していく時間なんて無い。
 なら方法は一つだけである。

 「ねぇ、リスさん。ここら辺に幻の食材って言われてる木の実が何処にあるか知らない?」

 私は木の枝の上で休んでいたリスさんへと声を掛けた。
 実は私、動物と会話が出来る。
 いや、出来るようになっていた……というべきかな?
 巫女の力によってどうやら私はドラゴン以外の生物とも会話できるようになった。村長曰く、私が成長したからとの事。

 【幻の食材? 何だそれ? 特徴は無いのか?】

 「それが分からないんだよね」

 【そうかい。分かった! 任せとけ! 嬢ちゃんにはいつも助けて貰ってるしな!】

 リスさんはそう言うと小さく鳴いた。
 この子は前怪我をした所をルカが見つけ、私が助けてあげた事があった。
 それ以来たまに家に木の実などを持ってきてくれるようになり今では友達である。

 リスさんが去った後、私とユウさんの間には沈黙が走った。

 「えっと……リスさんが探してくれるらしいです。この森のことをよく知るリスさんなら幻の食材の正体が分かるかも知れません」

 「は、はい……」

 「すいません。驚かせちゃいましたよ。あはは……」

 き、気まずい!
 
 良かればと思いついつい動物に声を掛け話してしまった。
 この行動は見方によっては気持ち悪がられるに決まっている。
 そう分かっていたけど私はその手段を選んだ。
 だってここまで夢中になれる物があってそれを必死で追いかける事が出来るユウさんの応援をどうしてもしたくなったのだ。

 「驚きました。けど、凄いですよ、エデンさん!」

 「えぇ!?」

 「俺、小さい頃から動物と話てみたかったんです。それが出来ちゃうなんてエデンさんは本当に凄いです!」

 ここまでキラキラした瞳で言われるとは予想外だった。

 …………ほんと、変わった人だな。


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