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二十三話 あと少し……
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「あったこれだ」
梯子を降りた先、目の前に広がる静香に対し昌一郎は壁際を探り照明のブレーカーを発見する。
そこに向け電子銃を一発叩き込むと、一斉に電気が落ちた。
「これで追っ手も撒けるだろう。大丈夫、既に道は覚えてあるついてこい」
緊急時の逃げ道として用意してある旨を親父から事前に教わっていた昌一郎は、静香とともに難なく正解のルートを走り去っていく。
「しかしよく分かったわね。ドローンで監視されていたなんてさ」
「その可能性は少しばかり予期していたが、完全に確信したのは、俺たち二人だけしか廃倉庫の中には居ないと言ったときだ」
最初から違和感は持ち得ていた。
最も重要な被験体であるはずの亜香里ちゃんにも危害を加える恐れのある実弾を、逃げる用意が整ったタイミングと同時に行使したのか、そこが気がかりだった。
中の様子が分からないのなら無理な手段だが、逆に知っていたのなら話は変わってくる。
おそらく静香が撃ち落とした小型ドローンを用いて、中の様子を窺い行動を監視し、状況が動いたことで奴らも最後の手段に踏み切ったということだろう。
「それよりも」
「探せぇーーーーーーー!」
背後から東城のガナリ声が迸り、地下通路へ降りてきたことを確認する。
一体何人の人間が、昌一郎らを追って地下へと降りてきたかは検討もつかないところだが、表にいたあの人数総出で攻め込まれれば迷路と化しているこの地下通路も難なく攻略されてしまい、追い付かれてしまう。
だけどそれも終わりだ。
地下通路のせいで反響した声が、ここへと届いたまでに過ぎず二人は出口の光を目にする。
二人を乗せ、全員が揃ったトラックは山沿いの車道をひたすら走り続けていた。
「で柿はどうした?」
昌一郎の気になりはこの場に居ない男へと向けられていた。
地下通路を抜けた先には、あきらくんと亜香里ちゃんを元の世界へと送り帰す使命のもと結託した仲間が勢揃いしていた。
ただ想定外が一つだけ。
それは柿に頼み、彼の手で身を隠しているはずの人間が列挙して押し寄せている事実。
それは昌一郎に衝撃を与える結果となった。
「あの人なら街中で彼らを惹き付ける為に残るって仰ってましたが?」
「はぁ~?にしてはあの量かよ」
廃倉庫の前に居たあの大群は、「マントル」所属隊員捜索部隊の大半に値し柿が街で何をしていたのか理解に苦しむ。
どころかこんな事態に陥ったことに関し、あの柿がすぐに捕まったと捉える方が妥当かもしれない。
でも心のどこかではアイツが捕まるわけは無いと否定したくなる気持ちもあった。
ただいくら熟考したところで、今最も優先すべき事項は、彼らを帰すことにある。
なので友を心配する気持ちは、一先ず放置し傍らで互いの再会を喜び合う二人の笑顔を昌一郎は守る決意を改めた。
「よしっ着いたぞお前ら」
外の様子は荷台に乗る皆には、全く検討もつかないといった具合で走るなか急にその速度が落ち始めると、間もなくしてトラックは動きを止めた。
すると運転席と荷台とを隔てる小窓が、何の前触れもなく開いた。
顔を出し、ここまで運転手を買ってでてくれた権ちゃんの父親の勘九郎は目的地付近に到着したことを告げた。
その場所は山岳地帯の一角。
目的地までまだ距離はあるものの大型トラックでは、これ以上先には進めないために降車を余儀なくされたのだ。
「そう言えば昌一郎さん」
「どうしたあきらくん?」
「結局理由聞いてなかったんだけど、どうして深緑山にある深湖へ向かうんですか」
柿さんからは一言、その場所に向かってくれと告げられただけで向かう理由を教えてもらっていない。
「そんなことも伝えていなかったのかよ」
「はぁ……そうですね」
俺は悪くないのに、ちょっとだけイラついた態度を向けられてしまう。
あぁ~あ知らない。
きっと柿さんが怒り気味の昌一郎さんと再会したとき、どんな反応をするのかと思えば少し興味がある。
だけどもう間もなく目的地に到着すれば、俺と亜香里は帰ることになり、多分二度とこの世界、恩人である柿大地とは別れることは理解している分、寂しくも思う。
「でだ。話は戻るけど、移動した際君は特別な粒子を浴びてその粒子がもとでこちら側に来たんだ。その粒子をパラレル粒子と親父は呼んでいる」
「その粒子を浴びたことで、俺らは……」
「そうだと言えるね」
「けどやはり納得がいきません。どうして俺と亜香里の二人だけがこちらに?」
あの場には、俺と亜香里の他にも天文部の友が居た。なのにどうして二人だけが巻き込まれたのか説明がつかないことはまだある。
「偶々、彗星に付着していたパラレル粒子を諸に浴びたとしか言い表せなくてね」
昌一郎さんの言葉には別の地球、言い換えれば平行世界に来てしまったのは偶然が重なってしまった結果だと示した。
「ただ付着した粒子は、移動の際にほぼ弾け飛び帰るだけの量が満足ではなく、今すぐ戻すことは出来ない」
「そんな……」
「そこで登場するのが、ワシの発明じゃよ」
いつから話を聞いていたのか、落胆する俺に昌一郎さんの父親が口を挟み込み、手にある何かを見せびらかすように持ち出す。
そこに映し出されるは、小さな筒が二つ。
「深湖は、彗星の塊が墜落した場所の窪地。そしてそこには粒子が今も漂い続けておるのじゃ」
そこからの説明はこうだ。
俺と亜香里が暮らす世界を仮にα世界と呼ぶとする。
ならば今いるこの世界はβ世界であり、阿笠博士の話だと他にも複数枝分かれした平行世界がある可能性がある。最初の段階では俺らがどの次元から移動したのかすら分からなかったそうだ。
だから亜香里の身体に僅かにばかり残っていた粒子を機械で調べ特定、飛んできた世界をα世界だとつい先刻断定に至ったとのことであった。
そして今、阿笠博士が揺さぶる小さな筒の正体は粒子変換器。
そのアイテムこそ俺たちを元居た世界に帰す切り札らしい。
深湖は、過去に彗星が落下した場所として一部の間では有名な話で、そこには大量の粒子が未だ近くに漂い続けているらしく移動に必要な粒子が有り余っている宝庫。
今現在俺と亜香里の体表には、粒子の残滓が残る程度で、深湖に漂流する粒子を補わせることでやっと帰れるだけの粒子が溜まる。
しかし溜まっている粒子は、β世界に漂う粒子のためその性質は違う。
だが阿笠博士が完成させた粒子変換器は、性質を同質化させる事が出来る優れ物で亜香里の身体に付着していた粒子の性質を機械に登録することで、深湖に残るβ世界の粒子を機械に取り込めばα世界の粒子に変える事が出来る。
「それで……」
阿笠博士の話を全て聞き終えてようやく納得のいく回答を得られた俺は満足し、ゴール目指し残り少ない道のりを歩んでいく。
ズンズンと先走り歩を進める男性たちを他所に、亜香里と恭子は横並びになって零距離で歩いていた。
「ねぇあきらと付き合ってるんだって?」
亜香里からの切り出しによる女子トークの唐突な始まりに、恭子は目を真ん丸にする。
こんな場面ですることではないでしょ。
と恭子が考えていることなど、亜香里にはお見通しだ。
それでも聞いておきたかった。
こんな時だからこそ知らねばならないことを。
「ど、どぅしてそれをぉ~」
裏返った声で可愛らしいく問う様は、前方を歩く男たちが見ればイチコロではと勘繰りたくなるほど女の亜香里ですら悶えさせる。
「哲平君が教えてくれたわよ」
哲平から聞き得た情報を、深掘りしたく当の本人に直接亜香里は質問したのであった。
長い年月を語るほど残された時間はおそらくまずなく、そしてこの先に辿り着けばもう関わることすら断じてない不思議な世界。
たとえ違う世界、同一人物では決してない本堂あきらであったとしても、愛する男に相違ないはずそう思えば。
その彼と幼なじみの恭子が紡ぐ物語を知りたかった。
「仕方ないなぁ~教えてあげるわよ」
嫌々そうに渋りながらも、本心はこうして亜香里と会話を弾ませることが嬉しい恭子は普段なら権兵衛と哲平が幾らイチャイチャ話を聞き出そうと躍起になっても割らなかった話を滑らせた。
「中々濃いわね」
告白したシチュエーションから、デートでの思い出話など語れるだけ話す恭子の内容に聞いていた亜香里の方が顔が真っ赤になる。
だけど二人が幸せなんだってことが、知れて亜香里は満足した。
「それで亜香里ちゃんはあきらとどうなの?」
「それはねぇ……えっとぉ……」
亜香里は自分のことに話が振られると、いきなり戸惑ってしまう。
そんな彼女の瞳にあきらの後ろ姿が映りこむ。
「うぅ~ん、付き合ってないよまだ」
その単語を口にするだけでも、恥ずかしさが込み上げてくるものがあった。
それでもいずれは……。
想いを馳せ、気持ちを包み隠さず恭子に伝えた。
精一杯の誠意を持って。それが恭子への礼儀だと思うから。
「まだ、ね……。じゃいつかは彼と?」
恭子の言う彼と亜香里が想像する彼は同一人物。
二人の共通の幼馴染みにして星好きの男の子。
「絶対に恭子ちゃんに負けないくらい幸せになる。それが私の今の目標になったかな」
「そっか。それは聞いていて嬉しいっ!」
女の子の会話は誰にも聞かれることはなく、秘密のものとなり両者はこのかけがえのない思い出を心にしまい込み大切にしていく。
そして一行は目的地深湖へと辿り着く。
梯子を降りた先、目の前に広がる静香に対し昌一郎は壁際を探り照明のブレーカーを発見する。
そこに向け電子銃を一発叩き込むと、一斉に電気が落ちた。
「これで追っ手も撒けるだろう。大丈夫、既に道は覚えてあるついてこい」
緊急時の逃げ道として用意してある旨を親父から事前に教わっていた昌一郎は、静香とともに難なく正解のルートを走り去っていく。
「しかしよく分かったわね。ドローンで監視されていたなんてさ」
「その可能性は少しばかり予期していたが、完全に確信したのは、俺たち二人だけしか廃倉庫の中には居ないと言ったときだ」
最初から違和感は持ち得ていた。
最も重要な被験体であるはずの亜香里ちゃんにも危害を加える恐れのある実弾を、逃げる用意が整ったタイミングと同時に行使したのか、そこが気がかりだった。
中の様子が分からないのなら無理な手段だが、逆に知っていたのなら話は変わってくる。
おそらく静香が撃ち落とした小型ドローンを用いて、中の様子を窺い行動を監視し、状況が動いたことで奴らも最後の手段に踏み切ったということだろう。
「それよりも」
「探せぇーーーーーーー!」
背後から東城のガナリ声が迸り、地下通路へ降りてきたことを確認する。
一体何人の人間が、昌一郎らを追って地下へと降りてきたかは検討もつかないところだが、表にいたあの人数総出で攻め込まれれば迷路と化しているこの地下通路も難なく攻略されてしまい、追い付かれてしまう。
だけどそれも終わりだ。
地下通路のせいで反響した声が、ここへと届いたまでに過ぎず二人は出口の光を目にする。
二人を乗せ、全員が揃ったトラックは山沿いの車道をひたすら走り続けていた。
「で柿はどうした?」
昌一郎の気になりはこの場に居ない男へと向けられていた。
地下通路を抜けた先には、あきらくんと亜香里ちゃんを元の世界へと送り帰す使命のもと結託した仲間が勢揃いしていた。
ただ想定外が一つだけ。
それは柿に頼み、彼の手で身を隠しているはずの人間が列挙して押し寄せている事実。
それは昌一郎に衝撃を与える結果となった。
「あの人なら街中で彼らを惹き付ける為に残るって仰ってましたが?」
「はぁ~?にしてはあの量かよ」
廃倉庫の前に居たあの大群は、「マントル」所属隊員捜索部隊の大半に値し柿が街で何をしていたのか理解に苦しむ。
どころかこんな事態に陥ったことに関し、あの柿がすぐに捕まったと捉える方が妥当かもしれない。
でも心のどこかではアイツが捕まるわけは無いと否定したくなる気持ちもあった。
ただいくら熟考したところで、今最も優先すべき事項は、彼らを帰すことにある。
なので友を心配する気持ちは、一先ず放置し傍らで互いの再会を喜び合う二人の笑顔を昌一郎は守る決意を改めた。
「よしっ着いたぞお前ら」
外の様子は荷台に乗る皆には、全く検討もつかないといった具合で走るなか急にその速度が落ち始めると、間もなくしてトラックは動きを止めた。
すると運転席と荷台とを隔てる小窓が、何の前触れもなく開いた。
顔を出し、ここまで運転手を買ってでてくれた権ちゃんの父親の勘九郎は目的地付近に到着したことを告げた。
その場所は山岳地帯の一角。
目的地までまだ距離はあるものの大型トラックでは、これ以上先には進めないために降車を余儀なくされたのだ。
「そう言えば昌一郎さん」
「どうしたあきらくん?」
「結局理由聞いてなかったんだけど、どうして深緑山にある深湖へ向かうんですか」
柿さんからは一言、その場所に向かってくれと告げられただけで向かう理由を教えてもらっていない。
「そんなことも伝えていなかったのかよ」
「はぁ……そうですね」
俺は悪くないのに、ちょっとだけイラついた態度を向けられてしまう。
あぁ~あ知らない。
きっと柿さんが怒り気味の昌一郎さんと再会したとき、どんな反応をするのかと思えば少し興味がある。
だけどもう間もなく目的地に到着すれば、俺と亜香里は帰ることになり、多分二度とこの世界、恩人である柿大地とは別れることは理解している分、寂しくも思う。
「でだ。話は戻るけど、移動した際君は特別な粒子を浴びてその粒子がもとでこちら側に来たんだ。その粒子をパラレル粒子と親父は呼んでいる」
「その粒子を浴びたことで、俺らは……」
「そうだと言えるね」
「けどやはり納得がいきません。どうして俺と亜香里の二人だけがこちらに?」
あの場には、俺と亜香里の他にも天文部の友が居た。なのにどうして二人だけが巻き込まれたのか説明がつかないことはまだある。
「偶々、彗星に付着していたパラレル粒子を諸に浴びたとしか言い表せなくてね」
昌一郎さんの言葉には別の地球、言い換えれば平行世界に来てしまったのは偶然が重なってしまった結果だと示した。
「ただ付着した粒子は、移動の際にほぼ弾け飛び帰るだけの量が満足ではなく、今すぐ戻すことは出来ない」
「そんな……」
「そこで登場するのが、ワシの発明じゃよ」
いつから話を聞いていたのか、落胆する俺に昌一郎さんの父親が口を挟み込み、手にある何かを見せびらかすように持ち出す。
そこに映し出されるは、小さな筒が二つ。
「深湖は、彗星の塊が墜落した場所の窪地。そしてそこには粒子が今も漂い続けておるのじゃ」
そこからの説明はこうだ。
俺と亜香里が暮らす世界を仮にα世界と呼ぶとする。
ならば今いるこの世界はβ世界であり、阿笠博士の話だと他にも複数枝分かれした平行世界がある可能性がある。最初の段階では俺らがどの次元から移動したのかすら分からなかったそうだ。
だから亜香里の身体に僅かにばかり残っていた粒子を機械で調べ特定、飛んできた世界をα世界だとつい先刻断定に至ったとのことであった。
そして今、阿笠博士が揺さぶる小さな筒の正体は粒子変換器。
そのアイテムこそ俺たちを元居た世界に帰す切り札らしい。
深湖は、過去に彗星が落下した場所として一部の間では有名な話で、そこには大量の粒子が未だ近くに漂い続けているらしく移動に必要な粒子が有り余っている宝庫。
今現在俺と亜香里の体表には、粒子の残滓が残る程度で、深湖に漂流する粒子を補わせることでやっと帰れるだけの粒子が溜まる。
しかし溜まっている粒子は、β世界に漂う粒子のためその性質は違う。
だが阿笠博士が完成させた粒子変換器は、性質を同質化させる事が出来る優れ物で亜香里の身体に付着していた粒子の性質を機械に登録することで、深湖に残るβ世界の粒子を機械に取り込めばα世界の粒子に変える事が出来る。
「それで……」
阿笠博士の話を全て聞き終えてようやく納得のいく回答を得られた俺は満足し、ゴール目指し残り少ない道のりを歩んでいく。
ズンズンと先走り歩を進める男性たちを他所に、亜香里と恭子は横並びになって零距離で歩いていた。
「ねぇあきらと付き合ってるんだって?」
亜香里からの切り出しによる女子トークの唐突な始まりに、恭子は目を真ん丸にする。
こんな場面ですることではないでしょ。
と恭子が考えていることなど、亜香里にはお見通しだ。
それでも聞いておきたかった。
こんな時だからこそ知らねばならないことを。
「ど、どぅしてそれをぉ~」
裏返った声で可愛らしいく問う様は、前方を歩く男たちが見ればイチコロではと勘繰りたくなるほど女の亜香里ですら悶えさせる。
「哲平君が教えてくれたわよ」
哲平から聞き得た情報を、深掘りしたく当の本人に直接亜香里は質問したのであった。
長い年月を語るほど残された時間はおそらくまずなく、そしてこの先に辿り着けばもう関わることすら断じてない不思議な世界。
たとえ違う世界、同一人物では決してない本堂あきらであったとしても、愛する男に相違ないはずそう思えば。
その彼と幼なじみの恭子が紡ぐ物語を知りたかった。
「仕方ないなぁ~教えてあげるわよ」
嫌々そうに渋りながらも、本心はこうして亜香里と会話を弾ませることが嬉しい恭子は普段なら権兵衛と哲平が幾らイチャイチャ話を聞き出そうと躍起になっても割らなかった話を滑らせた。
「中々濃いわね」
告白したシチュエーションから、デートでの思い出話など語れるだけ話す恭子の内容に聞いていた亜香里の方が顔が真っ赤になる。
だけど二人が幸せなんだってことが、知れて亜香里は満足した。
「それで亜香里ちゃんはあきらとどうなの?」
「それはねぇ……えっとぉ……」
亜香里は自分のことに話が振られると、いきなり戸惑ってしまう。
そんな彼女の瞳にあきらの後ろ姿が映りこむ。
「うぅ~ん、付き合ってないよまだ」
その単語を口にするだけでも、恥ずかしさが込み上げてくるものがあった。
それでもいずれは……。
想いを馳せ、気持ちを包み隠さず恭子に伝えた。
精一杯の誠意を持って。それが恭子への礼儀だと思うから。
「まだ、ね……。じゃいつかは彼と?」
恭子の言う彼と亜香里が想像する彼は同一人物。
二人の共通の幼馴染みにして星好きの男の子。
「絶対に恭子ちゃんに負けないくらい幸せになる。それが私の今の目標になったかな」
「そっか。それは聞いていて嬉しいっ!」
女の子の会話は誰にも聞かれることはなく、秘密のものとなり両者はこのかけがえのない思い出を心にしまい込み大切にしていく。
そして一行は目的地深湖へと辿り着く。
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