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甘くて、香ばしい、いい匂いで目が覚める。キッチンにふらふらと出ていくと、パンケーキをひっくり返す三咲がいた。
「あ、おはよう木南」
『おはよう』
「もうちょい待ってね。先に顔洗ってきたら?」
『ありがとう』
お言葉に甘えて、洗面所に向かう。
冷たい水で顔を濡らすと一気に覚醒した。と、同時に憂鬱な気分になった。
昨日あった生徒会長とのごたごた。あれのせいで今日はしばらくは落ち着かないだろうという予感があった。そもそも今日から風紀の護衛がつくのだ。面倒くさいことにならないわけがない。思わず大きなため息が出た。
昨日は風紀室からそのまま部屋に帰った。しばらくして三咲が慌ただしく帰って来て、何があったのか真っ青な顔で聞かれた。人から何か俺にトラブルがあったことを伝え聞いて、心配してくれたらしい。詳しく話すと今度は目を吊り上げて怒ってくれた。昨日聞いた親衛隊?のやつらみたいに、三咲が役持ちに対して盲目的なタイプじゃなくてよかったと心底思った。それに本気で心配してくれて、怒ってくれたことがとても嬉しかった。
朝は寮のラウンジで待てと、風紀委員長から昨日のうちにお達しがあったので、三咲と待っていると、風紀委員長と副委員長が連れだってやってきた。朝だと言うのに、風紀委員長は爽やかな風のような凛とした空気をまとっている。かと思えば軽くあくびをしたのが見えて、垣間見えた人間味に唇が緩んだ。
「おはよう」
「木南くんおはよう!そっちはルームメイト君かな?」
『おはようございます』
「あ、はい!おはようございます!木南の同室の三咲悠真です」
「元気でよろしいー」
「とりあえず今朝は俺たちが教室まで送っていく。昼は2年の誰だったかな」
「原田じゃなかった?」
「あー、そうか。まあその時になればわかる」
「真貴ちゃんてきとー!まあ授業始まっちゃうし、行こうか」
相変わらずどこか緩い副委員長の言葉に四人で歩き出す。
やはり見られている。ラウンジにいた時からだったが、校内に入ると余計に視線を感じた。にしても、これは昨日のことで俺が目立っているのか、それとも風紀委員長たちが目立っているのか。後者が8割くらいに感じるのは気のせいなのか?
教室の前まで俺たちに付き添って、風紀委員長たちは自分の教室に向かっていった。教師でもないのにご苦労なことだ。だいたい風紀委員なんて普通の学校にはないのに。
「おはよう木南」
木島が声をかけてくれたので、口パクで『おはよう』と返す。
「大丈夫か?」
『うん。風紀委員長たちが付き添ってくれたんだけど、何もなかった』
「ならよかった。まあ気を付けろよ」
『うん、ありがとう』
こうして木島と喋っていると、向けられる視線に気がついた。数人から睨まれている。
『木島、あいつらって親衛隊なの?』
「あぁ。大方そうだろうな」
俺を睨み付けてきているのは、みんな小柄なやつらだ。恐らく全員Subだろう。
『めんどくさい…』
ため息をつくと木島がふっと笑った。
その日の昼食は三咲と木島、そして派遣されてきた風紀委員と食べることになった。2年生らしい、その風紀委員は原田陸と名乗った。黒髪短髪のいかにも体育会系といった感じの人だ。
「やっぱ風紀委員長たちすっごくかっこよかった…」
「お前さっきからそればっかりだな」
俺と木島が呆れた目を向けると三咲が頬を膨らませる。
「だってかっこよくない?顔はいうまでもないし、風紀委員長のあの雰囲気!何て言えばいいのかわかんないけど、とにかくかっこいい!」
「語彙力ねぇな」
「わかる!三咲君わかるよそれ!俺たち風紀委員はみんな委員長に憧れてるんだ。ついていきたいと思わせるあの背中に憧れない者はないよね…」
「原田さんさすが!わかります!」
「それに副委員長、あの人も凄い人なんだよ。委員長と対等に肩を並べられるのはあの人だけだ」
「緩そうに見えて実は実力派!?最高ですね…」
変なところで意気投合する三咲と原田さんに、俺と木島は無言で顔を見合わせた。
帰りはまた委員長がやってきて、寮まで付き添ってくれた。委員長がいると向けられる視線が倍以上になるから、あんまり嬉しくないんだけど、でも安心感がすごいんだよな。その圧倒的な強者の雰囲気からだろうか。Domから感じる威圧感ではなく、守られているという安堵を感じる。Dom嫌いの俺からするとあり得ない感情だ。今までのやつと何が違うんだろうと委員長を眺めて観察してみる。と、視線を感じたのかこちらを向いた委員長と目があった。
「ん?どうした?」
低いけれどよく通る声で問いかけられて、咄嗟に文字を打ち込んだ画面を向ける。
『忙しいのに、こんな付き添いまでさせちゃってすいません。ありがとうございます』
昼食時に原田さんと喋っていたときだ。風紀委員と言うのはこの学園においてとても重要な役割を担っており、非常に忙しい。委員長ともなれば尚更だという話を聞いたのだ。だからせめてお礼を言っておかないとなと思っての言葉だったのだが、委員長的には少し意外だったらしい。その目が数回瞬いたあと、ふっと細まった。
「忙しいのは否定しないがお前のせいじゃないしな。お礼はありがたく受け取っとく。ありがとな」
わかりやすく微笑みかけられてなぜか動機が早まった。同時にふわっと体が温かくなる。なんだこれはと考えているうちに寮に着いてしまった。委員長は再び学園の方に戻っていく。本当に付き添いだけに来てくれたらしい。申し訳ないなと思いながら、明日も委員長だったらいいのにという思いがぽつんと湧いてきて驚く。俺も美形には弱かったということだろうか。やっぱりわからない自分の感情に首を傾げた。
「あ、おはよう木南」
『おはよう』
「もうちょい待ってね。先に顔洗ってきたら?」
『ありがとう』
お言葉に甘えて、洗面所に向かう。
冷たい水で顔を濡らすと一気に覚醒した。と、同時に憂鬱な気分になった。
昨日あった生徒会長とのごたごた。あれのせいで今日はしばらくは落ち着かないだろうという予感があった。そもそも今日から風紀の護衛がつくのだ。面倒くさいことにならないわけがない。思わず大きなため息が出た。
昨日は風紀室からそのまま部屋に帰った。しばらくして三咲が慌ただしく帰って来て、何があったのか真っ青な顔で聞かれた。人から何か俺にトラブルがあったことを伝え聞いて、心配してくれたらしい。詳しく話すと今度は目を吊り上げて怒ってくれた。昨日聞いた親衛隊?のやつらみたいに、三咲が役持ちに対して盲目的なタイプじゃなくてよかったと心底思った。それに本気で心配してくれて、怒ってくれたことがとても嬉しかった。
朝は寮のラウンジで待てと、風紀委員長から昨日のうちにお達しがあったので、三咲と待っていると、風紀委員長と副委員長が連れだってやってきた。朝だと言うのに、風紀委員長は爽やかな風のような凛とした空気をまとっている。かと思えば軽くあくびをしたのが見えて、垣間見えた人間味に唇が緩んだ。
「おはよう」
「木南くんおはよう!そっちはルームメイト君かな?」
『おはようございます』
「あ、はい!おはようございます!木南の同室の三咲悠真です」
「元気でよろしいー」
「とりあえず今朝は俺たちが教室まで送っていく。昼は2年の誰だったかな」
「原田じゃなかった?」
「あー、そうか。まあその時になればわかる」
「真貴ちゃんてきとー!まあ授業始まっちゃうし、行こうか」
相変わらずどこか緩い副委員長の言葉に四人で歩き出す。
やはり見られている。ラウンジにいた時からだったが、校内に入ると余計に視線を感じた。にしても、これは昨日のことで俺が目立っているのか、それとも風紀委員長たちが目立っているのか。後者が8割くらいに感じるのは気のせいなのか?
教室の前まで俺たちに付き添って、風紀委員長たちは自分の教室に向かっていった。教師でもないのにご苦労なことだ。だいたい風紀委員なんて普通の学校にはないのに。
「おはよう木南」
木島が声をかけてくれたので、口パクで『おはよう』と返す。
「大丈夫か?」
『うん。風紀委員長たちが付き添ってくれたんだけど、何もなかった』
「ならよかった。まあ気を付けろよ」
『うん、ありがとう』
こうして木島と喋っていると、向けられる視線に気がついた。数人から睨まれている。
『木島、あいつらって親衛隊なの?』
「あぁ。大方そうだろうな」
俺を睨み付けてきているのは、みんな小柄なやつらだ。恐らく全員Subだろう。
『めんどくさい…』
ため息をつくと木島がふっと笑った。
その日の昼食は三咲と木島、そして派遣されてきた風紀委員と食べることになった。2年生らしい、その風紀委員は原田陸と名乗った。黒髪短髪のいかにも体育会系といった感じの人だ。
「やっぱ風紀委員長たちすっごくかっこよかった…」
「お前さっきからそればっかりだな」
俺と木島が呆れた目を向けると三咲が頬を膨らませる。
「だってかっこよくない?顔はいうまでもないし、風紀委員長のあの雰囲気!何て言えばいいのかわかんないけど、とにかくかっこいい!」
「語彙力ねぇな」
「わかる!三咲君わかるよそれ!俺たち風紀委員はみんな委員長に憧れてるんだ。ついていきたいと思わせるあの背中に憧れない者はないよね…」
「原田さんさすが!わかります!」
「それに副委員長、あの人も凄い人なんだよ。委員長と対等に肩を並べられるのはあの人だけだ」
「緩そうに見えて実は実力派!?最高ですね…」
変なところで意気投合する三咲と原田さんに、俺と木島は無言で顔を見合わせた。
帰りはまた委員長がやってきて、寮まで付き添ってくれた。委員長がいると向けられる視線が倍以上になるから、あんまり嬉しくないんだけど、でも安心感がすごいんだよな。その圧倒的な強者の雰囲気からだろうか。Domから感じる威圧感ではなく、守られているという安堵を感じる。Dom嫌いの俺からするとあり得ない感情だ。今までのやつと何が違うんだろうと委員長を眺めて観察してみる。と、視線を感じたのかこちらを向いた委員長と目があった。
「ん?どうした?」
低いけれどよく通る声で問いかけられて、咄嗟に文字を打ち込んだ画面を向ける。
『忙しいのに、こんな付き添いまでさせちゃってすいません。ありがとうございます』
昼食時に原田さんと喋っていたときだ。風紀委員と言うのはこの学園においてとても重要な役割を担っており、非常に忙しい。委員長ともなれば尚更だという話を聞いたのだ。だからせめてお礼を言っておかないとなと思っての言葉だったのだが、委員長的には少し意外だったらしい。その目が数回瞬いたあと、ふっと細まった。
「忙しいのは否定しないがお前のせいじゃないしな。お礼はありがたく受け取っとく。ありがとな」
わかりやすく微笑みかけられてなぜか動機が早まった。同時にふわっと体が温かくなる。なんだこれはと考えているうちに寮に着いてしまった。委員長は再び学園の方に戻っていく。本当に付き添いだけに来てくれたらしい。申し訳ないなと思いながら、明日も委員長だったらいいのにという思いがぽつんと湧いてきて驚く。俺も美形には弱かったということだろうか。やっぱりわからない自分の感情に首を傾げた。
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