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「ただいまイタリアー!」
空港についてセルジオが伸びをしながら言った。セルジオほど大袈裟に言いはしないが俺も同じ気分だ。イタリアにいることに落ち着く。
空港からツアーバスで移動して、楽器をスタジオに運ぶ。そこから軽く打ち合わせをした。昼頃に着いたのに、やらなければいけないことが終わるともう夜だった。
今から2週間の休養期間かつ準備期間に入る。スタッフたちはお疲れ様ーと三々五々に散っていった。それを見送っていると
「さあ行ってこいチハル!」
バンっとセルジオに背中を押されてつんのめった。
帰って来たばかりだというのに行ってこいというセルジオに、まだ回りにいたツアースタッフたちが怪訝な顔をして俺たちを見た。
「うん。行ってくる」
「健闘を祈る」
ビシッとキメた敬礼で見送ってくるセルジオに俺もピシッと姿勢を正してから背を向けた。
時間がたてば決意が鈍る。
俺は足早にlumeへ向かった。
夜はもう深い。暗い路地を進めばいつものように灯りが見えてきた。店のドアの前に立ってすぅーっと息を吸い込んで深呼吸をする。そうしてからドアを開けた。
カランとなるベルに、ニコラがこちらに視線を向けた。そして、笑顔になる。
「いらっしゃい、チハル」
ニコラの笑顔はどこかほっとする。俺はニコラの笑顔が大好きだ、とまで考えて俺は一人赤面した。だめだ、落ち着け俺。
「1ヶ月ぶり、かな。ヨーロッパツアーはどうだった?」
「めちゃくちゃ楽しかった」
会話を交わしながら俺はニコラの前のカウンターに座った。ピーク時は過ぎたようで店内には他にテーブル席にぽつぽつと何人か客がいるくらいだ。
「今日はマルコさんたちはいないんだ?」
「昨日来てたからね。チハルが帰って来るの知ってるから近いうちにまた来ると思うよ」
言いながらニコラがグラスをすっと出してくれる。出されたグラスの中身は透明だ。シュワシュワと泡立つそれを飲んでみる。
「これスパークリングワイン?」
「正解。まだ何も食べてないからね。食前酒だよ」
微笑んで言うニコラに俺の心臓はおかしな動きをし始めた。あれ、ニコラってこんなかっこよかったっけ…?やばいやばい落ち着けって俺!
自分の気持ちを自覚したとたんにこの有り様だ。
そんな内心を押し隠して俺はニコラと向かい合う。
「今日の料理は?」
「ん、ちょうどできたよ。今日はカルボナーラです」
とんっとテーブルに湯気をたてた皿が置かれる。
「うっわ、旨そ!いただきます!」
「召し上がれ」
速攻で手を合わせた俺をニコラはふふっと笑った。
俺はパスタをフォークに絡めて早速口に運ぶ。出来立てで熱々のそれをはふはふ言いながら咀嚼する。
「んー!うっま!」
太めの平べったいパスタに濃厚なソースががっつり絡んでいる。ソースは濃いめでワインによく合う。肉厚のベーコンの塩辛さもいいアクセントで美味しい。
あまりの美味しさにがつがつと食べる俺にニコラは苦笑した。
「ゆっくり食べていいんだよ?おかわりもあるし」
「おかわりする!」
あまり食べない俺でもニコラの料理ならいくらでも、と言っていいレベルで食べられる。即答した俺にニコラがあはっと笑った。
「チハルは美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ」
「ニコラの料理が旨いからだよ。世界一レベル」
なんの下心もなく純粋に本心からそう言った。するとニコラは照れたように顔を背けてしまった。
「…チハルはほんとにたらしだね」
ぼそっと呟かれる。その耳が赤く染まっているのが見えて思わず俺も赤面してしまった。
「ちょっと!なんでチハルまで赤くなってんの!恥ずかしいのは俺だよ」
「…俺のほうが恥ずかしい」
成人男性が二人して赤面している異様な状況になってしまった。でもその空気はどこかむず痒いような心地よさがあった。
空港についてセルジオが伸びをしながら言った。セルジオほど大袈裟に言いはしないが俺も同じ気分だ。イタリアにいることに落ち着く。
空港からツアーバスで移動して、楽器をスタジオに運ぶ。そこから軽く打ち合わせをした。昼頃に着いたのに、やらなければいけないことが終わるともう夜だった。
今から2週間の休養期間かつ準備期間に入る。スタッフたちはお疲れ様ーと三々五々に散っていった。それを見送っていると
「さあ行ってこいチハル!」
バンっとセルジオに背中を押されてつんのめった。
帰って来たばかりだというのに行ってこいというセルジオに、まだ回りにいたツアースタッフたちが怪訝な顔をして俺たちを見た。
「うん。行ってくる」
「健闘を祈る」
ビシッとキメた敬礼で見送ってくるセルジオに俺もピシッと姿勢を正してから背を向けた。
時間がたてば決意が鈍る。
俺は足早にlumeへ向かった。
夜はもう深い。暗い路地を進めばいつものように灯りが見えてきた。店のドアの前に立ってすぅーっと息を吸い込んで深呼吸をする。そうしてからドアを開けた。
カランとなるベルに、ニコラがこちらに視線を向けた。そして、笑顔になる。
「いらっしゃい、チハル」
ニコラの笑顔はどこかほっとする。俺はニコラの笑顔が大好きだ、とまで考えて俺は一人赤面した。だめだ、落ち着け俺。
「1ヶ月ぶり、かな。ヨーロッパツアーはどうだった?」
「めちゃくちゃ楽しかった」
会話を交わしながら俺はニコラの前のカウンターに座った。ピーク時は過ぎたようで店内には他にテーブル席にぽつぽつと何人か客がいるくらいだ。
「今日はマルコさんたちはいないんだ?」
「昨日来てたからね。チハルが帰って来るの知ってるから近いうちにまた来ると思うよ」
言いながらニコラがグラスをすっと出してくれる。出されたグラスの中身は透明だ。シュワシュワと泡立つそれを飲んでみる。
「これスパークリングワイン?」
「正解。まだ何も食べてないからね。食前酒だよ」
微笑んで言うニコラに俺の心臓はおかしな動きをし始めた。あれ、ニコラってこんなかっこよかったっけ…?やばいやばい落ち着けって俺!
自分の気持ちを自覚したとたんにこの有り様だ。
そんな内心を押し隠して俺はニコラと向かい合う。
「今日の料理は?」
「ん、ちょうどできたよ。今日はカルボナーラです」
とんっとテーブルに湯気をたてた皿が置かれる。
「うっわ、旨そ!いただきます!」
「召し上がれ」
速攻で手を合わせた俺をニコラはふふっと笑った。
俺はパスタをフォークに絡めて早速口に運ぶ。出来立てで熱々のそれをはふはふ言いながら咀嚼する。
「んー!うっま!」
太めの平べったいパスタに濃厚なソースががっつり絡んでいる。ソースは濃いめでワインによく合う。肉厚のベーコンの塩辛さもいいアクセントで美味しい。
あまりの美味しさにがつがつと食べる俺にニコラは苦笑した。
「ゆっくり食べていいんだよ?おかわりもあるし」
「おかわりする!」
あまり食べない俺でもニコラの料理ならいくらでも、と言っていいレベルで食べられる。即答した俺にニコラがあはっと笑った。
「チハルは美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ」
「ニコラの料理が旨いからだよ。世界一レベル」
なんの下心もなく純粋に本心からそう言った。するとニコラは照れたように顔を背けてしまった。
「…チハルはほんとにたらしだね」
ぼそっと呟かれる。その耳が赤く染まっているのが見えて思わず俺も赤面してしまった。
「ちょっと!なんでチハルまで赤くなってんの!恥ずかしいのは俺だよ」
「…俺のほうが恥ずかしい」
成人男性が二人して赤面している異様な状況になってしまった。でもその空気はどこかむず痒いような心地よさがあった。
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