バースデーソング

せんりお

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昨日までの陰気な天気はどこにいってしまったのか、今日は太陽が燦々と照っている。でも刺すような寒さは相変わらずで、俺はニコラにもらったグリーンのマフラーを巻いて外に出た。


ゆっくりと歩いて辿り着いたlume。店の前で深く深呼吸をする。前にここで深呼吸をした時はニコラに告白した時だった。今はあのドキドキとは真逆の気持ちだ。それでも俺は意を決して扉に手をかけた。


ドアベルに反応してキッチンにいたニコラがこちらを向いた。そして嬉しそうに笑ってくれる。

「チハル!2日ぶりかな?会いたかった」

本当なら嬉しいはずの言葉。でも今の俺はそれを聞いても複雑な気持ちにしかなれない。
近づいてきたニコラにふわっと抱き締められる。今日はシトラスの匂いがしなくて、ニコラのほっとするような温かさだけ。それが安心するのと同時に、やはり昼間にルカさんに会っていたことを裏付けることになって辛くもあった。

「チハル?どうした?」

抱き締めても反応しない俺に、ニコラが不思議そうな顔で問いかける。それにはっとして慌てて首を振った。

「っいや、なんでもないよ。それで、昼過ぎに来てってなんで?」

そう聞くとニコラはふふっと含みのある笑みを浮かべた。

「うん。ちょっと待ってね」

そう言ってニコラは俺をカウンターではなくテーブルの椅子につかせるとキッチンのほうに戻っていった。階段を登る音が聞こえる。

程なくしてとんとんとリズミカルに階段を下る音がしてきたかと思うと突然部屋が暗くなった。

「っえ!?」

電気が消えたようで、裏路地にあるlumeは昼間なのに回りが見えないほど暗い。
停電か?と慌てて携帯でライトをつけようとすると、ふっと小さな明かりが見えた。暗闇のなかに浮かんだ小さな光はゆらゆらと揺れている。ライトの光じゃないな…赤い色だ。火か?
ゆらゆらと揺れるそれが近づいてくるにつれてニコラの顔が浮かび上がった。

「ニコラ?」

至近距離まで来てようやく火の正体がわかった。

「っケーキ?」

俺は今きっと間抜けな表情を浮かべているだろう。それほどに驚いている。
ニコラはそんな俺にいたずらっぽく笑った。

「そ。バースデーケーキです。チハル、誕生日おめでとう」

「あっ!俺、今日、誕生日…!?」

「忘れてたの?」

あはは、と笑いながらニコラがケーキをテーブルに置いた。王道の真っ白い生クリームにイチゴ。二人で食べるにはちょうどいいくらいの大きさのそれにはろうそくが1本だけ立っていた。

「ろうそくの本数は迷ったんだけどねー。この大きさだと20本はさすがに無理だし。付き合ってから1回目ってことで1本にしました」

どう?とこちらを覗き込むニコラに俺は何も言えなかった。
そんなにびっくりしたの?とニコラがまた笑った。

「驚くのはまだ早いよ、チハル」

そう言ってニコラが手に持ったのは、ギターだった。

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